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  • 2019/11/27 掲載

「製造業のDX」をIVI理事長が解説、「モノからコトへ」実現のために今何をすべきか

IVI公開シンポジウム2019-Autumn-レポート

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設立5年目を迎えた、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)は2019年10月10日に「IVI公開シンポジウム2019 -Autumn-」を開催しました。前編では、慶応義塾大学 山中教授の講演の様子などを紹介しました。後編では、IVI 西岡 靖之 理事長(法政大学教授)の講演の様子をレポートします。同氏は「“モノからコトへ”とはどういうことか? ~デジタルトランスフォーメーション(DX)の正しい理解~」と題し、日本のDXがコンセプト止まりにならないためのDXの捉え方、今後製造業に求められるDXの取り組みなどを述べました。
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IVI
西岡 靖之理事長



日本の製造業のDXはいまだコンセプト止まり

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためのサイバーフィジカルシステム(CPS)やそのユースケースであるデジタルツインなどの技術コンセプトについては多く語られています。しかし、DXの実装まで至っている日本の製造業は、まだそれほど多くないという印象を持っています。

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 IVIの業務シナリオワーキング(WG)活動は、製造業の現場の困りごとから出発した取り組みであり、この困りごとをAS-IS(現状)として定義するところからスタートします。各WGはデータの重要性を認識し、データを集め、実証実験を推進しています。このようなWG活動を通じて、DXに向けた取り組みも拡大しつつあります。

 DXは、個別のデジタル化である「デジタイゼーション」や、バリューチェーン全体のデジタル化である「デジタライゼーション」を超えた概念です。DXはデジタルの力によって既存の仕事、業務のあり方、企業のあり方までも変えてしまうものだと考えられます。

 インダストリー4.0は製造業向けの戦略ですが、DXは製造業を超え、産業全体で取り組むべきものです。しかし、DXのコンセプトは理解しているものの、具体的な進め方に悩んでいる企業がいまだ多いと考えられます。各企業には自らの得手、不得手なところを把握し、少し未来を見据えた取り組みが求められるのではないでしょうか。

 現代は、過去からの連続した流れが非連続になり、今までの延長線上の検討では先に進めない時代です。英国のBrexitであれ、米中貿易摩擦であれ、従来の延長線上では考えられない事象が起きています。

 こういった時代には多様性が重要となり、多様なモノやコトをつなぐためのインターオペラビリティ(相互接続性)が重要となります。相互依存性の緩和も重要です。サプライチェーンの対応において仕様のやり取りを精緻に行おうとすると、取引するプレーヤー間の依存度が高まります。この依存度を緩めるためには、選択するプレーヤーの冗長性を高めることが必要です。

 現代社会では、多くの大企業がROE(Return On Equity:自己資本利益率)重視になっていますが、そうなると長期的ビジョンにもとづいた経営が難しくなります。アジャイル経営も進展していますが、日本企業が得意とした経営方式であるにも関わらず、うまく活用できている日本企業は多くありません。

日本企業の競争力の源泉となるものは?

 世界企業の時価総額ランキングを見ると、昨今マイクロソフトやGAFAなどが台頭しています。実体経済ではなく、株式市場の期待値を反映した物差しにもとづく時価総額評価が進みつつあるのではないでしょうか。一方、日本のベンチャーからはこういったユニコーン型の企業がなかなかでてきません。

 シリコンバレーなどのメガ企業のベースとなる重要な特性は、次の3つであると考えます。
  1. スケーラビリティ
    売上規模が拡大しても、コストが比例して増えることはない。限界費用がゼロに近く、売れた分だけ利益になり、ネットワーク効果によってビジネスを拡大できる。
  2. ディペンダビリティ
    相互依存性がもたらす安全性や信頼性によってマーケット内でのポジションが守られている。取引間の関係性の中で、代替が不可能な存在となっている。
  3. サステナビリティ
    成長を通して利益を関係者に還元できている。

 日本は、ものづくりの強みでこれらを超えていかないといけません。

 日本の政策であるConnected Industriesは、データがつながり有効活用されることにより、技術革新、生産性向上、技能伝承などを通じて課題が解決される社会の実現を目指しています。そのためには、自律化(自律的に改善する)、オープン化(オープンに情報連携し、いろいろなところとつながる)、デジタル化が必要となります。

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Connected Industries
(西岡氏講演資料より)


 日本政府が掲げるSociety 5.0を支える4つのデータは、ビッグデータ、オープンデータ、ディープデータ、トラストデータです。特に昨今重要度が認識されているのはオープンデータで、山中先生の講演の自動運転に用いられている地図データなどはこれにあたります。ディープデータは各企業の競争力の源泉です。

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Society 5.0の4つのベクトル
(西岡氏講演資料より)

 IVIが取り組んでいる製造業のデータ流通のためのフレームワーク「CIOF(Connected Industries Open Framework )」で用いているデータはトラストデータであり、ある限定した企業間でやり取りされ、信頼関係にもとづき共有されるものです。CIOFの重要な概念は、「あるプレーヤーの特定のサービスがデータを提供し、このデータが相手のプレーヤーの特定のサービスで使われる”という関係を構築することです。データの信頼性を確保するために、ブロックチェーンの仕組みを使って共有することを考えています。

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CIOFによるデータ取引の概要
(西岡氏講演資料より)


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