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銀行員やコンサルタントというキャリアを経て、Fintech系企業を興したKyash(キャッシュ)の鷹取真一氏。エンジニアリングに関する知識や人脈はほとんどなかったが、同氏の想いに共感する仲間が徐々に集まった。資金調達にも成功し、Fintechコミュニティから誘われた鷹取氏。現在は、Fintech協会の理事として、協会の活動を支えている。
「もくもく会」でエンジニアをナンパ
――起業するとき、いちばん苦労したことは何ですか。
鷹取氏:優秀なエンジニアを集めることです。自分のスキルは大学時代に簡単なウェブサイトを作る程度でしたので、「イケてるエンジニア」がどういう人なのかまったくわかりませんでした。ですので、最初は「エンジニアの世界に触れる」ことから始めました。
「もくもく会」という、いろいろな企業がオフィススペースを貸し出し、エンジニアが集まって作業や勉強を行う集まりがあるのですが、週末はそこにひたすら通いつめました(笑)。
そこではエンジニアが“もくもく”とコーディングしているのですが、私はメールの返事を書きつつ、彼らとの会話の機会を狙っていました(笑)。
――1人だけ目的が違うと(笑)
鷹取氏:「何を作っているの?」みたいな感じで話しかけて、「僕もこれを作りたいけど、自分では全然できないから、力を貸してくれ」とお願いをしました。
実際、部分的に手を貸してくれた人もいましたし、「(君は何も知らなくて)かわいそうだから、エンジニアを紹介しようか?」と言ってくれる人もいました。人間、もがいている人には手を差し伸べてくれるのですね。人のやさしさに触れました(笑)。
――もくもく会に参加している人が、エンジニアを紹介してくれたのですか?
鷹取氏:そうです。ほかには「プロジェクトには参加できないけど、優秀な人かどうかを判断するアセスメントは手伝うよ」とか「LinkedInのリンク送ってくれたら(応募してきたエンジニアが、どの程度のスキルを持っているかを)見るよ」と、“人材選定”の手伝いを申し出てくれる人も現れました。
たとえば、「イケてる人はどういう(プログラミング)言語を最近使っているか」を、その理由も込みで、ていねいに教えてくれる人もいました。
最初からITにコミットした理由
――最初からITを洗練させるコミットしていたのはなぜですか。
Kyashはクリエイティブとテクノロジーとビジネスの観点を融合させた会社です。ですから、自分に経験があるビジネスの分野だけに特化してしまっては、テクノロジーの可能性を活かしきれない。
世の中を変える仕組みを構築するには、これら3つを高いレベルで共存させていく必要があると考えていました。
――起業に必要なのは「情熱」であるという典型的なエピソードですね(笑)
鷹取氏:「遠慮しているうちは本気じゃない」と自分に言い聞かせていました。半端な気持ちでは、巻き込む人たちに対してかえって迷惑になる。「厚かましいけど、将来返します」と言って、本当に信じてもらえるか、そのために必要とされている一歩を着実に刻んでいるか、が重要だと思っています。
――実際に起業して直面した課題はありますか。
鷹取氏:セルフマネジメントが難かったことです。1人で作業をしていると、「やった! 〇〇ができたよ」と共有できる人がいない。 「まずい!」と言っても、まずいままです。
逆に夜中に寝ようとしたら、「お前はもう寝てしまうのか、鷹取」と叫ぶもう1人の自分が出てくる。『冷静と情熱のあいだ』のような感覚(笑)で作業をしていました。
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