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半年前から本連載を始めさせてもらったことも一例だが、2016年はロボットブーム、AIブームの年だった。IoTやインダストリー4.0も含め、来年以降もこの流れは続きそうだが、今回は2016年のロボットシーンをざっと振り返ってみよう。お断りしておくが、網羅しているわけではない。だが、だいたいの雰囲気を振り返ることはできるのではないかと思う。ただし、AIやドローン、自動運転は外した。これらやVRなどを含めた自動化の景観は、読者の方々に想像してもらいたい。
基礎研究、ヒューマノイドの分野
1月、トヨタ自動車が、ラスベガスで開かれた国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で「Toyota Research Institute」のメンバーを発表した。CEOはギル・プラット氏で、他にも豪華なメンバーが揃い、多くの人を驚かせた。カリフォルニア州パロ・アルト、マサチューセッツ州ケンブリッジ、ミシガン州アナーバーに拠点を置いている。なおトヨタはリハビリ支援用ロボットも2017年をめどに実用化するとしている。
9月にはオープンソースのミドルウェア「ROS(Robot Operating System)」やシミュレータ「Gazebo」の管理を行っているOpen Source Robotics Foundationとの連携も発表。自動運転、ロボティクスの開発を行っている。
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Boston Dynamicsは2月にヒューマノイド「次世代Atlas」の動画を公開。雪のなかをノシノシ歩き、荷物を床から持ち上げたり、なんども人間に妨害されたり押し倒されたりしながらも、自力で起き上がる様子は、また世界的に話題となった。
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同じく、6月に公開されたSpotMiniの動画も大人気だ。家庭内をスタスタ歩きまわる姿に多くの人が魅力を感じたようだ。オチまでついている。
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アメリカのフロリダ大学 人間・機械認知研究所(IHMC)からは、ヒューマノイドの「Atlas」が家庭内のさまざまな物体を操作するまとめ動画も公開された。
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IHMCからは11月末に不安定な足場を歩行する動画も公開されている。
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ジョージア工科大学のAMBER LABは、スニーカーを履いた二足歩行ロボット「DURUS」の動画を夏に公開した。
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未だにヒューマノイドの研究では日本が先行している、あるいはヒューマノイドを研究開発しているのは日本だけと思いこんでいる人が時々いるのだが、これを見ればそれは間違いだとわかるだろう。
人型ロボットの活用は水中にも広がっている。スタンフォード大学は『OceanOne』という水中作業用ロボットを発表した。沈没船の調査に成功したという。
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とはいえ、日本もただやられているわけではない。東京大学情報理工学系研究科・情報システム工学研究室(JSK)の腱駆動ヒューマノイド「ケンゴロウ」がモーターを気化熱で冷却しながら腕立て伏せしたり、寝返りをうったりするビデオは話題になった。
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産総研はエアバス、フランスCNRSと共同で飛行機内部の組み立て作業をヒューマノイドを使って行う研究を始めると2月に発表した。多点接触動作計画、ヒューマノイドロボット全身制御技術を活用するという。
早稲田大学と三菱重工は内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジの一環として開発した4脚ロボット「WAREC 1」を発表した。災害を想定しており、腹ばい歩行したり、梯子を上り下りすることもできる。タフ・ロボティクス・チャレンジでは他にも多くの災害対応ロボットを開発中だ。
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年初のCESでもう一つ注目されたのが、グーグルの「Project Tango」だ。3Dセンサーを使って一計測や認識を行うハードウェアとソフトウェアのプラットフォームで、9月にはスマートフォン「Lenovo Phab 2 Pro」に搭載されて実際に発売された。Tangoは3Dセンサーやアプリケーションが今後劇的に普及する可能性があるので要注目の技術である。
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グーグルは14台のロボットを並列で動かし、深層学習を使って物体の掴み方を学習させている研究動画も公開。単に物体を認識して取るだけでなく、自分自身の手の動きも含めて観察し、邪魔になっているものを避けてから取るといった動作をロボットが自分で学習する。人工知能技術とロボティクスの分かりやすい組み合わせ例として各種講演でもよく紹介されている。ただし8割の物体を取るようになるのに2ヶ月以上、80万回の試行データが必要だったという。
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人工知能関連については特に触れないが、GPUメーカーであるNVIDIAが組み込み機器向けに省電力化したカードサイズの「Jetson TX1」を搭載して、ディープラーニングによる認識などを自律移動ロボットでも活用しようという動きがじわじわと広がっている。
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グーグルが2013年に買収したベンチャーのSCHAFTは4月のイベント「新経済サミット2016」でユニークな二足歩行ロボットを公開した。
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5月には、ロボットから撤退していたソニーがアメリカのAIベンチャー・CogitAI社に出資し、共同で深層強化学習を使った製品の実用化を目指すと発表した。ロボット開発も視野に入れるという。
このほか日本政府は、福島県に災害現場対応や廃炉関連技術などを集積する構想を掲げて、ロボット研究拠点を作ろうとしている。
ロボット競技会、日本は2020年、ドバイは2017年
日本は2020年のオリンピックに合わせて「World Robot Summit」を開催する予定だ。2015年に策定された「ロボット新戦略」に基づき、名古屋と福島ロボットテストフィールドで展示会と競技会を実施する。競技は3分野(ものづくり、サービス、インフラ・災害対応)の計6種目に、ジュニア競技を加えて合計7種目の予定。
他にも、2020年のロボット活用を目指した動きが徐々に活発化している。トヨタのWingletなどの移動補助ロボットのほか、自律移動型ロボットや案内ロボットが多数使われることが期待されている。
いっぽう、アラブ首長国連邦のドバイは2017年に「World Future Sports Games」というロボット競技イベントを実施すると発表している。
民間によるロボット月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦するispaceが運営する民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」は、auとオフィシャルパートナー契約を締結して、通信システムの開発やプロモーションを行った。インドのTeamIndusが開発する月着陸船(ランダー)に相乗りする。打ち上げ予定日は2017年12月28日だ。
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7月にドイツのライプツィッヒで開催されたアマゾン・ピッキング・チャレンジ(APC)では、オランダのチーム「Delft」が勝利した。「Stow(収納)」と「Pick(取り出し)」の二つの作業を競う競技だ。やがて物流現場で活用されることが期待されている。
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秋にはスイスで「Cybathlon(サイバスロン)」が行われた。技術を活用した義手や義足、BMIなどを活用したスポーツ大会だ。
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10月には北海道・上士幌で山岳遭難救助を想定したロボコン「Japan Innovation Challenge 2016」が行われた。地上のロボットも対象だったが、現実的にはドローンチャレンジになってしまったようだ。
【次ページ】BtoBやBtoC分野でどのように利用されたのか
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