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- 2019/06/21 掲載
伊福精密 社長を直撃、3D金属プリンタで「金型レス」にいち早く取り組んだ理由
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
「金型レス」にいち早く取り組んだ、神戸市の製造会社
伊福精密は、試作品・量産品の製作、冶工具・金型の設計製作、難加工材の工法開発、新素材の加工方法の研究、製品測定事業などを手掛ける、社員数45名の神戸市の製造業者です。
伊福元彦 社長
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同社の製造拠点は、日本の神戸と、中国の上海と蘇州の間にある江蘇省昆山市にある昆山伊福谷精密机械(2010年設立)からなります。
同社の強みは多品種・少量生産や試作に対応していることで、試作で加工設備(9種49台)、検査設備(6種9台)などを用いて、月産40万個の自動車部品や、各種産業向け精密機械部品の単品試作から量産製造まで行っています。注文の中には、3年置きに1個といった極小ロットのものまであるそうです。
このような強みを生かし、顧客の「困った」を技術と工夫でクリアしています。たとえば、同社では1カ月に23製品と多品種にわたるゴルフクラブ(アイアン)のヘッドを製造していますが、生産量は600本しかなく、金型を製造しているとコスト高になってしまうそうです。そこで、ゴルフクラブメーカーと協力して、MC(マシニングセンタ)加工設備にて同一鍛造素材から多品種・少量の製品を作る取り組みを行っています。
また、3D金属プリンタを用いた「金型レス」の製造にも早くから取り組んでいます。写真のように、切削加工では製造できない形状の製品については3D金属プリンタを積極的に利用しています(実際の納入品は掲載できないためサンプル製品を掲載)。
また、特に中国現地法人では精密工具研削機などの工具はできる限り、内製品を利用しています(中国現地法人では約6割が内製)。消耗品である工具の納期、コストなどの変動要素の削減が目的だと言います。
組織の壁を取り払い、3D金属プリンタを用いたものづくりを実現
従来のものづくり企業では、設計・製造・検査などが別組織の場合が多く、組織間の役割分担によりものづくりが行われていましたが、3D金属プリンタを用いたものづくりでは、これらの組織の壁を取り払うことが必要です。マスカタマイゼーションを容易に行えるという特徴がある3D金属プリンタでは、設計時点で強度などもわかるようにすることが望ましく、特に設計と製造の組織間の壁は致命的になります。また、検査の知見がないと、強度などの情報がフィードバックできません。伊福精密では、3D金属プリンタや3D-CADはネットワーク(伊福精密ではデジタル製造ネットワークと呼ぶ)で接続され、設計情報、製造との間でのシームレスかつ相互のデータ活用を実現しています。
【次ページ】「金属加工の駆け込み寺」を目指して取り組んでいること
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