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- 2021/09/30 掲載
オムロンや東芝が続々リリース、「群制御ソフトウェア」がなぜこれから重要になるのか
森山和道の「ロボット」基礎講座
異なる種類のロボットが動き回る時代が来る
さまざまな自律移動ロボットが1つの場所で動き回る状況が徐々に、だが確実にやってこようとしている。現状では工場や物流倉庫でも、実証実験の類を除けば、1つの場所では同じメーカーの同じロボットだけを動かしていることが多い。物流ロボットが最もわかりやすい例だ。1台1台がしている動きは単純でも、多数のロボットを組み合わせて活用することで、大きな効果をもたらすことができる。複数台のロボットの動きは上位システムで管理されている。上位システムはそれぞれのロボットの位置を地図上で把握し、経路を誘導し、最適制御する。ただ、複数のロボットを最適にバランスよく動かす、すなわち、限られた移動可能範囲のなかで移動経路の合計を最小(つまり最短距離・最速で動く)にしつつ、回避行動や急加速・急減速などが必要ない移動経路計画を実現し、担っている業務全体のスループットを最大限に上げて、かつ、ロボット自体の運用寿命も延ばせるような優れたアルゴリズムを組むためには、確かな技術と現場ノウハウが必要だ。しかも現実的にはロボットと人が共存するので、人の動き・流れを邪魔しないような動きを組む必要もある。
私はロボット技術の本質はリソース・アロケーション(資源配分の最適化)にあると思っている。複数ロボットの運用は、まさにこの問題そのものだ。難しいがゆえに、競争力の源泉ともなる。本誌でもこれまで触れてきた物流関連のスタートアップ各社は、ロボットを効率良く動かすためにそれぞれ独自の技術を開発し、競い合っている。先にも述べたように机上の計算だけでなく現場ノウハウもとても重要なので、現場に入れられたところとそうでないところとでは大きな差がついていく。
繰り返すが、現状では、1つのメーカーのロボットだけを使っていることが多い。だが、いつまでも同じメーカーのロボットだけ使っていればいいという状況は続かないだろう。今後、ロボット技術とその活用が進むのであれば、複数種類のロボットを適材適所で使い分け、連携させる、いわゆる「相互運用性」を上げていく必要がある。現在、ロボットを使っている業界は基本的に保守的なので、なかなか簡単には進んでいないが、やがてはロボットにおいても、相互連携を重視する方向性で発展していくに違いないと私は考えている。そうならないとロボット自体のマーケットも大きくならない。
オムロンが統合ソフトウェアを9月から提供開始と発表
まずは、せめて同じ会社のロボットくらい1つの共通管理ソフトウェアで動かしたいと現場は考えているだろう。2021年8月、オムロンは工場内での搬送用移動ロボットの導入効果を高めるフリート・マネジメント・ソフトウェア「Flow core 2.1」を9月1日から提供開始するとリリースを出した。「フリート」とは移動ロボットの群れのことだ。自動運転でも使われる言葉なので、聞いたことはある読者は多いと思う。このソフトウェアを使うことで、最大100台くらいの移動ロボットを動かす現場において、潜在的な渋滞箇所を事前に発見し、マップやルートの変更を事前に行って効率化させることができる。
オムロンは搬送重量が異なる3種類の搬送ロボットを展開している。オムロンでは移動ロボット(モバイルロボットとも言う)には20年以上取り組んでいる。現在、数千台以上が世界40カ国で稼働しており、総稼働台数では業界1位だという。同社のロボット最大の強みは、ロボット同士が柔軟にすれ違うことができ、人とも共存できること。たとえば、お互いに重なり合うようなルートを設定していても、あたかも人同士のように自由自在に動けるのがオムロンロボットの強みだという。
たとえば同社の草津工場では75%以上のワークをロボットが運んでいるそうだ。従来の現場では、人が台車に箱を乗せて次の工程に運んでいる。物を運ぶためにも人手が必要だ。よって、ある程度まとまった量になってから人が次の工程にまとめて運んでいた。それに対し、ロボット導入により、ワークをより小まめに運べるようになったという。
よく言われていることだが、いま生産現場は「超多品種少量生産」になっている。仮に1つの箱に商品が1個であっても、次の工程に運ばなければならない。この肉体的・精神的負担がバカにならないのだ。このような搬送ニーズに応えるためのロボットであり、そのための管理ソフトウェアだ。オムロン社内でも自社工場での運用台数を増やす方向だとのことだった。
【次ページ】シミュレーションにより従来の半分の期間での立ち上げも可能に
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