• 2023/10/23 掲載

「欧州バッテリー規則」とは何か? 電池事業者が負担することになる“ある費用”とは(2/2)

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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欧州バッテリー規則の発効でどんな影響が出る?

 蓄電池はリユースやリサイクルが可能なため、欧州バッテリー規則では生産者に相応の義務が課されています。

 政策的アプローチとしては、「拡大生産者責任」が適用され、蓄電池の生産者(製造事業者、輸入事業者、販売事業者など)が蓄電池の使用終了後の費用を負担する。日本で2005年に完全施行された自動車リサイクル法においても、自動車メーカーがシュレッダーダスト、エアバッグ、フロン類を引き取り、リサイクルすることが義務付けられているが、これと同じ政策的アプローチである。

 また、欧州バッテリー規則が施行されれば、バッテリーのサプライチェーンに関わるすべてのプレイヤーは、バッテリーパスポートを通じてその情報を知ることができるようになります。

 一方で、現時点では、バッテリーのカーボンフットプリントやリサイクル率などについて、要求される数値の計算方法や文書の形式などを定める委任法が制定されておらず、明確な要求事項が不明確な状況です。今後、バッテリーのカテゴリや要求事項ごとに適用スケジュールと更新内容をキャッチアップしていくことが必要になるでしょう。

日本企業はどんな対策をすれば良いのか?

 多くの日本企業にとって、欧州バッテリー規則はまだ基本的な内容を理解し、早くても準拠することを検討している段階でしょう。

 しかし、以前より、米国はデファクト・スタンダード(市場での使用実績による事実上の標準)、欧州はデジュール・スタンダード(公的な標準化組織が策定する標準)を主導してきた一方、日本は要素技術開発主導で産業・事業を考えると言われています。日本では標準化は利益にならないという意見も聞きますが、EUはルールメイクによって巧妙に仕掛け、利益がもたらされる構造にしようとしています。

 たとえば、サーキュラーエコノミーの実現においても、モノが不要になっても全部を廃棄せずに、次の人に引き継いでもらうために、ネットワークでつながっているほうが取り組みやすいはずです。エネルギーの循環にも、モノの循環にも、デジタルでつながる仕掛けが求められます。

 カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった地球規模の課題に対応するためには、データをデジタルでつなぎ合う仕組みが必須になっていきます。

 日本国内の市場が縮小する中、日本企業のサプライチェーンもグローバルに拡大していくことが求められます。こうした状況下においては、日本企業も欧州が発効するこれらの規則を自分ごととして捉え、対応について、経営層が自ら意思決定していくことが求められるのではないでしょうか。
■お詫びと訂正[2023/11/30 14:44修正]
本記事では、日経エネルギーNext『EUで「電池規則」が発効、蓄電池の国際覇権を狙う欧州の戦略とは』を参考文献としていましたが、その記載が行われておりませんでした。本文は修正済みです。ご迷惑をおかけした日経BP様、大串康彦様、読者、その他関係者にお詫び申し上げます。


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