- 2024/09/20 掲載
BMW・メルセデス・テスラが工場に「人型ロボット」導入のワケ、「人はもう不要」に(2/2)
テスラは、2025年に人型ロボット1000台以上導入へ
テスラは2025年にも、自社開発の人型ロボット「オプティマス」を大量導入する計画だ。テスラのイーロン・マスクCEOは、2024年の年次株主総会で、2025年には1000台から数千台のオプティマスロボットが同社の工場で稼働する見込みだと発言した。現在、テスラの米国工場では、すでに2台のオプティマスが自律的に稼働しているという。マスク氏は、人型ロボット市場の規模が年間10億台に達し、テスラはその少なくとも10%のシェアを獲得できると予想。またオプティマスの製造コストは1台あたり約1万ドル、販売価格は2万ドルを想定しており、1兆ドルの利益を生み出す可能性があると豪語している。
マスク氏によるこの強気発言の背景には、AI開発における優位性がある。
Figure01を含む次世代人型ロボットの性能を左右するのが、ニューラルネットワークだ。高性能のニューラルネットワークの開発には、膨大な量の高品質データセットと、それによるトレーニングが必要となる。これにはハイエンドのGPUクラスターが必須だ。Figureは、このインフラを有するOpenAIと提携することで、ロボット性能を大きく改善しようとしている。
一方でマスク氏は2024年7月、米メンフィスで開設したAIトレーニング向けのスーパーコンピュータクラスターで、すでにAIのトレーニングを開始しており、今年末までに世界で最も強力なAIモデルを開発できるだろうとの見込みを示した。
このクラスターはNVIDIAのGPU「H100」10万台で構成され、このインフラを活用すれば、現存するAIを超えるモデルを開発することも不可能ではなく、オプティマスに搭載すれば、大きな優位性を得られることになる。
欧州の自動車メーカーが注目、カナダのロボティクス企業
米国のロボティクス企業の動きが活発化しているが、強力なAIコミュニティを有するカナダにも有力ロボティクス企業があり、欧州の自動車製造産業で注目を集める存在となっている。カナダのバンクーバーに拠点を置くSanctuary AIは2024年4月、欧州の大手自動車部品メーカーMagnaの製造施設に人型ロボットを導入すると発表したのだ。Magnaはオーストリアに自動車製造施設を持ち、メルセデス、ジャガー、BMWなど欧州の主要自動車メーカー向けに車両の製造と組み立てを行っている企業。
Sanctuary AIが開発した人型ロボット「Phoenix」は、全長約170センチ、重量約70キロ。同社は以前から人型ロボットの開発を行っており、カナダの小売業者向けに早期モデルを導入した実績がある。Phoenixは同社初の脚を持つモデルという。
やはりここでも重要視されているのが、AIモデルの出来だ。
AIモデルのさらなる改善を目指し、Sanctuary AIは2024年5月、マイクロソフトとの協業を発表。この提携により、Sanctuary AIは、マイクロソフトのAzureインフラストラクチャを活用し、トレーニング、推論、ネットワーキングなどを行い、大規模言語モデル(LLM)を基盤とする「大規模行動モデル(LBM)」の開発を加速する構えだ。
LBMは、AIを物理的な世界に結びつけ、実世界の経験から理解し学習できるようにするフレームワーク。現在、自動車、製造、物流を中心に15の産業にわたる400種類のタスクでテストされているという。
ChatGPTが登場して以来、大規模言語モデルは短期間で目を見張る進化を遂げている。ロボティクスへの応用で、ロボットの可能性はどこまで高まるのか、今後の動向から目が離せない。
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