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- 2023/11/06 掲載
短期のROIは求めない?清水建設のホンキが伝わる「建設DX」が凄すぎる理由
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
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前編はこちら(この記事は後編です)
施設をアップデートする「建設OS」とは
2023年9月、清水建設がイノベーション促進と人財育成を目指して新たに立ち上げた施設「温故創新の森(Smart Innovation Ecosystem) NOVARE(ノヴァーレ)」の設備には、DX先進企業である同社ならではの工夫がいくつも盛り込まれています。この施設の設備を見ていくと、建設DXの最善を知ることができます。そうした設備内のあらゆる仕掛けを機能させる基盤として重要なのが、清水建設の開発した建物OS「DX-Core」です。ここ数年、建物をデジタル化するプラットフォームの開発に竹中工務店や大成建設など、大手ゼネコンが取り組んでいますが、同様に清水建設でも建物をデジタル化するプラットフォーム「DX-Core」を開発しています。
「DX-Core」は、建物とデジタルを融合させ、各種設備機器同士の連携をローコードで可能にすることで新しいサービスを生み出す建物の次世代デジタルプラットフォームです。具体的には、ビル内の各種建設設備のアプリケーションと連携し、スマートフォンのように適時アップデートすることで、ビルの「付加価値向上」、ビル運用管理の「生産性向上」を図るソフトウェアとなっています。
それでは、この建設OSを中心に、どのような設備の仕組みになっているのでしょうか。たとえば、温故創新の森 NOVAREにはさまざまなロボットが設置されています。DX-Coreは各種サービスを提供する館内ロボットと会話をし、その動きを補助して自動ドアの開錠やエレベータの呼出などを行います。ロボットが建物に入るときも建物と会話をしてフラッパーゲートを開けてもらうなどの対応を行います。
昨今はビル内でモノの搬送ロボットや清掃・警備ロボットを運用するシーンが増えています。そうしたロボットが施設内を水平垂直方向に移動する際には、エレベータや自動ドアとの連携制御が必要になります。また、たとえば清掃ロボットが不審物を発見した場合は、警備ロボットへの連携が必要になるような場合も出てきます。
これらに対応するために、従来は個別の連携制御が必要でしたが、清水建設が開発した複数ロボットを連携制御するアプリケーションとDX-Coreを連携することで、多様な建物内設備、ロボット同士のn対nの連携を簡単に実現することができます。
人の動きに合わせた「最適な空調管理」の仕組み
こうした、建物内の設備やロボット同士のやり取りを可視化するために、デジタルツインを活用しています。また、DX-Coreが目指すのは合理化だけでなく「建物が人に寄り添う取り組み」です。たとえば、温故創新の森 NOVAREでは、「パーソナル空調」と呼ばれるヒューマンセントリックな取り組みも進めています。
同建物のフロアには60cm単位に床にファンが付いており、人ごとに個別制御する(個々人が持っているビーコンを用い、温度制御を上下する指示を行い、その指示内容を伝達する)ことでその個々人の動きに合わせたファン制御なども行っています。
このビーコンは位置情報把握にも活用されており、施設内のモニターで各人がどこにいるかを把握することが可能です。床に設置されたファンにはあえて安価なデスクトップPC用のファンを用いています。従来、ビル設備としては活用されなかったこういった設備の実験的活用により、長期利用による影響や課題などの把握にも取り組んでいます。
こうした動きについては、現場で見るだけでは分かりにくい部分もあるためデジタルツインを使ったデジタル空間での可視化を進めています。これにより、事象の見える化だけでなく意味の見える化も進めています。DXの取り組みを自社で実践することで、DX-Coreなどの外販にもつなげる取り組みを進めています。
「席配置」のこだわり
現在、多くの企業で取り組みが進んでいる「フリーアドレス」オフィスは1987年に清水建設・技術研究所において世界で初めて実現されたものです。このフリーアドレスは、席の場所は決まっていますが、人はどの席に座っても良いというものです。温故創新の森 NOVAREではノーアドレスオフィスという考え方を取り入れています。 このノーアドレスでは机、椅子、植栽などのすべての什器が可動式で、床にはコンセントが基本はありません。
温故創新の森 NOVAREでは、どこに動いても良いという新たなコンセプトが企業活動にど温故創新の森 NOVAREではフリーアドレスオフィスという考え方を取り入れています。んな影響を与えるかという実験も行いつつ、実践も行っています。 【次ページ】旧渋沢邸で採用された「優れた防災のカラクリ」
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