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  • 2011/07/27 掲載

なぜERPよりもメールのほうがクラウド移行できないのか、中堅・中小企業がクラウド移行を進める3つの方法

中堅・中小企業市場の解体新書(30)

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メールやグループウェアといったいわゆる情報系アプリケーションは、企業ごとのカスタマイズが少なく、クラウドへの移行が比較的容易と言われている。だが、実際にはパッケージ形態のメールソフトやグループウェアの利用がまだまだ多い。つまり、情報系アプリケーションのクラウド移行が進まないことには別の要因があると考えられる。そうした状況の中、東日本大震災の発生により「中堅・中小企業のクラウド活用が進む」という見解もある。そこで、今回は情報系アプリケーションのクラウド活用を妨げる要因や東日本大震災が及ぼす影響を俯瞰し、中堅・中小企業が情報系アプリケーションのクラウド活用に取り組む際のポイントについて考えていくことにする。

「慣れ」による現状維持志向は基幹系よりも情報系の方が強い

 まず以下の2つのグラフを見ていただきたい。これらは年商500億円未満の中堅・中小企業にさまざまな業務アプリケーションの利用状況を尋ねた調査のうち、ERPとグループウェアの利用意向に関する結果である。

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ERPに関する今後の製品/サービス選定意向
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メールに関する今後の製品/サービス選定意向

 一般的に企業の基幹業務を担うERPは独自のカスタマイズやシステム連携が多く施されていることが多い。そのため、現在利用中の製品/サービスから他への変更について、本来であればERPの方がメールに比べて保守的になると考えるのが普通だ。だが、上記は逆の結果を示している。「現在と同じ製品/サービスの利用を続ける」という回答比率はERPで60.5%であるのに対し、メールでは81.7%と20ポイント以上も上回っている。

 中堅・中小企業の多くがメールなどの情報系アプリケーション活用において「現在の製品/サービスを使い続けたい」と考える要因は何だろうか?結論から言うと、それは「慣れ」から来る「変化への抵抗」である。メールの送受信やスケジュールの登録/参照といった基本操作は多くの社員が日常的に行うものだ。多用するだけに、他へと移るのは「慣れ」という観点から社員には少なからぬ負担なのだ。情報システム担当/部門における人材が不足しがちな中堅・中小企業においては社員に対する教育を行う余裕もないため、新たな操作法を習得させることが難しいという実情もある。

 確かにメールシステムをクラウド化すれば、特定のPCや居場所に関係なく一貫したメール管理を行える。また、PCに保存されたメールボックスが壊れてしまうといったことを心配する必要もない。にも関わらず、PCに専用アプリケーションをインストールし、メールデータを特定のPC内に保存する形態がいまだに少なくないのは、こうした「慣れ」の問題が大きく影響しているのである。

【次ページ】震災の影響でもクラウドへは移行しない
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