• 2024/09/20 掲載

BMW・メルセデス・テスラが工場に「人型ロボット」導入のワケ、「人はもう不要」に

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著しい進化を見せる大規模言語モデル(LLM)がロボットに応用され、これまでにない事例を生み出している。いま一番のテクノロジーのテストベッドとなっているのが自動車産業だ。BMWとメルセデス・ベンツは、米国のロボット企業「Figure」と提携し、人型ロボットを工場に導入、その可能性を模索している。テスラも2025年には、1000台以上の人型ロボットを工場に導入する計画という。自動車メーカーによる人型ロボット活用の最前線を探ってみたい。
執筆:細谷 元  構成:ビジネス+IT編集部
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テスラは1000台以上の人型ロボットを工場に導入する予定だ
(写真はイメージ、Photo/Shutterstock.com)

BMW、「Figure01」を南カロライナ州の工場に導入

 生成AI技術の発展に伴い、ロボット開発が加速、これまで難しいとされてきた領域での活用が大きく進展しつつある。この動きを牽引しているのが自動車業界だ。

 カリフォルニア拠点のロボティクス企業Figureは2024年1月、BMWとの契約を締結し、同社の人型ロボット「Figure01」をBMWの南カロライナ州スパータンバーグ工場に導入すると発表した。

 Figureは、OpenAI、NVIDIA、マイクロソフト、インテル、ベゾス・エクスペディション(ジェフ・ベゾス氏のプライベートファンド)などから出資を受ける、特に注目されるロボティクススタートアップだ。OpenAIとの提携により、ビジョンモデルであるGPT-4VをFigure01に統合、複雑なタスクにも対応できるシステムを開発している。

 BMWとの提携に関してFigureは2024年7月2日、Figure01がBMWのスパータンバーグ工場で自動車組み立て作業を行う様子を動画で公開した。この動画によると、Figure01は完全に自律的に動作しており、すべての操作はニューラルネットワークによってコントロールされているという。

BMWのスパータンバーグ工場で自動車組み立て作業を行うFigure01

 ニューラルネットワークは、カメラからの画像をピクセル単位で直接ロボットの動作にマッピングしている。従来のシステムでは、ロボットに搭載されたカメラが捉えた映像をもとに、画像認識、物体検出、動作計画など複数の段階を経る必要があり、実際の動作まで時間がかかっていた。

 Figure01は、大量の画像データとそれに対応する動作データで学習されていると見られ、リアルタイムでさまざまな環境に適応することが可能とされる。

 Figure01は、全長1.6メートル、重量60キログラム、最大積載量は20キログラム、完全電動式で、フル充電で5時間稼働することができる。工場内では、シートメタルの取り扱い、ボディショップでの作業、倉庫管理など、幅広い業務での活用が見込まれる。

画像
BMWが導入する人型ロボット「Figure01」
(出典:Figure

 Figureによると、AIシステムにより1センチメートル未満の誤差でシートメタルを正確に配置することができる。また、ナビゲーションはシミュレーションによるトレーニングのみで実現されているとのこと。

 Figure01の導入は段階的に進められる。まず、初期段階として12~24カ月の訓練期間が設けられる。この期間中、ロボットは、各タスクで必要となるスキルを習得する。訓練期間を経た後、実際の工場施設に統合される予定だ。

メルセデス・ベンツも人型ロボット活用へ

 メルセデス・ベンツもロボットの活用を模索する自動車メーカーの1つ。同社は2024年3月15日、米国のロボティクス企業Apptronikとの契約を締結、同社の人型ロボット「Apollo」を生産ラインに導入すると発表した。

 Apolloは身長約1.8メートル、重量約73キロ、約25キロの荷物を持ち上げることができる。1回の充電で約4時間稼働でき、バッテリーパックの交換により稼働時間の延長も可能だ。

メルセデス・ベンツの生産ラインに導入される人型ロボット「Apollo」

 メルセデス・ベンツは、低スキルで反復的、かつ肉体的に厳しいタスクでApolloを活用する計画。これにより、高度スキルを持つ従業員の時間を開放し、より重要な業務に集中できる環境を整えたい意向という。

 Apollo導入の背景にあるのは人材不足問題だ。欧州の自動車メーカーが多く製造拠点を構える東欧において、人材が西欧に流出するトレンドが長らく続いており、東欧拠点では人材不足が深刻化している。メルセデス・ベンツは、東欧拠点の1つハンガリーの工場で、Apolloの試験的導入を開始、その効果を検証中とのこと。

 Apolloには高度な安全機能が搭載されており、「衝突ゾーン」内で動く物体や人を検知すると停止する仕組みとなっている。また、リモートコントロールを可能にするソフトウェアも搭載されており、ゲームコントローラーのようなデバイスで操作することも可能だ。Apolloの具体的なユースケースとして、部品検査や生産ラインへの部品運搬、組み立て済み部品の配送などが想定されている。 【次ページ】テスラは、2025年に人型ロボット1000台以上導入へ

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