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- 2011/07/15 掲載
中小企業のIT部門はクラウドで変わるか?中小企業が製品を購入したい企業ランキング
中堅・中小企業市場の解体新書(29)
情報システム部門を持っている中小企業は3割もない
ノークリサーチでは、中小企業を「年商5億円以上50億円未満の企業」と定義しているが、こうした企業も今や企業活動にITシステムが必須であることは言うまでもない。既に会計や販売管理などにパソコンやPCサーバを活用していることは調査でも明らかだ。またPCやネットワーク環境などのITインフラも整備されていることも分かっている。ただしITを「部門」として抱えているかどうか(情報システム部門など)でいえば、中小企業は、24.3%と3割にも満たないのが現状である。いわゆるオンプレミス(企業内システム)の環境で複数台のサーバや数十台のクライアントがあったとしても、多くの中小企業は、専任の担当者がいない割合が63.8%に達し、多くの企業では他の部門に所属する人が兼任で社内のITを運用管理している。多くは総務部や経理部などの間接部門がそれにあたるだろう。
これには、IT(情報システム)部門はコスト部門のために十分な人員を割り当てることができない、お金をかけられないという経済的な理由と併せて、自社に専門の部門を持つ必要はなく、中小企業自らが優先度を上げて自社対応しなくても良いと考えていることが背景にある。そしてこの判断は経営者のトップダウンによるものだ。中堅・中小企業全般ではCIOという職制はほとんどなく、最終決定者である経営者が現状のITのままで大きな不都合がないと考えているため、ITへの期待やリソースのかけ方が低いままなのである。
前述のように“最低限のITシステム”は整っている中小企業だが、良いか悪いかは別として、最近大きく2つの傾向がみられる。
1つはさらに安い運用方法の模索と、震災の影響によるBCPやDRへの意識向上だ。これはデータやシステムへの保全の意識向上と言い換えることができるだろう。
もうひとつが従来のような資産として購入するITシステムに加えて、サービスとして利用するクラウド、SaaSに対する関心の高まりだ。ただし関心の中心は「安い、今まで利用していたオンプレミスの代替」という側面で考えている割合が高い。意識や関心は高まっているため、中期的には「持つIT」から「利用するクラウド」へと向かうことになるだろうが、現状ではまだまだ限定的な活用にとどまっている。
中小企業で専任の情報システム部門があるのが3割にも満たないことと併せて、担当するスタッフの数もすべからく少ない。専任のスタッフがまったくいない割合が63.0%と6割を超えている。実はその上の年商レンジである50億円以上100億円未満でも、38.3%は専門のITスタッフがいない。つまり企業規模の小さいところは、自社で専門のIT担当を置かない、置けないのが実態だ。さらに景気の悪化により、IT部門への投資は減ることはあっても、増加の傾向は見えず、より少ないスタッフによって、本来の業務の傍らITシステムの運用管理をしなくてはならない。明確に自前の専任のITスタッフで運用管理しているのは、実際は100億円以上の中堅企業であることが分かる。
総括すると、中小企業は下記の5つの特徴的な傾向を有している。実はこの傾向は過去10年間ほとんど変わらずに現在に至っている。
- 必要最低限のITインフラはすでに導入されている
- 専門の部門がない場合がほとんど
- 少ない人数で、しかも兼任でITシステムを任されている
- 企業はさらにIT部門に対する投資を控えつつある
- 販売店やSI企業などの外部の相談相手に任せている
中小企業が頼りにすべきベンダー、販売店が次のITのステージへ導く
そこで情報システム部門を持っていない中小企業にとって、何が頼りになるか?繰り返すが「兼任で情報システムを担当する中小企業が6割を超えている。つまり5-50億円の企業では、情報システム部門は2割強しかなく、しかも兼任の担当者でしか対応していない企業が6割を超えている」中小企業は、外部にどれだけ頼りになる企業や人を抱えることができるかに掛っている。いわゆる情報システム部門がなければ、業務部門、総務部、経理部などが業務システムの管理と合わせて情報システムの任を兼務することになる。いわゆる片手間の対応となるため、ユーザー部門へのサポート業務や日々のルーチン作業に追われて、十分なIT戦略を練る時間などあろうはずがないことは十分に想像できる。
そのため、この年商帯の中小企業が、SaaSやクラウドのようなサービス提供事業者と直接取り引きをする(ITサービスを利用する)ことは実際には荷が重いということになる。つまりこれらの分野でも、今までと同じようにベンダーや販売店が面倒をみることが重要なポイントになる。
【次ページ】中小企業が今後、製品の購入やソリューションの採用を検討したい企業ランキング
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