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情報処理推進機構(IPA)は、企業のDX推進を目的に、日本および米国の企業のDXに関する企業戦略、人材、技術について調査・分析した結果を「IPA DX白書2021」として2021年10月に発行しました。2023年2月には、それに続く第2弾として「
IPA DX白書2023」が公開されました。本白書では2022年度の国内のDX事例の分析に基づくDX取り組み状況の概観、日米企業のアンケート調査結果の経年変化や最新動向、DX推進への課題や求められる取り組みの方向性などについて解説しています。今回は、この「IPA DX白書2023」から読み取れる日米のDXの違いや、今後企業が取るべき対応について考察します。
DXの進捗状況の差は? どの業種・規模の企業が遅れてるか
2022年度の調査によると、日本ではDXに取り組んでいる企業(「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取り組んでいる」の合計)は69.3%となり、2021年度から13.5ポイント増加しました。米国ではほぼ横ばい(2021年度 79.4%→2022年度 77.9%)であり、両国の差は縮小しているように見えます。
しかし、全社戦略に基づいて取り組んでいる企業(「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」の合計)に絞って見ると、日本は54.2%、米国は68.1%と13.9ポイントの開きがあり、日本企業においては、全社的なDXの取り組みが進んでいないと推察されます。
業種別に見ると、日米ともに、DXに取り組んでいる割合が高いのは「金融業、保険業」「情報通信業」、割合が低いのは「サービス業」となっています。製造業に関しては、日米差が大きく、日本ではDXに取り組んでいない企業が3割近くにおよび、全社的に取り組んでいる企業は6割に満たない状況です。
従業員規模別に見ると、日本は従業員数が多い企業ほどDXの取り組みが進んでおり、従業員規模が「1001人以上」の企業においてはDXに取り組んでいる割合は94.8%と米国と比較しても高くなっています。一方、従業員規模が「100人以下」の企業では4割に満たず、中小企業におけるDXの取り組みが進んでいないことが分かります。
DXの取り組みの「成果が出ている」企業の割合は、日本企業では2021年度の49.5%から2022年度は58.0%に増加しています。一方、米国企業では89.0%となっており、日米差は依然として大きいことが分かります。
DXの成果の差は? なぜ日本企業は成果がでないのか
外部環境変化のビジネスへの影響と対応状況についての回答結果を見ると、「技術の発展」をはじめとしたすべての外部環境変化に関して、日本企業より米国企業の方が「非常に強い影響があり、ビジネスを変革させ最優先で影響に対応している」という回答割合が多くなっています。
日本企業が、外部環境変化による影響を受けてビジネス変革に取り組んでいる(「非常に強い影響があり、ビジネスを変革させ最優先で影響に対応している」「強い影響があり、ビジネスを変革させ影響に対応している」の合計)割合が多いのは、「技術の発展」「SDGs」「パンデミック」の3項目でそれぞれ3割程度となっています。
一方、「プライバシー規制、データ利活用規制の強化」「地政学的リスク」「ディスラプターの出現」の3項目では、米国企業では4~5割におよんでいるのに対して、日本企業では2割以下となっています。
つまり、日本企業は、外部環境変化を事業機会と捉えて対応する意識が弱いのではないかと考えられます。
日本企業では、デジタイゼーション(「アナログ・物理データのデジタル化」)とデジタライゼーション(「業務の効率化による生産性の向上」)において、成果が出ている割合(「すでに十分な成果が出ている」「すでにある程度の成果が出ている」の合計)が約8割となっており、米国との差が少なくなっています。
一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)(「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」)で成果が出ている企業は、日本では20%台にとどまるのに対し、米国では約70%となっており、DXの取り組みに大きな開きがあると言えます。
DXは、顧客ニーズの不確実性が高く、技術の適用可能性も不確かな状態で推進することが多く、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応していくことが必要です。そのため、アジャイル的な取り組みが求められます。しかし、アジャイルの原則とアプローチを組織のガバナンスに取り入れている日本企業は、いずれの部門においても半数以下になっており、米国企業との差は大きくなっています。
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