サイエンスライター 森山和道氏×アスラテック 羽田卓生氏×業界有識者
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現在は、第三次ロボットブームと呼ばれる。現実にコミュニケーションロボットや産業用ロボットなど、さまざまなロボットが登場してメディアをにぎわせ、企業への導入もすすんでいる。だが、分野によっては明暗も分かれつつある。果たして、現在のブームはこのまま続くのか。あるいは終焉を迎えるのか。ビジネス+ITで連載を持つサイエンスライター 森山 和道氏とアスラテック事業開発部部長・羽田 卓生氏が、参加者も巻き込みながらロボットの現在、そして未来を語り合った。
コミュニケーションロボットの小バブルははじけた
現在は第三次ロボットブームだと言われている。第一次は産業用ロボットが注目された1980年代前半、第二次がAIBOやASIMOが話題をさらった2000年前後とされるが、第一次/第二次と現在との違いは何か。
森山氏は「ネット環境の違い、世界的な潮流であること、投資マネーが流れ込んでいること」と説明し、このブームはしばらく続くだろうと予想した。
ただし、コミュニケーションロボットについては「本当に役に立つ産業用ロボットに関しては活発な投資が続いていますが、コミュニケーションロボットの小バブルははじけたと思います」と、否定的な意見を述べた。
その理由を問うた羽田氏に対し、森山氏の回答は次のとおりだ。
「何も変わっていないからです。第二次ブームのときからいろいろな知見が蓄積されているのに、それがまったく生かされず、同じことを繰り返している。第二次ロボットブームで痛い目を見た人達はそれがわかっていたから、最初から手を出さなかったのです。個人的には、はじけるべくしてはじけたと思っています」(森山氏)
一方の羽田氏も現在のコミュニケーションロボットの問題点として、その立ち位置の曖昧さを指摘した。
「コミュニケーションロボットに関しては、おもちゃ業界の研究が足りないと思います。おもちゃとロボットの中間的なモノがもっとあっていい。現在のコミュニケーションロボットは、おもちゃとしては高すぎ、道具としては不便で、中途半端なポジションになっていると感じます」(羽田氏)
物流業界は「ロボットで無人化」まっしぐら
では、産業用ロボットの分野では、具体的にどのようなロボットが注目されているのか。
「1つは物流でしょう。無人化まっしぐらで非常に手堅い分野だと思います。また、個人的に面白いと思っているのは農業、料理です」(森山氏)
ロボット産業の市場予想としては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と経済産業省が2010年に発表した資料がある。それによると、2020年は2.9兆円、2025年は5.3兆円、2035年は9.7兆円と予想されている。
ただ、この数値について、森山氏、羽田氏ともに「あまり当てにならない」とし、「数字は当てになりませんが、2015年あたりから人手不足が肌感覚で実感されるようになり、『省人化』と『安全』をニーズとしたロボットへの期待が高まっていると感じます」(森山氏)と述べた。
そして森山氏は、省人化・安全以外で、「タッチポイント(顧客接点)」としてのロボットの可能性について、次のように説明した。
「パナソニックさんは『これからのロボットは新しいタッチポイントになる』と言っている。ロボットはセンサーでありアクチュエータでもありますから、従来のタッチポイントにはない可能性があります。ただ、具体的に何が可能で、ビジネスをどう回していくかは、“これから”でしょう」(森山氏)
そこで話を振られたパナソニック ロボティクス推進室 課長の安藤 健氏は「ほかのIoT機器と比べ、動けるロボットにしか取れない情報がある。それがどんな価値につながるかは模索中」だと語った。
また、会場には知能ロボットコントローラで注目を集める「MUJIN」のHR・PR本部長、山内龍王氏も参加していた。山内氏は、現状について次のように説明した。
「我々は、ニッチなピッキングの世界でやっていますが、工場現場の人手不足は深刻で自動化が“待ったなし”になりつつあると感じます。その中で我々は、人々の問題解決のためのソリューションを提供し、ロボットが『役に立つ』ことを、しっかり証明していかなければならないと感じています。世の中のロボットの期待値は高いですが、ロボットは何でもできるわけではありません。このあいだ展示会で『養鶏場で働いているのだが、動いているニワトリをピッキングできないか』と聞かれ、驚きました。世の中の期待値とロボットが実際にできることに乖離がある点は、ロボット業界の難しいところだと感じています」(山内氏)
【次ページ】日本のロボット業界の課題とは?タイムリミットは大阪万博か
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