「Money20/20 Asia」レポート バークレイズインタビュー(後編)
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シンガポールで行われたMoney20/20に参加したバークレイズ チーフ・テクノロジー・アンド・イノベーション・オフィサー ジョン・ステッカー氏。同氏は
前回の独占インタビューで銀行とFinTech企業の協力のあるべき姿を語った。今回はこれからの時代の銀行を作るために必要な銀行カルチャーの変え方、銀行で働く人々のマインドセットの在り方を語った。
1人ひとりが変化しないと生き残れない
金融業界に限った話ではありませんが、働く人々の中には、テクノロジーに関しアレルギー反応を起こす人もいます。しかし現実を見れば、適応能力がなければ生き残れないのです。新しいスキルを学び続け、価値を提供し続けなければなりません。
2008年に起きた金融恐慌からFinTechブームが生まれました。そしてヨーロッパと米国において、「1つの産業に一生身をおくことにどれだけの意味があるのか」という問いが生まれました。そして1人ひとりがどうやって自分を再開発し続けるかという問いに直面することになりました。自分のサービスが進化しなければ、顧客にとって最も効果的なサービスを提供できなければ、顧客は別の場所でサービス提供を受けるだけです。
変化しないと置いていかれます。変化を受け入れそれにあらがわないこと。それが非常に重要です。そしてこれは人生にもいえることです。初めてマラソンに行ったとき、まずは1マイル走るでしょう。それからハーフマラソンを走る。痛い思いもするし苦しい思いもするし嫌な思いもするでしょう。でもそれに慣れます。そしてそれをやり続けることでうまくなっていくのです。変化を受け入れましょう。そしてそれに実際に取り組みましょう。そしてその変化をあなた自身の一部としましょう。
変化とは究極的に非常に人間らしいことです。そして銀行においては人間が重要です。人が変われば銀行が変わります。だからこそ自分を信じて自分自身が変わらなければいけません。
銀行、あるいは企業は人の集まりです。マネージャーやシニアの人たちは率先して変化しなければなりません。ただ部下たちに命令をして変化を促してもうまくいきません。部下に対して自分が変化したいのだと見せなければならないのです。
MVPではなく、MLPを提供せよ
最近ではMVP(Minimal Viable Product、実用最小限の製品)という言葉がよく使われます。しかしこれは私に言わせればゴミを市場に投入することです。MVPには「とにかく終わらせよう」というメンタリティが含まれています。
MVPはこんな感じです。私は谷に橋を建設することができます。その橋はロープでできているかもしれません。渡ることはできるでしょう。
われわれがやるべきなのはMLP、Minimal Lovable Product(最低限愛せる製品)を市場に投入することです。金融業界においてこれは十分ではありません。なぜなら顧客は安全でセキュアで規制を受けたプロダクトを使いたいからです。
MLPはこんな感じです。その橋には手すりがあります。なぜなら高いところにいるときは掴まれるものがあったほうがいいからです。その方が安全に橋を渡ることができるでしょう。
この2つの違いはそれほど大きいものではありません。しかしながら金融業界において顧客に恐怖感を与えるようなものを提供してはならないのです。顧客が気に入るものを提供しなければならないのです。
【次ページ】職場への“愛”がなければクライアントのために働けない
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