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中小企業庁は2023年4月、中小企業の動向などについて取りまとめた「
2023年版 中小企業白書」を公開しました。中小企業白書とは中小企業基本法に基づく年次報告書です。今年の白書では、新型コロナの影響が薄れる中、マクロ経済環境が激変する時代を乗り越えるために中小企業にも成長に向けた価値創出やデジタル化といった対応が急務であることが述べられています。本記事では、700ページ超におよぶ「2023年版 中小企業白書」の中から、注目すべきポイントを紹介します。
もう完全回復? 新型コロナの影響とは
「2023年版 中小企業白書」では、
2021版、
2022年版に引き続き、新型コロナが中小企業に与えた影響を分析し、その実態が述べられています。
中小企業へのアンケート調査によれば、自社の事業環境について「もはや感染症の影響下ではなく、事業環境は平時を取り戻した」、「もはや感染症の影響下ではなく、感染症の影響以外の環境変化への対応が急務だ」と回答する企業が、それぞれ27.9%、37.1%となっており、合わせて65.0%の企業が新型コロナの影響を脱していることが分かります。
デジタル化の進捗状況は?
2020年から2022年(現在)までの3年間の、新型コロナの流行を踏まえたデジタル化の取り組み状況の推移を見ると、2022年においては「IT・デジタルツールの利用環境整備・導入」をはじめ、多くの項目で3年間を通じて上昇傾向にあり、新型コロナ流行を契機にデジタル化の取り組みが浸透しつつあることが分かります。
本白書では、昨年の
2022年版中小企業白書と同様に、デジタル化の取り組み段階を以下の4つに分類して、中小企業の取り組み段階や具体的な取り組み例についての調査結果を示しています。
- (段階1)紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態
- (段階2)アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態
- (段階3)デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態
- (段階4)デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態
新型コロナ流行前の2019年時点ではデジタル化の取り組み段階が3または4と回答した企業が2割に満たなかったのに対し、2022年時点では3割を超えており、デジタル化の取り組み段階が進展していることが分かります。
2025年時点のデジタル化の取り組みの見込みについても、2022年時点と比較してさらに取り組み段階が進展すると見込んでいる企業の回答割合が高くなっており、今後も中小企業がデジタル化の取り組みを推進していく可能性が高いと言えます。
従業員規模別に見ると、従業員が20人以下の企業では、21人以上の企業と比べていずれの時点においてもデジタル化の取り組み段階が1や2の企業が多く、2022年時点では2019年時点と比較して取り組み段階の差が広がっていることが分かります。
デジタル化の取り組み段階別に、経営者がデジタル化を推進している割合を見ると、デジタル化の取り組み段階が進展している企業ほど、経営者自身がデジタル化を推進している傾向にあることが分かります。
また、デジタル化の取り組み段階別に、デジタル化の推進に向けた戦略的な取り組みの実施状況を見ると、デジタル化の取り組み段階が進展している企業では、ビジョン・目標の設定や業務の棚卸しなどを実施している企業の割合が高くなっています。こういった企業ではデジタル化を戦略的に推進していくことで、着実に取り組み段階を進展させていると考えられます。
デジタル人材の確保・育成ができている企業の特徴
本白書では、デジタル化の取り組みにおいては、中小企業においてもデジタル人材の確保が課題になってきており、デジタル人材の確保・育成に向けては、求めるスキルや人材像を明確化することが重要であると述べられています。
デジタル人材の確保・育成に向けた取り組み例について、中小企業庁「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン(改訂版)」における人手不足対応のためのステップを基に5つに整理し、その取り組み例の実施数別に分析を行っています。
デジタル人材の確保・育成に向けた取り組みの実施数別に、デジタル人材の確保状況を見ると、① デジタル化の戦略を推進する人材、② デジタル化の技術を担う人材ともに、実施数が多い企業ほどデジタル人材を確保できていることが分かります。
「デジタル化の技術を担う人材を確保できている」と回答した企業に対し、デジタル人材のスキルレベルをデジタル化の取り組み段階別に確認すると、取り組み段階が進展している企業ほど、自社内にプログラムを開発できるレベルのデジタル人材を確保できていることが分かります。
一方で、最も取り組み段階が高い段階4の企業においても、約半数が自社内の「デジタル化の技術を担う人材」はプログラムを開発できるレベルではなく、コードを読んで理解できるレベルや、書籍やインターネットなどで調べながらであればコードを理解できるレベルであると回答しています。
このことは、独力でプログラム開発ができる人材の確保ができていない状況を表している一方で、そうしたスキルを持つ人材を必ずしも自社内に抱えていなくても、デジタル化の取り組みを進展させることが可能であると考えている企業が多いことを示しているとも言えます。
【次ページ】本当に進んでいる? 中小企業のカーボンニュートラルの現状
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