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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2023年5月に「
DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版)」を公表しました。「DX推進指標」の成熟度レベルの自己診断結果を取りまとめた本レポートの発行は2019年版、2020年版、2021年版に続き4回目となります。今回は本レポートに基づき、この4年間を比較し、日本企業のDXの取り組みの変化を概観します。
「自己診断結果」回答企業が大幅増、どの業種が増えた?
2019年以降4年間の推移を見ると、
DX推進指標の自己分析結果の回答件数は毎年増加しており、特に2022年は3956件となり、前年の486件と比較すると約8倍となっています。
業種別に見ると「水産・農林業」や「医療・福祉」といった過去に回答のなかった業種からの提出が見られ、業種を問わず、DX推進指標の活用が広がっていることが推察できます。
一方、企業規模別の内訳を見ると、2021 年までの3年間は大企業が全体の7割以上を占めたのに対し、2022 年は中小企業が全体の約9割を占めています。
また、回答企業の売上高規模別の内訳を見ると2021年までの3年間は売上高が100億円以上の企業が全体の約7割を占めていましたが、2022 年は20億円未満の企業が回答企業のうちの8割以上を占めており、その中でも3億円未満の企業が6割強を占めています。
こういった回答企業の裾野の拡大が、後述の成熟度の低下をもたらしている要因と考えられますが、平均的な日本企業の実態をより的確に表す結果が示されるようになってきていると言えるのではないでしょうか。
【5段階評価】日本企業全体のDX成熟度
2022 年に自己診断結果を提出した3956社の全指標、「経営視点指標(定性)」および「IT視点指標(定性)」の現在値(自社がどの程度の状況にあるのか)と目標値(自社がどの程度の成熟度を目指すのか)を見ると、全指標の平均値は、現在値が1.19であり、目標値が3.16になっています。
現在値、目標値とも前年度より減少しており、現在値と目標値の差は広がっています。これは前述の回答企業の裾野の拡大によるものと思われます。
また、成熟度の平均が3以上の「先行企業」は3956社中281社で、レベル3未満の「非先行企業」は3675件で92.9%となっています。
全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が9割以上存在していることが分かります。
また、レベル2未満の企業は3190件であり、80.7%であり、全社戦略が明確ではなく散発的な実施にとどまっている成熟度レベルの企業が8 割以上存在していることが分かります。
中小企業のDX成熟度、遅れている領域とは
中小企業における現在値の平均は1.09であり、大企業の2.04と比べて低くなっており、経営視点指標がIT視点指標よりも差が大きくなっています。
DXを実現するIT関連の取り組みは中小企業でも進められていると考えられますが、DX推進のための経営のあり方や会社組織の変革の取り組みが進んでいないと考えられます。
中小企業と大企業の差が大きい上位・下位5指標を見ると、中小企業でもデータ活用の重要性が浸透してきていることが分かります。
中小企業でもデジタル技術やデータを活用できる人材を適切に配置して、スピード感をもってデータを使いたい形で活用できる仕組みが整ってきていると考えられます。
一方で、DX推進に向けデータを活用した事業展開を支える基盤(プライバシー、データセキュリティなどに関するルールやIT システム)の整備が進んでいないことが分かります。
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