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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2022年8月に「
DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」を公表しました。「
DX推進指標」の成熟度レベルの自己診断結果を取りまとめた本レポートの発行は2019年版、2020年版に続き3回目となります。今回は本レポートに基づき、この3年間を比較し、日本企業のDXの取り組みの変化を概観します。
DX成熟度を自己診断できる「DX推進指標」
経済産業省は2018年9月に「DXレポート」を発行した後、DX推進を後押しすべく、企業への働きかけ、市場環境整備の両面から策を展開してきました。
企業への働きかけとしては、「
DX推進指標」による自己診断の促進やベンチマークの提示、市場環境整備としてはデジタルガバナンス・コードや「DX認定制度」、「DX銘柄」によるステークホルダーとの対話の促進、市場からの評価などが実施されています。
このうち、「DX推進指標」を活用すれば、各企業は自社のDXの進捗状況について簡易な自己診断を行うことができます。
このDX推進指標は、設けられている各項目について経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などが議論をしながら回答することを想定されています。また、DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する定性・定量指標と、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する定性・定量指標から成り立っています。さらに、DX推進指標ではDXの成熟度レベルを0~5の6段階で定義をしています。
ここからは、各企業の自己診断結果をまとめた「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」を基に、日本企業のDXの成熟度や課題を見ていきます。
5段階評価、日本企業のDX成熟度は?
自己診断結果の提出全企業における成熟度を見ると、現在値(自社がどの程度の状況にあるのか)の平均は1.95、目標値(自社がどの程度の成熟度を目指すのか)の平均は3.62で、2019年以降継続して向上しています。
また、成熟度の平均が3以上の「先行企業」は調査対象となる486社中86社で、全体の17.7%となっています。この割合は、2020年の8.5%の約2倍、2019年の4.4%の約4倍となっています。
一方で、レベル3未満の「非先行企業」は400社あり、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が全体の8割以上存在していることも分かります。
先行企業と非先行企業、格差が広がるDXの取り組み
先行企業と非先行企業を比較してみると、現在値の平均については、先行企業が3.49であり、非先行企業が1.62となっています。先行企業においてはレベル3の「全社戦略に基づく部門横断的推進」の取り組みが定着されてきていると推察されます。
また、目標値の平均は、先行企業が4.53であり、非先行企業が3.42となっています。先行企業には全社戦略に基づき持続的にDXに取り組み、グローバル市場でも存在感を発揮し、競争優位を確立できるレベル4以上を目標としている企業が多く含まれることが分かります。DXへの取り組みが進んでいる企業とそうでない企業の間には大きな差が生じていると言えます。
経済産業省は2020年から、DX推進の準備が整った事業者を国が認定するDX認定制度を開始しており、DX銘柄に選定されるためにはこの認定が必須になっています。
2022年2月1日時点のDX認定企業は277社あり、そのうち141社が2021年にDX推進指標の自己診断結果を提出しています。現在値の平均は、DX認定企業が2.64であり、DX認定未取得企業が1.66となっています。目標値の平均は、DX認定企業が4.09であり、DX認定未取得企業が3.42となっています。
DX認定企業を目指し、DX認定を取得した企業の成熟度レベルはDX認定未取得企業に比べ高いことが分かります。
2021年に自己診断結果を提出した486社のうち、2019年もしくは2020年に提出があった企業(以下、過去に提出がある企業)は110社となっています。
過去に提出がある企業と過去に提出がない企業を比較すると、現在値の平均については、過去に提出がある企業が2.26であり、過去に提出がない企業が1.86となっています。
目標値の平均は、過去に提出がある企業が3.77であり、過去に提出がない企業が3.57となっています。
複数年にわたって自己診断を行っている企業は相対的に成熟度が高く、目標値の達成に向けて毎年自己診断を行い進捗管理しつつ成熟度を向上させているものと思われます。
【次ページ】日本企業のDX進捗まとめ、成熟度の高い領域と低い領域
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