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ようやく日本の景気も上向き始めたとみる向きもあるが、依然多くの企業は事業継続のプレッシャーにさらされている。投資する余力は少なく、ますますシビアな判断が求められている。中堅・中小企業がIT投資を行う場合、過去に別の企業が導入した経過、いわゆる「導入事例」を参考にする企業は多いはずだ。しかし、他社の事例をそのまま自社に当てはめるのは危険だ。また、中堅・中小規模の企業にとって、良き相談役となるITのパートナーの存在も欠かせない。今回は、導入事例の活用方法とどのようにしてパートナーを見極めるべきかについて考えてみたい。
経営を好転するにはITの有効活用が欠かせない
グローバル規模で景気後退が継続しており、先進国はいうまでもなく、一部の途上国ではさらに厳しい状況となっている。ユーロ圏内ではPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシア、スペインの4カ国)がユーロ市場のお荷物となって、共同体を危うくしかけている。また、相次ぐ自然災害も重なり、世界規模の息苦しさは解消の兆しが見えない。
日本国内でも、株価はようやく1万円を超えたものの、PIGS問題でゴールデンウィーク明けは大幅な株安、円高となり、従来から続くデフレ基調も合わせたトリプルパンチが企業に悪影響を及ぼしている。また、2010年3月の完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は5%と、6年ぶりの低水準になるなど(総務省:労働力調査)、雇用環境も厳しさを増している。
多くの企業がかつて経験のしたことのない経済環境のため、過去の成功体験が有効な雛形にはなりにくい。だからといって景気が悪いのはみんな同じだからと、自分が悪いのは仕方の無いことだと、座してあきらめてしまうわけにはいかない。
こうした中で中堅・中小企業の経営にITが有用であることに疑念はないだろう。クラウドやSaaSなど、仕組みの話はさて置き、実際に企業経営に役立つIT活用を実現することが望ましい。現在のITの成長ステージは、所有と利用のクロスオーバーする端境期にあるとともに、技術的にも、経済環境的にも踊り場にあり、大きな変革の準備段階にいる。
現状を振り返れば、「道具としてのIT」は中堅・中小企業でも一定レベルの導入が進んでいる。次のステージでは、実際に企業の顧客を獲得するためのSFAやCRMなどのフロント系のシステムは効果がありそうだ(
図1)。
しかし、これらのシステムは導入すればすぐに効果がでるものではなく、一定期間のデータの蓄積と全社的なデータ更新の“しばり”や、なにより経営者の“思い”がなければ実現しにくい。この辺の事情は、「ITという製品やパッケージを導入することで即座に戦略的に活用できる」という勘違いによるものだ。
ノークリサーチでは3カ月ごとに中堅・中小企業のIT投資指数を算出しているが、マイナス基調ながら底打ち感がぼんやりとは感じられる(
図2)。ただし手放しで安心できない状況であることに変わらない。総論としては「まだら」である。
【次ページ】導入事例の活用方法
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