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- 2024/10/18 掲載
ガバクラは「やったもん負け」ではダメ、期限迫るも変わらない現実と課題のギャップ
自治体が気づき始めた移行問題の「深刻さ」
日本の地方自治体は1700を超える。それぞれが独自に開発・運用してきた情報システムのムダを解決し、コストを低減し、データ活用を推進する目的で、2021年9月1日に施行されたのが「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(標準化法)」だ。これによりすべての自治体は、2025年度末(2026年3月末)までに、住民基本台帳や税に関わる20の基幹業務について、標準に準拠したシステムへの移行が義務づけられた。
そして、その移行先として国とデジタル庁が推奨しているのが「ガバメントクラウド」である。VMware 公共ソリューション部 部長 中島 淳之介氏は、ガバメントクラウドの現状について、次のように説明する。
「前回取材いただいた時と比べて悪い意味で大きくは変わっていません。進んでいないまま時間が過ぎた分、悪化しているともいえます。唯一の前進があるとすれば、昨年に比べて問題の深刻さに気づいた人が増えたことです」(中島氏)
ガバメントクラウドへの移行は、自治体がSaaSアプリケーションを利用できると思っていたところから、各自治体でシステム全体を構築しなければならない状況になっている。前回こうした状況を「カレーライスが出てくると思って入ったら料理教室だった」と表現し大変反響を呼んだが、いざ料理しようにも、その方法がわからず、右往左往する自治体が多いのだという。つまり今の状態は「料理教室がどこにあるかすら見つけられていない自治体も多い状況なのです」(中島氏)。
実際に、中島氏にも全国の自治体から問い合わせが増えているという。
「問題の深刻さに気づいた自治体の情報システム部門や実際の業務を担当する方々から、『膨大かつ分散された情報を整理した上で、自分たちにもわかるように噛み砕いて概要を話してほしい。そして、検討項目の選択肢と選定のポイントを教えてほしい』という依頼が急増しています。さらに、特定の自治体だけでなく、周辺の自治体がまとまって相談いただくことが増えました。近隣自治体同士で情報共有をしながら進めたいということの表れではないでしょうか。」(中島氏)
予算取りを通じて感じる「やったもん負け」の不安
問題は深刻化する一方であるが、なぜ解決に向かわないのだろうか。中島氏は、関係者の現状認識がズレているのではないかと指摘する。「2025年度の予算取りに向けて、現実的に何ができて何ができないのかを判断すべき段階にあるにもかかわらず、いまだに『こうあるべき』『こうすべき』といった理想論の押し付けがあるように感じます。さらには、『もうムリだろう』という人もいる状態で、現状認識がバラバラな印象です」(中島氏)
こうした状況下でも、移行に積極的な自治体があるのは確かだ。しかし、中には、進めれば進めるほど「やったもん負け」になるのではないかと不安を感じている自治体も現れつつあるという。実際に多くの自治体が「予算取り」を通じて、この問題にリアルに直面している。
「2025年度の予算策定のため、ベンダーから見積もりを取ったところ、2、3倍、さらには10倍といった金額が提示され、どうやって議会に説明するのかに困っている自治体が増えています。その結果、ほかの事業の予算が削減されてしまうなど、ガバメントクラウドの意義やメリットはそもそも何だったのか、という話さえ出てきているのです」(中島氏) 【次ページ】なぜ? ベンダーの見積もりが「高すぎる」事情とは
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