• 会員限定
  • 2020/10/20 掲載

IT人材白書2020で判明、DXで成果を出した企業の特徴

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
IPA(情報処理推進機構)が毎年公開している『IT人材白書』。2020年8月に発行された『IT人材白書2020』では、IT企業およびユーザー企業におけるIT人材の「量」や「質」に対する過不足感や、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業におけるIT業務のトレンドについて注目すべき変化が見られました。今回はこの『IT人材白書2020』の注目ポイントを紹介するとともに日本におけるIT人材の課題を取り上げます。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

photo
IT業界の人材動向を、IT人材白書から探る
(Photo/Getty Images)


日本企業が抱く、IT人材の「量」・「質」に関する不足感

photo
『今こそDXを加速せよ ~選ばれる“企業”、選べる“人”になる~ (IT人材白書2020) 』
画像をクリックするとアマゾンに移動します
 『IT人材白書2020』では、重要性の高い領域である「DX取り組み企業やDXに対応する人材」「IT企業やユーザー企業におけるIT人材の場の拡がり」という観点から、企業やIT人材の現状を把握するための調査結果や分析などを公表しています。まず、IT人材の「量」に関する不足感について見てみたいと思います。

 ユーザー企業におけるIT人材の量に対する不足感に関する調査結果を見ると、ユーザー企業では不足感が年々増加しています。また、IT企業においては、2016年度から2018年度まで「大幅に不足している」割合が年々増加してきました。2019年度には若干減少していますが、「大幅に不足している」に「やや不足している」を加えると、全体的な不足感は増加しています。

画像
ユーザー企業のIT人材の“量”に対する過不足感【過去5年間の変化】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

画像
IT企業のIT人材の“量”に対する過不足感【過去5年間の変化】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

 続いて、IT人材の「質」に関する不足感について見てみたいと思います。ユーザー企業ではIT人材の質に対する不足感も2017年度以降、年々高まりを見せています。IT企業についても高止まり傾向が見られます。

画像
ユーザー企業のIT人材の“質”に対する不足感【過去5年間の変化】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

画像
IT企業のIT人材の“質”に対する不足感【過去5年間の変化】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

 このように、ユーザー企業、IT企業ともIT人材の量、質両方の不足感が高いことがうかがえます。また、不足感を大企業と中小企業で比較してみると、ユーザー企業、IT企業とも大企業において、特に不足感が高いことが分かりました。その背景には、大企業ではDXへの取り組みなどのビジネスエリアの拡大により、IT人材のスキルに対するニーズの幅が広がっていることがあると思われます。

 さらに「ITやデジタル関連のスキルアップに向けた勉強に関する課題」について尋ねています。その結果を「先端IT従事者」と「先端IT非従事者」で比較してみると、先端IT非従事者で最も多かった回答は「勉強の必要性を感じない(現在のスキルで十分だと思うから)」でした。それに対して、先端IT従事者で最も多かった回答は「業務が忙しく、勉強時間が確保できない」となり、両者で違いが見られました。この背景には企業のビジネスモデル変革が遅く、変革してもなかなか軌道に乗れず、スキル活用の幅が広がらないことがあるのではないでしょうか。

画像
先端IT従事者と先端IT非従事者のITやデジタル関連のスキルアップに向けた勉強に関する課題
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

 DXを含む、デジタル化への取り込みが加速する中でも、これまでの技術やスキルを生かすことができる従来型の事業・業務もまだ存在します。一方、従来型の技術やスキルがいつまで通用するかについては技術者に不安もあるでしょう。

 先端IT非従事者には「今後も現在と同じスキルがまだ通用するという認識がある」と考えられます。一方、先端IT従事者には「自分自身の価値を向上し続ける機会を求め、自ら動いて変化することが求められる」と考えられます。



ユーザー企業におけるIT業務の内製化とDXの取り組みの現状

 ユーザー企業にIT業務の内製化状況を尋ねた結果を見ると、DXに取り組んでいる企業には共通点も見られています。それは「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が高いことです。

画像
ユーザー企業の社内にITのスキルを蓄積・強化するための内製化状況【DX取り組み別】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

 IT人材の獲得・確保を尋ねた結果をDX取り組み別に比較すると、ユーザー企業でDXに取り組んでいる企業では、「中途採用」や「新卒採用」、「他部門からの異動」を行っている割合が高いことが分かります。

画像
ユーザー企業のIT人材の獲得・確保状況【DX取り組み別】
(出典:IPA社会基盤センター『IT人材白書2020』)

 このことは、DXへの取り組みを目指すユーザー企業を中心に、IT人材の量や質の課題への対応を積極的に進めていることを示していると思われます。

 DX推進は、ビジネスとIT・デジタル技術の連携が不可欠であり、これらをつなぐ人材の獲得・確保を求め、IT企業や異業種からユーザー企業の流入が活発になっています。このようにさまざまな人材が集まる組織へ変革していく中で、人材の評価制度、育成制度の見直しも求められると考えられます。

【次ページ】白書からわかる、DX推進企業の共通点

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

~人的資本の最適配置をどう実現するのか?~ サイバーエージェントの人員計画を大解剖

サイバーエージェントの人員計画の作り方を徹底解剖 ・このような方におすすめ ・サイバーエージェントの人員計画に興味のある方 ・人員計画の作り方について、他社事例を学びたい方 ・サイバーエージェントの抜擢人事の極意を知りたい方 ABEMAをはじめとするB to C領域での存在感も高め、破竹の勢いで成長するサイバーエージェント社。 同社が次の時代を捉えた戦略的な積極投資で事業領域を広げていることは周知の事実です。 ?しかし、同社の躍進はカルチャーの浸透を軸に、事業計画に連動する適材適所の人員計画と人事制度なしには語れません。 人的資本開示が義務化されて初の決算を終えた今、改めて最先端をいく同社の人員計画の作り方や人的資本に関する取り組みを解剖するセミナーを開催いたします。 ?今回はサイバーエージェント社を初期から支え、CHOとして同社の人事領域を形作られてきた曽山氏をお招きし、同社の人員計画の極意に迫ります。 ?当日のテーマは以下です。 ・良い人員計画と悪い人員計画 ・サイバーエージェント社の人員計画の作り方のポイント ・抜擢人事の極意 ?人員計画に関わる全ての人事の皆さま、そして事業計画との最適化を経営目線で見る経営企画の皆さまにとって学びのある60分を提供いたします。 ぜひご参加ください。

オンライン

~P&G・マクドナルド・レノボ出身のFP&Aアドバイザーが語る~ 自社に合ったFP&Aの始め方

明日から取り掛かる、FP&Aの始め方 このような方におすすめ ・P&G/マクドナルド/レノボ出身のFP&Aプロフェッショナルによる事例解説に興味のある方 ・明日から取りかかれるFP&Aの始め方を知りたい方 ・グローバル基準のFP&Aを自社に合った方法で取り入れたい方 ・直近5年間で、日本企業においてもFP&Aや経営管理体制の構築の重要性についての理解が深まっています。 一方でその実行となると、「全社を巻き込むのが難しい」「どこから取り組めばよいか分からない」「取り組み事例を知りたい」といったお声を多く頂戴しており、ロールモデルに対するニーズが高まってるのが現状です。 そこで、今回はP&G・マクドナルド・レノボといったFP&A先進企業で日本子会社のCFO・FP&Aをつとめ、現在はFP&Aアドバイザーとして数多くの日本企業のFP&A実装に尽力されている池側氏をお招きし、事例をベースに「明日から何に取り組めばよいか」をご理解いただけるセミナーを開催いたします。 当日のテーマは以下です。 ・P&Gなど先進欧米グローバル企業のFP&Aとは ・FP&Aを実装している日本企業の事例 ・自社に合った形でFP&Aを始めるには 他社のFP&Aのお取り組みを知りたい方、FP&Aの高度化を推進したいマネージャー・経営層の方にぜひご参加いただけますと幸いです。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます