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- 2018/04/27 掲載
組立・物流から食品工場まで、中小企業の生産現場へのロボット導入は?スマラボの狙い
森山和道の「ロボット」基礎講座
ロボット導入の鍵を握るロボットSIer育成が急務
このような社会背景のもと、経済産業省および日本ロボット工業会でも、ロボットSIerの知識・技能を向上や、ロボットの活用を促進するための環境整備、ロボットシステムのモデル構築を推進するため、「ロボット導入促進のためのシステムインテグレータ育成事業」を行っている。ロボットSIerを紹介するWebサイトも開設され、SIerがどういう仕事なのか簡単にまとめた動画も公開されている。
「ロボット導入促進のためのシステムインテグレータ育成事業」は「ロボットSI事業参入・拡大型」「ロボットセンター開設型」「ロボットシステムのモデル構築型」の3タイプの提案に支援を行っている。
昨今、各種メーカーのロボットを取りそろえた展示場を開設したといったニュースが相次いでいるのは、2番目の「ロボットセンター開設型」に採択された案件が実現し始めているためだ。ロボットの導入提案を実物を使って行い、かつ、操作・安全教育を行い、ロボット活用の啓発と普及を行うことが期待されている。
今回、新たに設けられたロボット展示場の開所式を取材することができたので、今回はそれをレポートして、SIerの役割と、今後期待される点をのぞいてみたい。
物流、組立、IoT、食品分野での活用イメージを提案する「スマラボ」
ロボットシステム導入を手掛けるFAプロダクツとオフィスエフエイ・コム、ロボコムは、3社共同で、ロボットシステムとIoTの常設展示場「Smart Factory Conductor LABO(スマラボ)」を栃木県小山市に5月16日に開設すると発表。4月18日に落成発表会、同19日に現地説明会を行った。「スマラボ」ではさまざまなメーカーのロボットを設置し、特徴を理解しながらシステムインテグレーション技術を習得できるとしている。
広さはおよそ300平方メートル。安川電機、ファナック、ユニバーサルロボット、デンソー、エプソン、日本電産シンポ、三菱電機などのロボットが並べられており、ロボットメーカーは今後も増やす予定。近年では予兆保全や画像処理、検品などを用途として、いわゆるAI技術が使われ始めているが、それらへの対応も進める。
「スマラボ」の展示は大きく4つに分かれている。「物流」「自動車・機械」「IoT」「食品」だ。それぞれ簡単にご紹介する。なお、デモ内容はあくまで記者公開日のもので、今後変わっていくものと思われる。また、ロボットの動作は安全性を考慮して、いずれもかなり遅めに設定されていた。
(1)物流ゾーン
まず「物流」ゾーンでは、(1)MUJINのビジョンとコントローラーを使った、ティーチレスのデパレタイジング・パレタイジングのデモ(MUJINについては過去記事も参照)、(2)2つのカメラを使ってランダムに流れてくるワークの向きや高さを認識し、コンベアを止めずに搬送するデモ、(3)エクセルで簡単にプログラミングが可能で小型ながら積載で200kg、牽引で500kgを搬送できるトヨタL&FのAGVによる自動搬送デモの3種類が行われていた。(2)自動車・機械ゾーン
「自動車・機械」ゾーンは、従来の組立工程のロボット活用例だ。ここでは、(1)画像処理および2種類のロボットを1つのコントローラーで連携させて、治具(じぐ)上ではなく空中で部品を組み合わせるデモ、(2)ファナックの認識用3次元カメラと磁石を使ったエンドエフェクタを用いて、ティーチレスでばら積みピッキングを行うデモの2つが行われていた。(3)IoTゾーン
IoTゾーンでは、IoT化のイメージを持つためのスモールパッケージとして、レガシーな設備機械向けにワイヤーに巻きつけるだけの「信号横取りセンサー」を使った稼働監視や予知保全のアプリケーションのほか、振動センサー、6軸(加速度・ジャイロ)を使った予知保全のデモが実施されていた。稼働状況はタブレットで見ることもできる。また、カメラ、バーコードリーダー、搬送機、ロボットを1つのPCと共通通信規格の「ORiN」を使って制御している様子がデモされていた。IoTゾーンに置いている理由は、システム全体をクラウド上で仮想化してシミュレーションした上で、現場で組み付けることを想定しているため。
IoTゾーンではもう1つ、化粧品業界をイメージした協働型ロボットのデモが行われており、こちらでは生産指示が数時間単位で変化する少量多品種の現場で、日本電算シンポ製の自走式台車上に乗せた手首カメラ付きアームロボットを活用する例が示された。
(4)食品ゾーン
食品ゾーンはスマラボの目玉の1つかもしれない。こちらでは弁当盛り付けロボットがハンドを食品に合わせて交換しながら、唐揚げや梅干しのダミーを盛り付ける様子がデモされた。国際ロボット展に出展されていたのと同じもので、3D画像センサーで食品の位置や種類を立体識別、さまざまな食品を盛り付けることができる。ハンド部には荷重センサーが付きいていて同時に計量も可能なため、たとえば、ひじきを定量だけ盛るといった作業にも対応できる。
衛生上、低温下での作業が必要な過酷な労働環境を改善できるロボットだという。なおオフィスエフエイコムは、2017年2月にコンビニのローソンを子会社にした三菱商事と、盛り付けロボットを共同開発中だ。
このほか、おにぎりを番重と呼ばれるトレイにまとめていく3台のロボットと、ばら積みされたレトルトパウチをピッキングして移載する2台のロボットのデモを見ることができた。施設内に固定された大型の専用機ではなく、移動可能なロボットを使うことで、中小の狭い食品工場でも活用できることをイメージしている。レーザーセンサーを使うことで人が近寄るとロボット動作を遅くするなど、安全性にも配慮している。
【次ページ】デジタルツインで全体のスループット向上へ
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