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- 2021/06/08 掲載
白書に見るオープンイノベーション、「得られた効果」「実施しない理由」トップ3は?
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
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白書に見る、イノベーション創出に必要な視点
オープンイノベーション白書では、まずイノベーションそのものについての正しい理解を促すため、イノベーションの重要性と変遷について記述がなされています。イノベーション論は、20世紀に基本的な概念や普及方法などに関する議論が行われ、21世紀に新興国やスタートアップなどの新たなプレイヤーの登場による市場・社会環境の変化を受け、発展してきたとされます。イノベーションには多種多様な定義がありますが、イノベーションを最初に定義したシュンペーターの定義では「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」とされます。
このイノベーションを創出する枠組みとしては、イノベーション創出のためのInput、その結果となる製品やサービスなどのOutputだけでなく、市場に変化をもたらすOutcomeの視点が必要であり、イノベーションの実現のためには、市場・社会への影響を考慮することが肝要とされています。
製品やサービスのイノベーションの創出パターンは、発明けん引型、普及・展開型、21世紀型の3つのパターンに分類できます。この創出パターンは、市場や業界動向、社会環境の変化などの影響により質的変化を遂げてきました。
そして、イノベーションを社会に認識させるためには、以下の5つの視点をイノベーション創出において有しているかが重要となります。
- 新たな価値・アイデアの創出
- 価値をマネタイズさせビジネス化
- 人々の生活様式・産業構造の変革
- グローバルを対象とした変革
- イノベーションのスパイラルアップ
イノベーション創出に影響を与えてきた社会環境変化としては、先進国・新興国における市場拡大、新たな技術を用いた製品・サービスの開発、新たな需要・市場の創造などがあり、イノベーションが実現される前から実現後の世界への普及に至るまでさまざまな局面で影響を及ぼしてきました。
日本の現状…研究開発費はトップクラス、イノベーションランキングは低迷
イノベーションの創出状況に関する世界の評価や時価総額などを見ると、日本のプレゼンスは低下傾向にあります。WIPO(世界知的所有権機関)が発行している「The Global Innovation Index」に基づいた国別イノベーションランキングにおいても、日本はトップ10外が続いています。日本はかつてJapan as No.1と言われ、世界の経済をけん引していましたが、現在、世界のイノベーション創出の主体は巨大IT企業に移行しており、日本はかつての競争力を失った状況にあると言えます。
研究開発・知財の領域では、日本企業の研究開発費の総額、研究開発の人員数は主要国の中でもトップクラスの規模になっています。また、論文数、特許出願数も世界でトップクラスです。
一方、博士号取得者の減少や研究開発の従事時間の減少、研究開発の国際化の遅れなどの問題が指摘されています。また、人材の流動性やダイバーシティの浸透度が低く、突出した人材に対する評価・報酬制度が整っていないなどの問題もあります。リスクを伴う投資や研究開発、新製品・サービスの開発などの取り組みにも消極的な傾向があります。
【次ページ】オープンイノベーションの「実際の効果」「取り組まない理由」
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