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  • 2017/12/14 掲載

「使わないと現場が回らない」自動化領域広げる協働ロボットは戦国時代へ

森山和道の「ロボット」基礎講座

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2年に1度の「2017国際ロボット展」が11月29日から12月2日の日程で開催され、大盛況に終わった。出展企業・団体数は612社・団体と過去最大。来場者数は4日間合計で130,480名。前回(121,422名)よりも9,000人程度増え、会場内は大混雑だった。各種産業用ロボットやサービスロボットのほか、今回はトヨタや川崎重工業から新型のヒューマノイド、さらに流行のディープラーニングを活用したロボットなども出展され、メディアほか多くの注目を集めた。今回は自動化の範囲を広げる協働ロボットを中心にざっと見なおして、おさらいしておこう。
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VRとディープラーニングを活用したデンソーの展示

連載一覧
 工場内外で多種多様な広がりを見せるロボット展示のなかで、今回の特徴を一つだけ敢えて挙げるとすれば、やはり「協働ロボット」かもしれない。人と空間を共有して働くロボットたちだ。

 前々回(4年前)あたりから目立ち始めた協働ロボットの出展だが、今回は各社が次世代の協働ロボット活用シーンをブースで演出。生産量の変動、深刻さを増す現場の人手不足を背景に、言わば「協働ロボット戦国時代」が新たなフェーズに入った印象があった。

 もはや「使えるか使えないか」ではない。使えるところから使っていかないと現場が回らなくなる──。そんな危機感からか、どのデモも黒山の人だかりだった。

自律移動台車とロボットアームが動き回る次世代工場の姿

 「今回初めてロボット展に来場した」という方々でも気づいたところはおそらく、自律移動台車ロボットとアームのロボットが一体になったロボットが動きまわる、次世代工場の姿が各社ブースに見られたことだろう。

 これらは工程と工程のあいだをつなぐロボットだ。これまでは人があいだをつないでいたのがAGV(無人搬送車)を使うようになり、さらにはパレットをAGV上に載せる作業も含めて、ほぼ完全に自動化することができるようになりつつある。

 これまでのロボットは設備として床に据え付けて、柵で周囲を覆って使うものだった。それが必要に応じて移動し、投入するものへと変化しているのだ。

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安川電機ブース
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不二越のブース
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KUKAブース
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KUKAのブースではビールを注ぐ姿にも大勢が賑わっていた
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三菱電機ブース
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日本電算シンポによる台車とユニバーサルロボットのアームの組み合わせ

デンソーはVR+ディープラーニング「双腕型マルチモーダルAIロボット」

 デンソーのブースでは現在流行のキーワードすべてを組み合わせたような、バーチャルリアリティ(VR)とディープラーニング(深層学習)を組み合わせた「双腕型マルチモーダルAIロボット」が出展された。

 VRを使ったティーチングシステムと、ロボットアームの軌道や画像情報、力センサー情報などを組み合わせたマルチモーダル(複数の感覚情報)学習で、不定形物をプログラムなしで扱えるようになるというもの。デモ自体はタオルを畳んだり、複数の野菜を掴んでサラダボールに投入するという作業だった。

 なお、ロボットの動作はディープラーニングによる学習によって作られるため何が起こるかわからず、速度は1/10に制限しているとのことでゆっくりしたものだった。

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デンソー「双腕型マルチモーダルAIロボット」

 デンソーのブース内では11月末から受注を始めたデンソーウェーブによる卓上で動かせる約4kgの小型協働ロボット「COBOTTA(COllaboration roBOT Technology Arm)」を使ったデモを大々的に展開。先端にカメラをつけ、3色ボールペンを組み立てたりインクカートリッジを扱ったりする様子をデモし、さながらミニ工場のようなブースになっていた。

 デンソーは「COBOTTA」の内蔵コントローラーを開放、制御用APIも公開してハッカソンも行なって、用途を探索・開拓中だ。

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デンソー「COBOTTA」

ファナックは人とロボットが完全共存する姿を提示

 他の協働ロボットも見ていこう。ロボットが人と同じ空間を共有して動けることを、もっともわかりやすく示していたのはファナックだったかもしれない。

 棚に格納されたワークを協働ロボットが3Dビジョンを使って見つけて取り出し、コンテナに並べる。そのロボットが動いているところに人が入ってワークを補充するというデモだ。なおこのロボットの3Dビジョンは今回が初出展だ。

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ファナック「3Dビジョンを使ったキッティングシステム」

ラインナップを強化した川崎重工業

 川崎重工業は東京センチュリーリースと提携して絶妙な金額設定で派遣事業も行っている協調型の双腕スカラロボット「duAro」のラインナップを増強した。

 片腕可搬質量を2kgから3kgに上げ、垂直軸ストロークを550mmと大きくした「duAro2」と、参考出展ながら組み立て作業用の「duAro3」をデモ出展した。

 川崎重工業が東京大学JSKと共同開発中のタフなヒューマノイド「RHP(ロバスト・ヒューマノイド・プラットフォーム)」と並んで目玉展示だった「Succecer(サクセサー)」もユニークだった。

 「Succecer」は熟練技術者の作業と自動化の両立を目指した技術で、作業時の感覚を再現して直感的操作を助ける「コミュニケーター」というインターフェースを用いる。感覚や判断が必要なため人が行っている塗装や、椅子のはめこみのような作業を、ロボットの動作として記録して再生したり、人が直感的な操作で介入してロボットを操ることができる。

 「Succecer」はロボットが熟練者の作業を学習できるため技能が伝承できるほか、新人のトレーニングにも用いることができるという。2019年度から一般販売される予定だ。



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「Succecer(サクセサー)」のコミュニケーターの一つ。椅子を据え付ける感覚を音も含めて感じることができる
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川崎重工業ヒューマノイド「RHP」

 なお「ロボット革命がはじまった ― そして人に優しい社会へ」と題された国際ロボット展のテーマ展示コーナーでは、先だって協働ロボット分野で協業し、操作系を統一すると発表された川崎重工業とABB、それぞれの協働ロボットによる組み合わせで、野菜の選果を行うというシチュエーション設定でのデモが行われていた。ロボットと共存する社会の演出だ。

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川崎重工業のduAroとABB YuMiを組み合わせたデモ

【次ページ】次世代工場の姿を示した安川電機
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