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シンガポールで行われた
FinTech(フィンテック)のイベントMoney20/20。世界各国から大小の金融関連企業が集まったが、ビジネス+ITはJPモルガンでデジタル事業を推進するトレジャリー・サービス部門 オープンバンキング&APIストラテジー統括責任者のサイラム・ランガチャリ氏への独占インタビューを実施。オープンバンキングをめぐる世界の動きと日本の問題点を聞いた。
オープンバンキングは「2つの次元」で本質が見える
オープンバンキングは2つの次元から見ることが重要です。1つ目の次元は「信頼に関わるフレームワーク」です。このフレームワークは規制を作る人々が現在注力しているものです。彼らは適切なビジネスの運用を目指しています。2つ目の次元は顧客にとっての「バリュープロポジション」、つまり「顧客に提供する価値」です。
信頼に関わるフレームワークはムラがあります。よりアグレッシブに規制を進めようとする国もあれば、そうではない国もあります。規制のグローバルスタンダードが生まれるまでにまだ時間がかかるでしょう。
アグレッシブな例は、ヨーロッパ、イギリス、カナダや一部のアジアの国々です。こうした国々では、どのような規制が適切かを探っている段階です。米国の状況は非常に複雑です。このように規制の進み方はムラがあります。オーストラリアも規制を探り探りで進めています。
バリュープロポジションの観点では、すでにいろんなところでイノベーションが起きています。米国ではオープンバンキングが始まって15年あるいは20年ぐらい経ちます。この間に銀行口座を全体的に見渡すためのアプリも作られ、ピアツーピアの送金を実現するためのアプリもできました。アジアではB2Cのイノベーションがたくさん起きています。
この2つの次元の進化は同時に進んでいく必要があります。
今日本では規制機関が適切な規制のあり方を考えているところです。バリュープロポジションという意味ではいろんなことが起きています。しかし、企業の観点からいうと、オープンバンキングへの需要が他の地域に比べて弱いようです。そしてそれゆえ、オープンバンキングの取り組みにスピードがありません。
なぜ需要が弱いのかというと、日本ではまだまだオープンバンキングが必要になる課題が発見されていないからです。特に大企業ではそうです。
日本はオープンバンキングで有利
では、スピードに欠ける日本は不利なのか。そうではありません。日本の規制機関は有利です。なぜなら先行する世界中のオープンバンキングの体制を見ることができるからです。先行する国々がどうして成功したのか、どうして失敗したのか。どんなところに機会があるのか。これからどう進んでいくべきかを考える上で、日本は有利なのです。
日本のオープンバンキングのカギを握るのは規制機関です。日本の規制機関は銀行やコンシューマーフィンテック企業などのエコシステムの参加者を集め、一緒にこれから先を考えることができます。彼らは集まってオープンバンキングのもたらす利益を話し合うことができます。私が思うに、このような動きを取った国はこれまであまりありません。
それに日本の金融業界がオープンバンキングで後れをとっているとしても、それでエコシステムが崩壊するわけではありません。いまのところ特に問題はないわけです。
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