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IPA(情報処理推進機構)が毎年公開している『IT人材白書』。2020年8月に発行された『IT人材白書2020』では、IT企業およびユーザー企業におけるIT人材の「量」や「質」に対する過不足感や、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業におけるIT業務のトレンドについて注目すべき変化が見られました。今回はこの『IT人材白書2020』の注目ポイントを紹介するとともに日本におけるIT人材の課題を取り上げます。
日本企業が抱く、IT人材の「量」・「質」に関する不足感
『IT人材白書2020』では、重要性の高い領域である「DX取り組み企業やDXに対応する人材」「IT企業やユーザー企業におけるIT人材の場の拡がり」という観点から、企業やIT人材の現状を把握するための調査結果や分析などを公表しています。まず、IT人材の「量」に関する不足感について見てみたいと思います。
ユーザー企業におけるIT人材の量に対する不足感に関する調査結果を見ると、ユーザー企業では不足感が年々増加しています。また、IT企業においては、2016年度から2018年度まで「大幅に不足している」割合が年々増加してきました。2019年度には若干減少していますが、「大幅に不足している」に「やや不足している」を加えると、全体的な不足感は増加しています。
続いて、IT人材の「質」に関する不足感について見てみたいと思います。ユーザー企業ではIT人材の質に対する不足感も2017年度以降、年々高まりを見せています。IT企業についても高止まり傾向が見られます。
このように、ユーザー企業、IT企業ともIT人材の量、質両方の不足感が高いことがうかがえます。また、不足感を大企業と中小企業で比較してみると、ユーザー企業、IT企業とも大企業において、特に不足感が高いことが分かりました。その背景には、大企業ではDXへの取り組みなどのビジネスエリアの拡大により、IT人材のスキルに対するニーズの幅が広がっていることがあると思われます。
さらに「ITやデジタル関連のスキルアップに向けた勉強に関する課題」について尋ねています。その結果を「先端IT従事者」と「先端IT非従事者」で比較してみると、先端IT非従事者で最も多かった回答は「勉強の必要性を感じない(現在のスキルで十分だと思うから)」でした。それに対して、先端IT従事者で最も多かった回答は「業務が忙しく、勉強時間が確保できない」となり、両者で違いが見られました。この背景には企業のビジネスモデル変革が遅く、変革してもなかなか軌道に乗れず、スキル活用の幅が広がらないことがあるのではないでしょうか。
DXを含む、デジタル化への取り込みが加速する中でも、これまでの技術やスキルを生かすことができる従来型の事業・業務もまだ存在します。一方、従来型の技術やスキルがいつまで通用するかについては技術者に不安もあるでしょう。
先端IT非従事者には「今後も現在と同じスキルがまだ通用するという認識がある」と考えられます。一方、先端IT従事者には「自分自身の価値を向上し続ける機会を求め、自ら動いて変化することが求められる」と考えられます。
ユーザー企業におけるIT業務の内製化とDXの取り組みの現状
ユーザー企業にIT業務の内製化状況を尋ねた結果を見ると、DXに取り組んでいる企業には共通点も見られています。それは「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が高いことです。
IT人材の獲得・確保を尋ねた結果をDX取り組み別に比較すると、ユーザー企業でDXに取り組んでいる企業では、「中途採用」や「新卒採用」、「他部門からの異動」を行っている割合が高いことが分かります。
このことは、DXへの取り組みを目指すユーザー企業を中心に、IT人材の量や質の課題への対応を積極的に進めていることを示していると思われます。
DX推進は、ビジネスとIT・デジタル技術の連携が不可欠であり、これらをつなぐ人材の獲得・確保を求め、IT企業や異業種からユーザー企業の流入が活発になっています。このようにさまざまな人材が集まる組織へ変革していく中で、人材の評価制度、育成制度の見直しも求められると考えられます。
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