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- 2018/08/01 掲載
安価な汎用ロボットが起こす破壊と可能性、量販店で売られる時代が来るのか?
森山和道の「ロボット」基礎講座
ロボットSIerとソフトウェア開発販売企業の出会い
代表取締役の原広仁氏は大手SIer出身で、前職でもサービスロボットのインテグレーションに携わっていた。ちなみに本連載では、2017年11月に掲載された「パルコも導入、ユニシスが自律移動ロボット「Siriusbot」を開発する理由」に登場してもらっている。
「カンブリアン・プロジェクト」という社名は、「目の誕生」によって進化爆発が起きた5億3千年前のカンブリア紀になぞらえている。原氏は、画像認識などのAI技術とロボットの組み合わせによって、カンブリア爆発のようなロボット進化が起こると考えている。
2018年5月からはロボットを使った社員研修サービスを提供している。生産システムの設計演習、アームとビジョンの連携、アームとAI連携、遠隔操作実験などを学べるという。
TechShareはシミュレーションソフトウェアとオープンソースハードウェア関連製品の開発・販売と受託開発・技術研修などの技術サービスを提供している企業だ。同社が展開している事業は3種類。1つ目は、物理シミュレーションや振動解析などのソフトウェア販売事業。2つ目はArduino、Raspberry Pi、BeagleBone、Tinker Board、LattePandaなどのシングルボードコンピュータおよび量産用カスタムボードなどの販売事業。そして3つ目が、ロボットアームや自律走行ロボットなどのロボット製品販売事業だ。同社のPhysical Computing事業関連サイトはこちらだ。
2018年5月に両者は提携を発表した。この提携は、企業向けロボット教育用のロボットを探していた原氏と、ロボット関連に知見があるパートナーを探していたTechShare 代表取締役の重光貴明氏らが、DOBOT Magicianというロボットアームを介して出会ったことから始まった。
教育から実務にまで使われはじめている安価アームDOBOT Magician
DOBOT Magician(ドボット・マジシャン)は、把持力500g、繰返精度0.2mmの汎用ロボットアームだ。もともとは2014年に5人の大学院生が立ち上げたチームに由来する、深センのDOBOT社の製品である。日本でも2017年に クラウドファンディング「MAKUAKE」を使って資金を集めたことで、一部makerたちのあいだでは話題になった。主にSTEM教育用として設計された安価なロボットアームだが、高精度ステッパーモーターと減速機を利用し、安定した繰り返し作業動作を実現している。またグリッパーや吸盤式ハンドだけでなく、3Dプリント、レーザー彫刻などさまざまなアタッチメントを標準で用意している。イベントで見せているデモも、普通のピックアンドプレースだけではなく、コンベアベルトを使って工場を模したマイクロ生産ライン、さらには3Dプリントやスライダーを併用した習字など多彩だ。エンドエフェクターを変えられるというのは、単純に面白い。
グーグルのオープンリソースプラットフォーム「Google Blockly」を元に開発した「Dobot Blockly」という専用のビジュアルプログラミングソフトウェアだけでなく、手でロボットを直接動かしてティーチングする、いわゆる直接教示にも対応している。13個の拡張ポートとプログラム可能なボタンもある。そして、100V電源を挿すだけで動かせる。
これらの特徴によって、子供向けだけではなく、大学や高専、企業の社内教育用、さらには工場の軽作業など、企業の実務にまで使われはじめている。
ソフトウェア屋がロボットに触れる機会を増やしたい
原氏は「SIerはオワコンではない」と語る。ソフトウェアのSIerは既存の顧客に対して要望を求められるコスト品質で実現するのが仕事だ。そのスキルは、今後ニーズがさらに広がると思われている「ロボットSIer」にも適用できるはずだというのが原氏の基本的な考え方だ。一方、ではソフトウェア技術者がロボットを触れるかというと、現状は必ずしもそうはなってない。そこでまずはソフトウェアのSIerにロボットに触れてもらえる機会を増やすことで、ロボットSIerを目指す人を増やせないかと考えたのだという。原氏の古巣である日本ユニシスの新入社員100名以上にロボットを触ってもらう機会を持ちかけたところ、教育プログラムとして採用され、実現に至った。4、5人でグループを組んでロボットのプログラミングを体験してもらい、大いに好評だったという。
そのロボットアームを調達する過程においてカンブリアン原氏とTechShare社との商談になり、TechShare社としても、単なる一過性の取引で終わるのではなく継続して協業できないか、何より「もっとソフトウェア屋さんにロボットを触れてもらう機会を増やしたい」と考えていたことから、業務提携に至ったのだという。前述のように、TechShare社はシングルボードコンピュータの代理店もしている。これももともとは教育分野で使おうと思っていたが、だんだん顧客側が実務に使えるのではないかと判断しはじめるに至っている。そこでこのロボットも、というわけだ。
余談だが、DOBOT社の社内の様子自体、というより、同社が拠点を置く街自体もどんどん変わっていっているという。DOBOT Magicianの出荷状況自体は、同社からは四半期でおよそ50台くらい、ワールドワイドだと年間数千ー1万台に移行しようとしている状況にあるそうだ。日本は普及が遅れ気味で、ドイツでは数百台が使われているとのことだった。
【次ページ】高耐久で安価なロボットを新たな「草の根」ツールに
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