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  • 2020/03/11 掲載

「ムーンショット目標」とは? 内閣府が “AIロボットとの共存”を本気で議論するワケ

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超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に直面する日本。こうした課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定している。2050年まで人が「身体」「脳」「空間」「時間」の制約から解放された社会を実現を目指しているが、本稿ではその概要の一端を紹介しよう。
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課題先進国の日本では、野心的な目標でイノベーションを実現することが期待される
(Photo/Getty Images)

「ムーンショット目標」とは?

 内閣府は2020年1月、「48回 総合科学技術・イノベーション会議」を開催した。「総合科学技術・イノベーション会議」とは、総理大臣と科学技術政策担当大臣が、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策を企画立案し、総合調整することを目的とした「重要政策に関する会議」の1つである。

 今回(48回)は、超高齢化社会などの社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究を推進する研究開発制度の目標などを設定した。

 本会議では、「Human Well-being(人々の幸福)」を目指し、その基盤となる社会・環境・経済の諸課題を解決するための、以下の6つのムーンショット目標を掲げている。

目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標2:超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標3:AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
目標4:地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
目標5:未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

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2050年までに達成すべき6つの「ムーンショット目標」
(出典:内閣府「第48回総合科学技術・イノベーション会議(2020年1月23日開催)」)

 今回は、6つの目標設定から、以下の3つの目標を中心に紹介する。

目標1:人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標3:AI とロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
目標6:経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現


目標1:サイバネティック・アバターが“増殖”?

 人生100年時代において、さまざまな背景や価値観を持つ人々によるライフスタイルに応じた社会参画が必要となっている。人々のライフスタイルに応じた社会参画を実現するために、身体的能力、時間や距離といった制約に対し、技術を用いて解決することを目指している。

 具体的には、身体、認知、知覚といった能力を技術によって強化し、制約を克服する取り組みだ。その一例が、誰もが多様な社会活動に参画できる「サイバネティック・アバター基盤」の環境整備である。

 サイバネティック・アバターとは、生身の人間の身代わりとしてのロボットや3D映像などを示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力、および知覚能力を拡張するICT技術やロボット技術を含む概念である。

 政府の目標は、2030年までに、1つのタスクに対して、1人で10体以上のアバターを作ること。そして、複数のアバターが同じ速度や精度で操作できる技術を開発し、その運用などに必要な基盤を構築することだ。

 さらに、2050年までに、複数の人が遠隔操作する多数のアバターとロボットを組み合わせることで、大規模で複雑なタスクを実行するための技術を開発し、その運用に必要な基盤を構築することを目指している。

 目標1が目指す社会は、制約からの開放による人の能力拡張だ。これにより、Society 5.0 時代のサイバー・フィジカル空間で自由自在に活躍でき、さまざまな年齢や背景、価値観を持つ人々が多様なライフスタイルを追求できる社会を実現する。

 ビジネス面では、サイバネティック・アバターの活用によるネットワークを介したコラボレーションを可能とするためのプラットフォームを開発する。これにより、空間と時間の制約を超え、さまざまなデータが収集・活用による新しい知識集約型産業の創出が期待されている。

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サイバネティック・アバターが「空間・時間」「身体」「脳」の制約を解消する
(出典:内閣府「第48回総合科学技術・イノベーション会議(2020年1月23日開催)」)

目標3:AIロボットが町中を闊歩?

 生産年齢人口が減少する課題先進国の日本では、人類の活動領域を、現在よりも飛躍的に拡大させる必要がある。つまり、人に代わって自律的に学習し、かつ学習を自ら発展させ、自律的に活動できるロボットの開発が必要となっている。

 ただし、これらの実現には課題も多い。たとえば、未知の事象への対応は困難であるし、機械学習に要する膨大なコスト・労力がかかる。また、ディープラーニングが持つ限界を超える目処は立っていない。さらに、ロボットの消費電力の飛躍的な低減化、AIロボット向けの最適なアーキテクチャの検討も急務である。

 本会議では、2030年までに、特定の状況において、人の監督の下、一定のルールを設けて一緒に行動しても90%以上の人が違和感を持たないAIロボットを開発目指している。また、2050年までに、自然科学の領域において、自ら思考・行動し、自動的に科学的原理・解法の発見を目指す AI ロボットシステムの開発を目標としている。

 これにより、人が活動することが難しい環境で、自律的に判断し、自ら活動し人と同等以上の身体能力をもち、人生に寄り添って一緒に成長するAIロボットの実現が期待されている。

 目標3が目指す社会は、ゆりかごから墓場まで、人の感性、倫理観を共有し、人と一緒に成長するパートナーAIロボットを開発し、豊かな暮らしを実現することだ。実現例では、以下の4項目などが挙げられている。

  1. データによる仮説検証や実験を自動的に行う医薬品開発
  2. 月面や小惑星などに存在する地球外資源の自律的な探索・採掘
  3. 農林水産業、土木工事などにおける効率化や、労働力の確保、労働災害ゼロの実現
  4. 災害時の人命救助から復旧までを自律的に行う AI ロボットシステムの構築

 AIロボット技術と、目標1で取り上げた人の能力拡張技術り活用により、AIロボットが得た情報などを人にフィードバックし、新しい知識の獲得や追体験などを通じたさまざまなサービス創出が期待されている。

【次ページ】目標6:量子コンピュータで社会システムを変革
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