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サーバやクライアントPCを用いてITシステムを利用する、いわゆるクラサバ環境に慣れている中堅・中小企業は、ITをどのように次のステージへ進めるべきか明確な方針を持っていないことが多い。さらに、経済環境の悪化とクラウドに代表される「所有から利用へ」の相乗効果によって、IT投資への動機付けが失われている。こうした中、ユーザー企業は「本当に必要なITとは何か」を見極める機会とするべきで、そこには売り手側の正しいリードが不可欠にもかかわらず、当の販売店も迷っているような状況が散見される。まさに現在は、IT市場の転換期にいると言えそうだ。
足りている中堅・中小企業のIT環境は、次に何を望んでいるのか?
中堅・中小企業のIT導入実態について、ノークリサーチが毎年実施している今年の最新結果をひとことで言えば、現状企業活動で活用するためのITインフラは「十分足りている状態」と言える。企業活動に必要なインフラは何かを明確に定義することは難しいが、少なくとも業務処理をコンピュータで行い、社内外でのネットワークによるコミュニケーションツールや通信インフラはすでに整っているわけだ。
ITシステムに大きな問題や課題は特に見当たらない(セキュリティなどの喫緊の対応を抜きにすればという注釈は必要だが)状況下では、今話題の行政刷新会議の「事業仕分け」のように、すべてのIT資産や利用方法、利用頻度を見直すことで、現在何をすべきかを見つけることができるかもしれない。
今までは、新規の業務や陣容の拡大などの必要性から、その都度対応するITを購入していたが、現在は経済環境の悪化による投資抑制の機運で、ひとまず購入の必要性を冷静に考える、内容を検討する、利用方法を吟味する良い機会となっている。
図1で明確なように「基幹業務システム」としてのアプリケーションの導入はほぼ終わっている。「財務会計管理」81.8%、「人事・給与管理」77.3%、「購買・販売管理」74.5%で、検討中まで含めると9割に達している。いわゆる業務システム3役「財務会計、販売管理、人事給与」の純粋な新規導入の余地はほとんどない。
一方で、SFA(セールスフォースオートメーション)12.2%、CRM(顧客管理システム)8.6%、SCM(サプライチェーンマネジメント)6.2%と、企業のコア事業に役立つアプリケーションの導入率は低いままだ。逆にここには大きな潜在需要が存在しているが、これらのいわゆる戦略系アプリケーションは市場に投入されて10年以上経過するものの、依然として低い導入状況となっている。
この戦略系アプリケーションで、代表的な例は
前回でも触れているCRMだ(注1)。この種のフロント系のアプリケーションは、導入してすぐに効果が出せるものではない。導入前の社内の体制整備と、導入後の継続したデータ入力、ルール化された手順などの厳守、そして一定期間の利用を経て、ようやく蓄積された情報の有効活用が図れる。複数のステップを踏むために結果が表れるまでには時間がかかる。
しかし、この点をクリアできる企業の多くは大企業だ。投資の効果がすぐ得られることを優先する中堅・中小企業は躊躇せざるをえない。投資金額に応じた最終的な結果を出すまでに期間がかかれば、システムとともに労務費も膨れ上がることになりがちだからだ。
「見える化」などのキーワードは、ITによる効果が経費の削減とともに生産性の向上など、売上につながる効果を期待したものだったが、実際のところ、戦略的なIT活用はそう簡単には実現できないのである。
注1
第8回と今回ご紹介した調査では調査対象が異なるため、その結果も異なっている。
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