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- 2016/06/16 掲載
ドケチな若者が喜ぶフィンテックは「貧テック」 マネーフォワード×FinTech協会対談
海外に比べて少ない国内フィンテック企業
ここのところ注目を増しているFinTech(フィンテック)だが、そもそも国内の現状はどうなのか? モデレーターを務めた日経BPの原 隆氏は、マネーフォワードの瀧 俊雄氏と、FinTech協会の丸山 弘毅氏に実情を訊ねた。「いま国内には、創業したての企業も含めると100社ほどのフィンテック企業があります。世界には約1300社あると言われ、そのうち40分の1程度を日本企業が占める計算です。日本のGDPや金融市場のシェアから考えると、規模は小さい。海外では、銀行と争えるレンディング(融資)系のフィンテック企業が多いですが、日本ではあまりない点も寂しいですね。ただし他分野、たとえば家計簿や会計などを扱う企業に関しては、少しずつ競争が起きているという認識です」(瀧氏)
一方、丸山氏は「昨年にFinTech協会が設立され、加盟企業がだいぶ増えました」と盛り上がりつつある現状を語る。
「最近、特に急増していますが、これらの企業は昨年から準備して、やっとローンチできたところ。まだフィンテックの裾野が広がっていないようにも見えますが、実際には準備中で表面に見えない企業も多いと思います」(丸山氏)
国内フィンテック企業が抱える「人材不足」
「フィンテックにはさまざまなジャンルがありますが、共通課題は人材不足。まだ大企業から人が流れる段階ではありません。またジャンルによっては、法律面などから銀行やカード業界とも提携しなければならないこともある。金融機関はコンサバ(保守的)なので、なかなか進めづらいという点も課題です」(丸山氏)
一方、海外の場合はフィンテックに金融系の人材もどんどん流れる。この点について瀧氏は「雇用環境の違いが大きい」と指摘する。
「海外では同じ企業に5年いれば古株。景気が悪くなれば、転職先にベンチャーを選ぶことは自然な選択肢です。かつてデリバティブが形成されたのも、NASAのスペースシャトル事故後に、数学が得意な人々がウォール街に流れたから。日本はロールモデルがなく、優秀な人材がベンチャーに流れません」(瀧氏)
丸山氏も「FinTech協会の加盟企業は、金融系の起業家も多いですが、CTOやマーケティング担当などには金融系からの人材が不足しています」と続ける。
「これまで前例がない業界で、所得面でのハードルもあり、発展途上のベンチャーには人も集りにくい。海外と日本では働く場所の選び方が異なっています」(丸山氏)
フィンテック業界ならではの特殊な事情
雇用環境の違いは、スタートップ全般について共通することかもしれないが、フィンテック業界ではさらに特殊な事情もあるようだ。「この業界はビジネス系とエンジニア系でも発想が異なります。ビジネス系は、どうしても銀行寄りの発想になりがちです。しかし、最終消費者に沿ったビジネスをしたいと考える人は引き込みやすい。一方のエンジニア系では、“セキュリティファースト“という前提があり、技術的な縛りが強い。それを乗り越えて世界を変えていきたいという、金融センスがある人が向いているでしょう」(瀧氏)
これを受けて原氏は、多様なフィンテック分野の中で、現時点で特に参入の多い領域を両者に尋ねた。まず瀧氏が挙げたのがブロックチェーン関連だ。
「特にブロックチェーンまわりは参入が多いと思います。商業的な可能性も、技術的なエッジもあるため、それを生かしていくために流動性が高くなる。また決済領域は、異業界から金融へ参入するケースもあります」(瀧氏)
この傾向はFinTech協会の加盟企業でも同様だという。「やはりブロックチェーンと決済まわりは多いですね。決済では、まったくの異業種、たとえばマーケティング系からの参入も見られます。Uberのようにタクシー決済の一部がフィンテック的になっているケースもあります」(丸山氏)
【次ページ】 フィンテック=”貧テック”が日本の追い風に?
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