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- 2017/11/01 掲載
パルコも導入、ユニシスが自律移動ロボット「Siriusbot」を開発する理由
森山和道の「ロボット」基礎講座
営業中は顧客案内、営業後には棚卸しで人を手伝うロボット
「Siriusbot」は、3社共同で採択された地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(都産技研)の平成28年度ロボット産業活性化事業「公募型共同研究開発事業」で開発されたロボットだ。仕様は高さ939mm、幅553mm、奥行き630mm。ちょうど大人の腰くらいの高さだ。重さは約35kg。走行速度は最大時速6km程度。超音波、レーザー、3Dセンサーなどを使って障害物を避けてSLAM(自律移動ロボットの基本技術の一つで、自己位置の推定と環境地図の作成を同時に行う技術)を行い、自律走行する。
ロボットとしての機能は大きく二つ。店舗営業中の来店客の案内と、営業終了後のテナント在庫確認だ。
来店客の案内には本体上面にレイアウトされたタッチパネルと音声対話機能を用いる。テナント情報やPR情報を対話形式で案内する方式で、自律走行機能を使って指定のテナントや施設までの移動案内もできる。海外からの来店客には英語で対応する。
たとえば、「メガネ屋は?」と聞くと、「メガネ屋はこのフロアにある◯◯と、6Fにある××があります」「案内もできます」とロボット側から応答があり、案内を命じるボタンを押すと、移動案内が始まる仕組みだ。
音声認識等には国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が提供しているクラウドベースのマルチリンガル・コミュニケーション・パッケージである「Rospeex」を用いている。
実際に試してみたところ、マイク位置やタッチパネルのインターフェース等、よりナチュラルに人と接するための基本機能そのものに、まだまだ改良・工夫の余地が感じられた。また障害物回避やルート生成についても、まだ作り込みの余地は少なくないと感じた。
このあたりはまだまだ実験用の機体だということもあるだろう。ただ、UIは人と接する肝心の部分なので、今後の発展に期待したい。
営業終了後には、ロボット背面にUHF帯用のアンテナを取り付ける。商品に事前に付けられたRFIDタグを読みとることで、テナント従業員の商品在庫確認業務を手伝う。ロボットは通路を走行するだけで、テナント店舗の奥にまである商品の在庫チェックを行うことができる。
今回の実証実験でチェックしているタグ数はおおよそ400個。テストを兼ねているため、3回走行してチェックを重ねている。RFIDはコスト面で普及の壁があったが、中国での動向などを背景として、今後、劇的に安くなる可能性が高いと原氏は語る。現在は単純なCSVファイルを出力するだけだが、将来はもちろん、システム化し、スマホ上で簡単に在庫管理や、売れ行きの状況をチェックできるようなものにするという。ウェアラブル技術との連携も想定している。
AIやロボットなどICT活用を進めるパルコ
なお、パルコは、これまでにもICT活用やロボット活用を進めている。2016年7月には仙台PARCO2で、米Fellow Robots社の「NAVii」とソフトバンク「Pepper」を期間限定で導入して、2種類の異なるロボットが共同でショッピングセンターの接客業務サポートを行う実験を行った。これも日本ユニシスと行った実験だ。店舗内案内については「欲しい商品がどこにあるのかわからない」「案内してほしい」という顧客ニーズが強くあるにもかかわらず、現状以上に人手を割くことができない現状を打破できるかもしれないものとして、ロボットに期待しているという。
なお今後もパルコでは上野に11月4日にオープンする「PARCO_ya(パルコヤ)」にディープラーニングを活用するABEJAの「ABEJA Platform for Retail」を導入して、来店人数計測カメラと年齢・性別判定カメラを設置し、来店者数、年齢・性別などを解析して可視化することで来店者数の時間帯別推移や日別推移等の解析結果をテナントに提示するなど新たな試みを進めていくとしている。ロボットもそのような取り組みの一環だ。
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