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  • 2022/06/30 掲載

ハノーバーメッセ2022まとめ、大注目の脱炭素の鍵「アセット管理シェル(AAS)」とは

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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2022年5月30日~6月2日にドイツのハノーバー国際見本市会場にて行われた「Hannover Messe 2022(ハノーバーメッセ2022)」を現地取材した筆者が展示会のポイントを解説する本記事。後編では、ハノーバーメッセ2022の主要テーマのうち、「インダストリー4.0」、「サイバーセキュリティ」、「AI・機械学習」、「ロジスティクス4.0」に関する重要論点と、展示会で紹介されていた製品について解説します。
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ハノーバーメッセ2022の様子。シーメンスは「アベイラビリティとスケーラビリティの両立のためにはサイバーセキュリティ対策が必須である」ことを訴求していた(後ほど詳しく解説します)
(出典:筆者撮影)


主要テーマ(3):インダストリー4.0

 ハノーバーメッセ2022では、出展企業の多くが「企業間ネットワークの活用によるサプライチェーンの運用プロセス全体の最適化実現に向けた方策」、さらには「競争力維持のためにはものづくりだけでなくロジスティクスにおけるレジリエンスも重要であること」などについて訴求していました。

 そして、それら取り組みの中心となる考え方が、インダストリー4.0で提唱されている「アセット管理シェル(AAS : Asset Administration Shell)」です。AASとは、フィジカル(実世界)に存在する設備や機器、人、システムなどのアセットを相互につなぎ稼働状況全体を見える化させるためのオープンスタンダードです。

 このAASの考え方や規格を取り入れることで、特性が異なるさまざまなメーカーの設備や機器などを「単一の方式」でつなげられるようになるわけです。たとえば、AASを用いて、製品カーボンフットプリント(PCF:Product Carbon Footprint)の追跡を可能にしようとしていくような取り組みなども見られるようになりました。

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ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)のAASを用いたデモ。キャビネット全体のPCFの値をトレース、各パーツで収集したPCFのデータをAASでつないで見える化している。バーコードを読むとアプリがPCFの値を表示する
(出典:筆者撮影)
 インダストリー4.0の推進団体である「Plattform Industrie 4.0」は、AASの進化によってインダストリー4.0が新たなレベルに到達したとしています。

 具体的には、実装可能な仕様やフォーマット、インターフェース、ツール、デモンストレータ、アプリケーションなどが公開されたことにより、デジタル化された産業プロセスにおけるコンポーネントのインターオペラビリティ(相互運用性)が実現されたとしています。

 他方、デジタルツイン協会(Industrial Digital Twin Association:IDTA)は、AASがデジタルツインを実現するためのグローバルスタンダードになるとしています。

 また、カーボンニュートラルの領域では、AASとデジタルアプリケーションの組み合わせがその道を開くとしています。本記事の前編では、シーメンスが、信頼できる製品カーボンフットプリント(PCF)データをメーカーやサプライヤー、顧客、パートナー同士で交換できるようにするため、業界横断型のオープンなEstainiumネットワークを立ち上げたことを解説しましたが、この仕組みにはAASが用いられています。

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デモンストレータ(AAS とSM Profile (CESMII)を接続)
カーボンレポーティングのための自動化されたソリューションを提供し、最終的にはバリューチェーン全体をカバーするために、プラットフォーム、企業サイト、国を超えてデータをネットワーク化するための基盤を構築。オープンスタンダードであるOPC UA over MQTTとクラウドへの接続のためのUAクラウドライブラリを使用。
※SMPはGitHubにフリーソフトで出しており、SMEにも使いやすいのではとのこと
(出典:筆者撮影)
 今後、AASは国際標準である国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission :IEC)への統合、Catena-XGAIA-X、Estainiumなどのさまざまなエコシステムとの相互運用性実現を目指すとしており、AASを使うことはすでに当たり前になりつつあります。

 OPC協議会(OPC Foundation)では、米研究機関であるCESMII(Clean Energy Smart Manufacturing Innovation Institute)によるカーボンレポーティングのためのAASを用いた相互運用性の実証実験を行っています。

 この実証実験の趣旨は、サプライチェーン上の点在する企業の間で、AASとCESMIIによる「SM Profile(Smart Manufacturing Profiles)」というOPC UAに準拠するアプリ・データ相互運用のプロトコルを用いて、レポーティングをリアルタイムで行うことにあります。

 GHGプロトコルのスコープ1と2のレポーティングに必要なデータの収集と、スコープ3のデータ収集に必要な仕組みを取り上げたものであり、現在進行している日・米・EU間のデータ相互運用、製造業におけるカーボンニュートラル生産の議論には不可欠な要素であるとしています。

 レポーティングのためのデータはクラウドで一元的に収集され、現場で収集された後、すぐにCO2排出量が計算され、そのデータに基づいてデジタルツインが生成されます。そして、機械を利用するエンドユーザーがレポートを作成するなど、データのさらなる活用が可能となります。

 最後に、AASまたはスマートマニュファクチャリングプロファイルがサーバ上に作成され、さまざまなアプリケーションに情報を提供できるようになると言います。

主要テーマ(4):サイバーセキュリティ

 社会インフラなどに対しても、サイバーセキュリティの脅威・リスクが高まる中、レジリエンス確保のためのサイバーセキュリティ対策の必要性と、その方法を多くの企業が訴求しています。

 特に、セキュリティシステムの最大の弱点はデータに依存をする人間であり、サイバー攻撃の80%は人間の脆弱性を狙ったものであるため、人間の弱点をカバーする仕組みが必要であることを訴求していました。

主要テーマ(5):AI・機械学習

 AI・機械学習が将来に向けて産業用途で何を可能にするかについての全体像を、実装側の観点から多くの企業が提示していました。

 インダストリー4.0におけるAI・機械学習の技術は産業プロセスにおいて重要な役割を担っているとし、知能化と自律化がそのポイントであるとしています。

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ベッコフオートメーションのTwinCAT Machine Learningを用いたデモ
(出典:筆者撮影)
 たとえば、シーメンスはエッジコンピューティングとクラウドコンピューティング、製品のライフサイクル全体をカバーするAIなどを用いることで、企業はサイバーとフィジカルをシームレスに融合でき、真のデジタルエンタープライズ企業になることができるとしています。

 また、ベッコフオートメーションでは、機械学習エンジンである「TwinCAT Machine Learning」を用いて、2種類のコンベアラインを用いたデモを実施。一方は従来型の制御、もう一方は機械学習によるコントロールをし、従来型の動きにシンクロする動きをさせた場合、機械学習側の動きがスムースになり、これによりエネルギー効率も高まりカーボンニュートラルに貢献できることを訴求しています。

【次ページ】主要テーマ(6):ロジスティクス4.0
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