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- 2018/03/16 掲載
IoT時代のアフターサービス論、どうすれば「魂を込める」ことができるか
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
IoTが実現するアフターサービスの高度化
従来、製造業のアフターサービスに求められていたことは、顧客で問題が発生したときに、間違いなく、できるだけ一度の対応で、短い期間で解決すること。そして、個々のサービス担当者の業務生産性を高めていくことでした。これらを同時に実現していくことが重要指標であったと考えられます。
たとえば、顧客に当該製品が壊れている期間をなるべく短くするために予防保守の点検を行ったり、壊れたときにすぐに原因がわかるようにするために製造業のサービス部門や製造工場が故障や不具合の履歴情報を共有したり、顧客にできるだけ早くサービスを届けるために人員やパーツの配置・手配を最適化したり、といった取り組みがそれにあたるでしょう。
しかし、顧客が個人の消費者であれ、企業の購買者であれ、一生に1度購入するかしないかという長寿命製品の場合、それだけの対応では必ずしも十分ではないでしょう。IoTにより顧客の製品の利用状況・使用状況をメーカーが捉えれられるようになると、継続的にサービスを提供する機会を創出できるようになってきます。
多様化する顧客接点をどうとらえるべきか
また、顧客との接点はますます多様化しています。営業チャネルやサービスチャネルだけではなく、コールセンターや顧客向けのポータルサイト、Web販売チャネルなど、対面・非対面をまたがることは当たり前になってきました。このようにオムニチャネル化した顧客接点の情報を組み合わせて個々の顧客を把握することはもとより、さらに顧客の行動情報や購入後に稼動している機器のIoT情報などを組み合わせることで、顧客をさまざまな局面でとらえることができるようになると考えられます。
これらのさまざまな顧客接点を適切に捉えることで、機会ロスを削減することが可能になっていきます。
システムキッチンなどを手がける住宅設備メーカーの例を見てみましょう。これらの製品の寿命はおよそ25年といわれていますが、実際には30年、40年と利用される顧客も多く存在します。
昨今の住宅設備はハイテク機器で、システムキッチンにもビルトイン食器洗い乾燥機、浄水機器などが組み込まれているケースも多くなっています。こういった機器には定期的なメンテナンスやフィルターなどの消耗品交換が必要となります。
メーカーから見ると、メンテナンスや消耗品販売などを第3者のサービス事業者に取られてしまえば、長期にわたる収益獲得タイミングを逸してしまうことにつながります。
たとえば、浄水交換フィルター3本セットの購買はがきを定期的に送付するといった対応方法もあるでしょうが、普通の家庭は3本セットの1本を利用後、次に使うときには残り2本は見つからないか、あったことを忘れてしまうケースが多いと思います。
そして1度それを経験した顧客はタイムリーに1本ずつ供給してくれるサービスを選択するようになるのです。
アフターサービスに「魂を込める」
それだけではありません。顧客と自社のサービス担当者が接触する機会が無くなることで、自社メーカーの技術力や顧客対応能力をアピールする場やそれに基づく顧客の口コミ効果など、さまざまな機会ロスにつながってしまいます。また、サービス担当者が顧客の住居などの利用環境に足を踏み入れる機会が無くなることで、顧客環境の変化、たとえば家族構成の変化やリフォーム状況、場合によっては自社製品の一部がリプレイスされている、といった事実を知る機会を逃すことにつながってしまっているかもしれません。
先ほど例に挙げた住宅設備メーカーでは、自社内外に存在する顧客の情報や顧客間の関係、顧客に導入されている機器のIoT情報などを統合活用することで顧客サービスの高度化を目指した取り組みを行っています。
顧客の会員組織の立ち上げなども実施していますが、そこに「魂を込める」ためには顧客に寄り添ったタイムリーで最適なサービスが必要なのです。
【次ページ】最適な顧客対応のシナリオとは
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