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  • 2020/07/01 掲載

利用者のニーズに変化、ウィズコロナのロボット開発に求められる視点とは

森山和道の「ロボット」基礎講座

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新型コロナウイルスとの戦いが続いている。ロボット業界に求められていることは、医療関係者や清掃業者、生活必需品の工場や物流を担う人たち、販売店の店員などエッセンシャルワーカーを感染から守ることだ。そして社会全体の強靱(きょうじん)化に貢献することである。これまでは緊急対応だったが、ウイルスとの戦いは長期戦となる。実際にロボットを扱うサービス提供者から見て、適切なコストで本当に役に立つロボットの開発が必要だ。「感染」に対する安心の提供も必須となるだろう。
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医療廃棄物の入ったゴミ箱を自動回収する、モバイルアームロボット
(Photo/Getty Images)


パンデミックはロボット業界全体にはプラスの効果をもたらす

 新型コロナウイルスによってロボットシーンはどのような変化があるのか、ひんぱんに質問されるようになった。ロボットに限らず技術全般に言える話だが、ざっくり言うと、プラスとマイナス、双方の影響があると思っている。前回のコラムでも述べたように、物流などすでにロボット活用が本格的に始まっていた領域では自動化は加速している。また、すでに技術自体は存在していたが、これまではコストの問題で導入に苦戦していた各種ロボットの採用も始まっている。

 いっぽう、これまで実証実験で止まっていたレベルの技術・適用分野においては厳しい苦闘が続いている。これまでターゲットとしていた分野から異なる分野へとピボットせざるを得ないところも出てくるだろう。

 ただ、ざっくり言うと、ロボット業界にとって今回のパンデミックはプラスの影響となるだろうと考えている。パンデミックによって一時的な需要減少が起きても、もともとあった少子高齢化による生産労働人口の減少を背景とした自動化への需要自体には変化はない。つまり、一時的な需要減少は「需要の先送り」にすぎない。

 そこに加えて、今までなかった需要が生まれ、構造変化が起きようとしている。医療現場その他でのニーズについては言うまでもないが、たとえば飲食店では搬送ロボットや装置の活用が進められ始めている。また、これまで人海戦術で仕事をこなしていた工場のような場所においても、協働ロボットをより積極的に活用して、つまり人をずらっと並べていた間にロボットを配置することで、いわゆる「3密」を回避しようという提案が増え始めているようだ。

 本当にそのようにいくかどうかは疑問もあるが、少なくとも今後、かなりの高確率でまた起きるかもしれない非常事態宣言のような事態に対して準備を進めておこうという側面もあるのだろう。これからしばらくの間は、通常モードと非常モード、2つのモードを多くの企業が備えておく必要がある。

 ともかく、ロボットに対しては新しい需要が増えているわけだから、両方を合わせればプラスしかないはずだ。まるで時間を切り取ってしまったかのような急激な変化による加速で、多少のプレーヤーの入れ替わりはあるだろうが、自動化・ロボット化全体への影響はどうなのか、と問われたら、返事はそういうことになる。まだまだ状況が変化している最中でもあり、本当に雑な予想だが、ここのところ報じられる各種ニュースを見ていても、今のところは外れていないと感じている。



消毒ロボットは続々登場中

 いまロボット業界では消毒ロボットの開発が盛んに行われており、日々、ニュースリリースが流れている。基本的には台車型の移動ロボットにウイルス不活化効果があると考えられている噴霧器やUV-C(紫外線)を照射する機材を搭載して、不特定多数の人が手をひんぱんにふれる「ハイタッチサーフェース」の消毒を手助けするためのロボットだ。



 あくまで、完全な消毒ではなく「手助け」にすぎない点には留意する必要がある。UV-Cの効果は光源からの距離によるし、影になった部分には効果がない。またウイルスはとにかく小さい。噴霧したところで清拭(せいしき)しなければ不活化は不十分だ。しかしある程度のリスク低減ができれば、そのぶん、消毒作業を行っている人たちや、医療従事者の感染リスクを下げ、結果的に社会全体のリソースを守ることができる。使い方次第だ。


 WHOによれば、まだ新型コロナウイルスのパンデミックは拡大傾向にある。日本では「第2波」の到来や「再燃」が懸念されているが、決して「第一波」が収束したわけではないのだ。よって、こういうロボットは今後もどんどん出てくると予想される。

 たとえば、半導体製造メーカーのMicron Technologyは6月4日に、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けたロボットデザインコンテストを行い、「低コストで高効率な紫外線殺菌ソリューションの普及を加速」すると発表した。ほかにもこういう動きは続くかもしれない。何しろニーズは世界中にあるのだから、スタートアップだけでなく、大学研究室や、大手企業も乗り出してくることは容易に予想できる。

 消毒ロボット以外にも、タイのマヒドン大学からは、医療廃棄物の入ったゴミ箱を自動回収するモバイルアームロボットのプロトタイプなどがすでに発表されている。必要不可欠な仕事をこなす「エッセンシャルワーカー」の仕事を少しでも助けるロボットの登場は大いに期待したい。社会全体のレジリエンス、強靱化に直結するからだ。ちなみにマヒドン大学は日本の大学とも交流があり、通常の年は交換留学生も行われているとのことだ。

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医療廃棄物の入ったゴミ箱を自動回収するロボット「Wastie」
(出典:タイ・マヒドン大学 プレスリリース)

【次ページ】緊急対応から「継続活用」「社会の強靱化」へ
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