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世界中で開発が進むロボット。その中でも特に目覚ましい躍進を見せているのが中国だ。本連載では、4回にわたって中国のロボットを紹介するとともに、中国がロボット分野で伸びてきた背景について探っていく。第1回目は中国の政策と、実際に中国で活躍するロボットメーカー2社を解説する。
躍進する中国のロボット開発
いま世界中でロボット開発競争が起きている。その中でも存在感を増しているのが、中国だ。アスラテックでは、2014年以降に開発されたサービスロボットの動向を調査しているが、国別で見た開発数は、日本、中国、米国の3国が他を大きく引き離している状況になっている。
中国がロボット開発で躍進した背景の1つには、中国共産党が主導する政策がある。
国家規模で新たな産業革命を起こそうという取り組みは、2011年にドイツで発表された「Industry 4.0」を皮切りに世界中で行われており、日本でも「Society 5.0」が提唱され新しい時代を迎えようとしている。そして海を隔てたアジアの大国・中国では、2015年に「中国製造2025」が発表され、中国の製造業に大きな変革をもたらしているのだ。
世界の下請け工場「中国」の限界
Industry 4.0が発表された2011年ごろの中国の製造業は、安い賃金と豊富な労働力の下、「世界の工場」としての役割を見事に担ってきた。今も中国の製造業といえば「世界の工場」をイメージする人も多いだろう。「安かろう悪かろう」な品質や「模造品」問題など多くの問題も抱えながらも、世界中のメーカーが中国の労働力に頼ってきたのだ。しかしEMS(受託製造)ビジネスにおける利益率は2~3%程度のため、中国にとってビジネスモデルの転換は、長年にわたる大きな課題となっていた。
そうした中で産業を再構築すべく策定されたのが「中国製造2025」だ。中国製造2025ではドイツのIndustry 4.0と同じく、スマート製造を主軸に、製造大国から製造強国へ向かうためのロードマップが描かれている。9つの戦略目標が設定されており、その中で「10大重点産業分野の革新的発展」という目標が存在する。
10大重点産業分野には、HuaweiやZTEを中心とした「次世代情報技術」と並んで「ロボット」も入っている。2017年に北京で開催された「2017世界ロボット大会」では「ロボット産業イノベーション発展路線図」が発表され、2025年までに北京にグローバル新興ロボット産業イノベーションセンターの構築を目指す戦略が示されている。
政府の積極投資と準備されたロードマップ
「10大重点産業分野の革新的発展」に向けた国を挙げた研究開発支援も活発に行われている。
AI技術への先行投資の成果として、世界1位の特許数を誇るまでに成長を遂げた。同時にAI技術を支えるハードウェア関連にも研究開発支援が積極的に行われており、習近平国家主席も視察に訪れている研究開発機関「紫光集団」では中国発のDRAM/NAND開発が行われ、先日量産を開始する発表が行われた。
DRAM/NANDの量産化は2015年ごろからアナウンスされており、現在の米中摩擦による半導体の部材調達問題に時期を合わせたかのように内製化が完了しようとしているのだ。実際、米中摩擦で一部影響が出ているが、現時点でほとんどの半導体部材は中国国内で調達することが可能だ。
「ほとんどの半導体部材」と書いたのは、CPUに関してはもう少し時間を要しそうだからだ。しかし、中国版x86 CPUを上海兆芯集成電路が発表しており商用化が近づいている上、ARMの置き換えとしてRISC-Vプロセッサの開発が活発になっている。2025年には量産化されているだろう。
【次ページ】中国製造業を支えるロボット企業KUKA、FIIを解説
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