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中堅・中小企業がIT活用を検討する際には「システムの機能」「システムの導入費用」だけでなく、「運用/保守にかかる費用」や「自社でも十分に扱えるものか」といった観点が必要だ。その中でも意外と見落とされがちなのが、「自社内の誰がITを提案する側との窓口になるべきか」という視点である。今回はそうした「IT活用検討における窓口」について考えてみたい。
提案のミスマッチは窓口のミスマッチから発生する
東日本大震災や円高といった業績抑制要因に加え、原発事故の補償に伴う電気料金値上げや法人税増税といったコスト増加要因など、中堅・中小企業を取り巻く経済環境はさらに厳しさを増しつつある。これらは中長期にわたる状況であるため、一過性に留まらない腰を据えた対処が求められる。IT活用による業務効率のさらなる改善や新たな顧客の獲得も当然選択肢の一つに加えるべきだろう。
だが、ITを活用しようとしてIT関連のベンダやSIerと対話をした際、以下のような経験をされた方も少なくないのではないだろうか。
「経営視点での業務改善」ということなので社長自ら応対したが、実際に話を聴いてみたら単なるIT機器の売り込みだった
「業務システムの提案」ということなのでITの運用管理担当者が対応したが、実は経営面に役立つコンサルティングサービスも含めたソリューションの提案だった
これらはいずれも提案された内容とそれを聴くべき相手とがマッチしていないことが原因である。ITを提案する側は必ずしも中堅・中小企業の事情を深く理解しているわけではない。その結果、「経営者にIT機器の説明をしてしまう」「IT担当者に経営の説明をしてしまう」といったミスマッチが発生するわけだ。こうした状況を回避するためには、ITを提案する側がアプローチ方法を改善することが必要であるのは言うまでもない。だが、提案を受ける中堅・中小企業の側も、自社をより良く理解してもらうための努力をするといった歩み寄りをすべきだろう。
自社におけるIT活用のタイプを理解する
ではどうすれば良いのか?ベンダやSIerが訪問するたびに経営者とIT担当者が揃って応対をするという対処も考えられるが、忙しい業務の合間に2人を割いて対応するのは手間だし、実はそれだけでは十分ではないことがある。
自社にマッチしたIT活用提案を受けるための窓口作りをするためには、まず「自社におけるIT活用のタイプ」を理解する必要がある。ここでは中堅・中小企業とITとの関係を「本業にとって必要不可欠か?」と「自社の業績にプラスになるのか、それとも純粋なコストなのか?」という2つの観点から以下の4通りに分類してみよう。
パターンA:
ITは自社の本業に不可欠であり、IT活用の成否は業績にも影響を与える
(IT活用は本業の売上に直結する)
製造業における原価管理システムなどがこれに当たる。原価管理システムをうまく活用し、製造原価を適切に管理できるかという課題は本業である生産活動の収益率に直結するだろう。
パターンB:
ITは自社の本業に不可欠だが、IT活用の成否が業績に影響を与えることはない
(IT活用は本業におけるコストである)
卸売業や小売業における受発注システムなどがこれに当たる。受発注システムは商材流通のためには不可欠であり、適切なシステム化による業務改善効果も期待できる。しかし、卸売側と小売側の力関係や店舗側の情報化が進まないなどの理由で、パターンAと比べて業績に直結した改善を行いにくい。その結果、「本業において不可欠なコスト」といった位置付けになっているIT活用分野でもある。
パターンC:
ITは自社の本業には必ずしも必須でなく、業務における補助的な位置付けである
(IT活用は補助的なコストである)
スケジューラによる社員の予定共有などが該当する。仮にそれがなかった場合でも本業の遂行に支障をきたすわけではなく、また活用の成否が業績に影響を与えることも少ない。
パターンD:
ITは自社の本業には必ずしも必須でないが、補助的な役割の中で業績を補完する
(IT活用は補助的な売上を生み出す)
企業のホームページなどが該当する。通常は店舗でのリアルな販売やECサイトやメールによる受発注が商流の主な窓口となるが、企業間の協業や顧客からの一般的な問い合わせといった場合には企業のホームページが重要な役割を果たす。このように本業との関連は直接的ではないが、場合によって本業にプラスの効果をもたらすものがこのパターンである。
このパターンAからパターンDのそれぞれにおいて、IT活用の基本方針を決めているのは誰だろうか?その現状を知ることによって、「誰がIT提供側と接すれば良いか?」のヒントも見えてくるはずだ。もちろん、1つの企業内に複数のパターンが存在するケースもあるだろう。その場合には個々のIT活用パターン別に対処方法を変えるということになる。
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