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- 2012/03/30 掲載
「予算を確保しづらい」にどう取り組むか?事業継続のためのIT活用
中堅・中小企業市場の解体新書
「事業継続」と「自然災害を想定した緊急時対応計画」は同義ではない
本題に入る前にまず、「事業継続」とは何かを確認しておこう。「事業継続」とは、『自然災害や経済環境の急激な変化などが起きた際にも、平常時と極力変わらないビジネス活動を維持するための取り組み』を指す。自然災害には地震や津波、経済環境の急激な変化には円高、原油高、電気料金の値上げなどが該当する。ここでのポイントの1つ目は「ビジネス活動の維持に影響を与える事象は自然災害だけではない」という点だ。上記の定義にもあるように、円高などの経済環境における変化も忘れてはならない。
2つ目は「緊急時対応計画(Contingency Plan)」との区別だ。「緊急時対応計画」とは読んで字のごとく、自然災害や事故といった突発的な緊急事態が発生した場合の対処方法を整えることを指す。「消火訓練」や「避難訓練」なども「緊急時対応計画」の一環とみなして良いだろう。「事業継続」はビジネス活動の維持を目的としており、「緊急時対応計画」よりもずっと長い時間軸で捉える必要がある。
「事業継続のためのIT活用」を考える場合、「自然災害のみを想定した緊急時対応計画」に視点が限られてしまっていることが少なくない。この両者を明確に区別することが「事業継続」を正しく検討/立案する上での第一歩となる。
「広域災害」の経験によって、事業継続に求められる要件は高度化
こうした事業継続の基本ポイントを抑えたうえで、調査結果を踏まえながら詳細を見ていこう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「事業継続を実現するためのIT活用状況」を尋ね、その結果を地域別に集計したものである。ここでの「事業継続を実現するためのIT活用」とはデータのバックアップ、遠隔地へのシステム複製、データセンタなどの堅牢な設備へのシステム移行などといったITインフラの維持に関する取り組みを指す。調査実施時期は東日本大震災から1年が経過した2012年2月末~3月初旬である。グラフから見て取れるように、東日本大震災の影響を大きく受けた東北地方と関東地方、新潟県中越沖地震が起きた北陸地方では、「担当/計画を明確にした上で既に実施している」という回答の割合が高いことがわかる。
従来、中堅・中小企業におけるIT活用は短期的かつ局所的な視点で行われることが多かった。だが、東日本大震災以降も各地で地震が続いている状況に加え、未だに安心できない欧州の金融不安、それによって再発するかもしれない急激な円高など、企業経営に影響を及ぼす問題は依然として継続している。
そのため、中堅・中小企業側も担当者を明確にし、計画的に取り組む姿勢を強めつつある。事業“継続”という言葉にも現れているように、長期的な視点を持つことが極めて重要だ。
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「東日本大震災以降、事業継続を実現するためのIT活用に必要な費用に関する考え方がどう変わったか?」を尋ね、結果を地域別に集計したものである。(調査時期は先のグラフ同様に2012年2月末~3月初旬)
関東地方や東北地方では「以前に想定していたよりも高額の費用が必要」が比較的多く挙げられている。東日本大震災と同時期に長野県で大きな地震が発生した中部地方も同様の傾向を示している。北陸地方は「以前に想定していたよりも高額の費用が必要」とする割合が低いものの、「費用の検討が全くつかない」が多く、少なくともこれまでと同じ取り組みでは十分でないという認識が強いことがわかる。このように「事業継続を実現するためのIT活用に必要な費用について見直さなければならない」と考える中堅・中小企業が少なくない。
それはなぜか。以下のグラフは「以前に想定していたよりも高額の費用が必要」と回答した企業に対し、その理由を尋ねた結果である。「自然災害(地震、津波)だけでなく、停電や節電に関する対策を講じる必要がある」「データ保護だけでなく、個々の社員が遠隔でアクセスできる手段が必要となる」の2点が多く挙げられている。
【次ページ】「予算を確保しづらい」にどう取り組むか?
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