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新型コロナウイルスは世界規模でビジネスに大きな影響を及ぼしている。その中でもすそ野の広い日本の製造業では、人々の往来が復活することで好転が期待できる観光業や飲食業などとは異なり、ビジネスへの影響が遅れて生じてくる可能性もある。こうした状況を乗り切る方法として、「生産管理システム」を効果的に活用して収益性を高める取り組みも大切になるだろう。生産管理システムの導入実態を元に、収益性を高めるための具体的なポイントを探る。
導入シェアを比較、選ばれている生産管理システムとは
図1は、年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「導入済みの最も主要な生産管理システムは何か」を尋ねた結果を2018年と2019年で比較したものだ。
生産管理システムは製造業にとって本業を支える根幹となる業務システムだ。そのため、一般的には特定の製品/サービスを長期間にわたって利用する傾向が強く、導入社数シェアが大きく変動することは少ない。
図1を見ても、導入社数シェアにはOSK(大塚商会)、富士通、NECといった大手ベンダの製品サービスが上位に位置しており、2018~2019年の導入社数シェア変化も少ないことが確認できる。
ところが、「独自開発システム」の割合は2018~2019年にかけて16.8%から22.2%に増加している。一般的には、企業ごとにゼロから構築する「独自開発システム」よりもベンダが提供する「製品/サービス」の方が導入/保守の費用は安価になる。それにも関わらず、IT予算が限られる中堅・中小企業の生産管理システムにおいて「独自開発システム」の割合が増加している要因は何だろうか。
既成品導入のメリットと、独自開発のメリット
それを知るヒントとなるのが図2のグラフである。これは中堅・中小企業に対して、最も主要な導入済みの「生産管理システム」の導入背景を尋ねた結果である。
すでに述べた通り、「中堅・中小企業はIT予算が限られるので、機能よりも価格を重視して既成の製品/サービスを導入するケースが多い」と考えられがちだ。実際、年商5億円未満の小規模な企業層における導入背景では「機能がニーズに合致している」よりも「価格がニーズに合致している」の割合が高くなっている。
しかし、中堅・中小企業の中核ともいえる年商5億円~300億円の企業層では「機能がニーズに合致している」が「価格がニーズに合致している」を上回る、もしくは同程度となっていることがわかる。
冒頭でも述べたように、生産管理システムは製造業の根幹を成す業務システムだ。個々の製造業は製造の工程やノウハウについて多種多様な強みを持っており、それらが生産管理システムにも反映されている。そのため、既成の製品/サービスではカバーできない部分が生じ、結果的に多少の費用がかかったとしても自社に合った独自開発システムを選択するケースが少なくないわけだ。
一方、年商300~500億円の企業層では「機能がニーズに合致している」の割合が「価格がニーズに合致している」を上回っている。同年商帯の企業はIT活用の点では大企業に近く、生産管理システムにもすでに十分な投資を行っている。その結果、新たな機能を備えることよりも、ライセンス価格などを抑えようとする傾向が強くなるわけだ。
上記に述べた結果だけを見ると、中堅・中小企業の生産管理システムとしては「独自開発システム」の方が賢い選択のように思えるかも知れない。
だが、「開発元(ベンダ)の保守/サポートが優れている」の割合は年商規模が大きくなるにつれて概ね高くなっている点にも注意が必要だ。生産管理システムの保守/サポートは単に現状を維持するだけではない。特に重要なのがさまざまな法制度への対応だ。
たとえば、2019年7月から適用開始となった「改正RoHS2指令(欧州で製品を販売する際に守るべき有害物質の使用制限)」や、2021年6月から完全義務化となる「HACCP(食品衛生管理における手順の可視化)」などが挙げられる。法制度への対応負担はシステム規模(≒年商規模)につれて大きくなる。その結果、年商規模が大きくなるにつれて「開発元の保守/サポートが優れている」という項目を導入背景として挙げる割合(≒保守/サポートを重視する割合)が高くなっているわけだ。
一般的には、設計が統一されている製品/サービスの方が独自開発システムと比較して法制度の改正に対応しやすい。したがって、中堅・中小企業としては「自社の工程やノウハウを活かすことのできる柔軟性」と「法制度への対応負担の軽減」の二つの観点から既成の製品/サービスと独自開発システムのどちらを選ぶべきかを検討することが重要となる。
【次ページ】生産管理システムの選び方とは
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