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2020年に開催されるロボット大会「World Robot Summit」(WRS)のルールや具体的な競技内容が公開され、協賛企業も増えてきた。発表当時は「ロボット版オリンピック」と呼ばれていた競技大会だ。ロボットビジネスに新規参入を目指す企業にとってもチャンスとなるかもしれない。ただしそのためには、自分たち自身の発信力も重要となる。
2015年度から5年間で1,000億円を投資
2020年、オリンピックの年に「World Robot Summit」(WRS)が行われる。2015年度からの5年間を「ロボット革命集中実行期間」と位置付け、官民で1,000億円のロボット関連プロジェクトへの投資を目指す政府の「ロボット新戦略」の一環として行われるイベントで、目的はロボットの社会実装と研究開発を促進すること。
ロボット競技「World Robot Challenge」と、展示会「World Robot Expo」の2つがセットになっている。
プレ大会である「World Robot Summit 2018 TOKYO」は、2018年10月17日~10月21日の日程で、東京ビッグサイトで開催される。2020年の大会は8月に「福島ロボットテストフィールド」でインフラ・災害カテゴリの競技が開催されたあと、同年10月に他の競技が愛知県で開催される予定となっている。
2017年8月30日、特別講演「
人間とロボットが共生し協働する世界の実現に向けて ~Robotics for Happiness~」が開催された。主催はモノづくり日本会議と日刊工業新聞社。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共催だ。
WRS実行委員会 委員長で東京大学 名誉教授の佐藤知正氏、経済産業省 製造産業局 産業機械課ロボット政策室 室長の安田篤氏によるWRSの説明のほか、WRS実行委員会諮問会議 委員長の金出武雄氏、同じく委員のヘンリック・クリステンセン氏(カリフォルニア大学サンディエゴ校 コンピューター理工学部 教授)、ギル・プラット氏(トヨタ・リサーチ・インスティチュート CEO)による特別講演が行われた。
競技会形式の研究開発の意義と重要性
WRS実行委員会 委員長の佐藤知正氏は、リンドバーグによる大西洋単独横断飛行がその後の民間航空機産業へとつながったことや、DARPAグランドチャレンジが自動運転の実地応用に火をつけたことなどを例に出し、競技会形式の研究開発の意義と重要性を強調した。「ロボットは分析も大事だが、インテグレーション(統合)やパフォーマンスも大事であり、人材育成の場としても競技会は有用だと考えている」と述べた。
WRSの概要については経済産業省の安田篤氏が語った。いま、産業用ロボットの市場が伸びており、サービスロボットの市場は立ち上がり始めた段階にある。
介護分野では毎年100万人以上のペースで高齢者数が増加し、2025年には240万人の介護職員が必要とされており、質量ともに改善・負担軽減のためにロボットが必要とされている。
また、膨大な数の建設後50年を経た老朽化インフラ点検のためにもロボットの力が必要だ。つまりこれからの社会に期待されているのがロボットだ、という文脈で、ロボットの社会実装を加速するためにWRSの場を設定したと述べた。
WRSでは「政府国民一体となってロボットが身近にある日常を考えるきっかけ」を作ることを目指すとしていると述べて、WRSのコンセプトビデオを示した。
コンビニ作業やインフラ点検など、4カテゴリ8種目が実施予定
WRSのメッセージは「Robotics for hapiness」。ものづくり、サービス、インフラ・災害対応、そして人材育成を狙った19歳以下対象のジュニアカテゴリーで競技が行われる。全部で4カテゴリ8種目が実施予定である。
ものづくりカテゴリーでは「製品組立チャレンジ」競技が行われる。今年(2017年)行われるトライアル競技のなかでギアユニットの組み立てを行ってみて、その後、2018年プレ大会ではベルトユニットの組み立て、そして2020年本大会ではより難しい組み立て競技を設定する予定だ。使用ロボットの制限はない。治具なしで作業できればより高得点になる。現場で柔軟に対応できるロボット技術の開発を目指す。
9月末にカナダで行われる「IROS2017」のなかでトライアルが行われるほか、11月に行われる「2017国際ロボット展」で2チームによってデモが行われる予定だ。
サービス分野は「ロボットと人との協働」をテーマとしており、ロボットだけでは満点が取れないような競技が設定される。競技は2種類。家庭内の片付けなど各種作業支援を行う「パートナーロボット・チャレンジ」と、そのシミュレーションリーグ、「
フューチャーコンビニエンスストア・チャレンジ」だ。
「パートナーロボット・チャレンジ」では、トヨタ自動車の「HSR」を共通プラットフォームとして使う。「HSR」はロボカップでもプラットフォームとして使われている。
コンビニを舞台にした競技(FCSC)は注目を集めそうだ。タスクは3つ。(1)弁当やおにぎりなどデイリー品の陳列、消費期限切れ商品の廃棄、(2)接客、(3)トイレ清掃だ。採点は加点方式である。こちらにはプラットフォームロボットはない。各チームが独自ロボットで挑むことになる。これも2017年12月に仙台でトライアルが行われる。
インフラ・災害分野では3競技が行われる。プラントのモックアップを使って点検メンテナンスを行う「プラント災害予防」、人命救助や障害物排除を行う「トンネル事故災害対応・復旧」、災害対応ロボットの性能評価試験法自体を開発することを目指す「災害対応標準性能評価」の3つだ。この分野の競技は主に「福島ロボットテストフィールド」で行われる。10月に上海で開催されるIEEEでデモが行われる。
「
福島ロボットテストフィールド」とは、ロボットやドローンの実験場として整備されている、おおよそ50haの広大な実験場だ。南相馬市及び浪江町にあり、二つの市町間の13kmの空域はドローンの実験に用いられている。
ジュニア競技では、ソフトバンクの「Pepper」を使った「スクールロボットチャレンジ」と、サービスカテゴリーのジュニア版のような「ホームロボットチャレンジ」の2競技が行われる。こちらの「スクールロボットチャレンジ」も、2017年8月に既にトライアルが玉川大学学術研究所 先端知能・ロボット研究センター(AIBot研究センター)で行われている。
なお、各種競技のルールブックのドラフト(英語版のみ)は、WRSの公式サイトの
各カテゴリーページで公開されている。より詳しい内容を知りたい方はそちらをご覧いただきたい。
安田氏は「競技会の実施によって、ユーザーサイドにはロボット情報の収集や見極めができ、世界トップレベルのサプライヤーとの交流、ロボットに対してフレンドリーなカスタマーにPRができる。メーカーサイドには、ロボット技術の実用化と普及、そして技術者・開発者との交流・連携、グローバル人材獲得などの利点がある」と述べて、「官民あげたサポートをお願いしたい」と講演を締めくくった。
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