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総務省は2022年7月、最新のICT技術/デジタル技術の動向を取りまとめた「
情報通信白書2022 」を公開しました。今年の情報通信白書の特集テーマは、「情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~」です。本白書では、情報通信白書刊行後50年の間に起こったICTサービス・技術の進化やICTを取り巻く国際情勢の変化を概観するとともに、ICT/デジタル分野において日本が直面する現状と課題、今後の展望などについて考察がなされています。本記事では、200ページ超に及ぶ「令和4年版(2022年版)情報通信白書」から注目すべきポイントを取り上げます。
「令和4年版情報通信白書」の全体像
本白書では、情報通信白書の刊行からの50年間を振り返りながら、節目となった出来事に触れつつ、それぞれの時代で制度やサービス、技術にどのような変化があったかを整理しています。
具体的な構成としては、ICT技術/デジタル技術の高度化とサービスの多様化、ICTを取り巻く国際情勢の変化などの観点から5期に分けています。
あわせて本白書では、今後日本社会で予想される変化を展望しながら、その中でICT技術/デジタル技術に期待される役割や、ICT技術/デジタル技術の高度化・多様化および社会への浸透に伴い顕在化しつつある課題への取り組み状況について整理しています。
日本の生産年齢人口は2030年には6875万人まで減少することが見込まれる中、ICT技術/デジタル技術の利活用による労働生産性の向上など、その果たすべき役割はより大きくなっています。一方、ICT技術/デジタル技術への依存度の高まりに伴い、顕在化する課題への対応が求められます。
民間企業のICT投資額の推移
世界のICT市場(支出額)は、スマートフォンやクラウドサービスの普及などにより、2016年以降増加傾向で推移しており、2021年は465.2兆円(前年比12.5%増)となっています。
一方、日本の民間ICT市場(ICT投資額)では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を背景とした業績不振などにより、特に中堅・中小企業を中心に投資案件の中止や先送りをした企業が多くなっています。
大企業ではおおむね計画通りに投資が実施され、テレワーク実施に向けた環境整備や、デジタル化や事業変革の必要性を認識した企業による投資が加速したものの、2020年度は12兆9,700億円(前年度比0.6%増)にとどまっています。
また、日本の2020年の情報通信産業の名目GDPは51.0兆円であり、前年(52.3兆円)と比較すると2.5%の減少となっています。
2020年の日本の民間企業による情報化投資は、2015年価格で15.2兆円(前年比0.4%減)でした。情報化投資の種類別では、ソフトウェア(受託開発及びパッケージソフト)が8.9兆円となり、全体の6割近くを占めています。
2020年のICT財・サービスの輸出入額(名目値)は、輸出額は10.6兆円(全輸出額の13.7%)、輸入額は16.8兆円(全輸入額の18.4%)となっています。ICT財の輸入超過額は3.5兆円(前年比16.6%増)、ICTサービスの輸入超過額は2.7兆円(前年比20.0%減)となっており、ICT財においては輸入超過の拡大が顕著になっています。
日米中の主要企業の売上高・時価総額
世界のICT関連市場の主要プレイヤーの時価総額を見ると、GAFAM(グーグル〈アルファベット〉、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、マイクロソフト)が上位を独占しています。
2021年7月にはGAFAの時価総額合計が日本株全体の時価総額を上回っており、上位15社の時価総額総計も2017年の408兆1,724億円から2022年には1,586兆8,443億円と大きく増加しています。
日本、米国および中国の主なプラットフォーマーなどの2020年の売上高を比較すると、最も大きいのはアマゾン(約41兆2,214億円)で2013年比5.2倍となっています。中国のアリババ(約7兆8,924億円)も2013年比で13.3倍と高い成長を見せています。
一方、日本企業は成長規模も小さく、LINEが5.1倍、ヤフーが2.7倍、楽天が2.6倍、ソニーが1.1倍にとどまっています。
こういった中で近年では、市場の適正な競争環境を確保するため、市場支配力を拡大する巨大プラットフォーマーに対して規制を強化する動きが見られます。また、近年、誹謗中傷や偽情報を含む違法・有害情報のSNSなどでの流通が課題となっており、日本を含む各国において、プラットフォーム事業者に対する新たな規制導入の検討やこれら事業者の自主的な対応の促進など、様々な取り組みが行われています。
最近の動きとしては、EUで2022年4月に、すべての仲介サービス提供者(プラットフォーム事業者など)に対する違法コンテンツの流通に関する責任や事業者の規模に応じたユーザ保護のための義務を規定した「デジタルサービス法(Digital Services Act)」が暫定的に合意されるなど、制度的な対応も進められています。
米国では、2016年の大統領選挙時における偽情報の問題などを契機として、偽情報対策の調査と議論が行われており、連邦議会でプラットフォーム事業者の取り組みに対する公聴会が行われるなど、プロバイダが第三者による発信内容そのものについて免責されることを規定した「通信品位法(Communications Decency Act of 1996)第230条」の見直しに関する検討の動きが出てきています。
日本でも、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害についてより円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たな裁判制度(非訟手続)を創設することなどを内容とするプロバイダ責任制限法の改正(2021年4月に改正法が成立、2022年10月に施行)とともに、侮辱罪の法定刑の引上げを含む刑法の改正(2022年6月に改正法が成立し、侮辱罪の法定刑の引上げについては同年夏に施行予定)などの制度的な対応が実施されています。
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