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  • 2018/09/14 掲載

「超簡単送金」で現金もデジタル格差も超える、Kyashの挑戦

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Fintechに挑戦する起業家で、金融機関出身者は少ない。特にメガバンク出身のFintech起業家は数えるほどだ。その数少ないメガバンク出身の起業家の一人が、Kyash(キャッシュ)の鷹取真一社長である。メガバンクに就職した人間が、国内Fintechの草創期になぜ「起業」という道を選んだのか。話を聞いた。
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株式会社Kyash 代表取締役 CEO 鷹取真一氏

ユーザー視点で送金システムを創りたい

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――最初になぜ銀行に就職したのか、なぜ銀行を辞めて起業したのかを教えてください。

鷹取氏:尊敬する先輩に、「銀行員は単なる金貸しではなく、事業の役に立て」と教わったのがバンカーを目指したきっかけです。銀行はビジネスを学べる場所ですし、幅広い業界や業態に触れられる環境です。

 最初の2年は希望どおりの法人営業で、3年目から経営企画部に異動しました。もともと、法人営業を希望して入行したのですが、経営企画も「メガバンクの意思決定を中から見られる」という意味で、素晴らしい環境でした。経営企画には約3年在籍し、通算、5年間務めて退職しました。

――その後、コンサルティング会社に移りましたね。

鷹取氏:もっとビジネスに主体的に関与できる場所に行きたい、あるいはビジネスを組み立てるような人間になりたいという思いがあったので、事業をつくることに時間をかけられるコンサルティング会社に移りました。事業企画に2年弱ほど携わり、その後起業をして現在に至っています。

――起業したきっかけは何だったのでしょう。

鷹取氏:身近なことでは、家系が経営を行っていたり、同級生が起業し始めたことです。Origami Payの康井氏(義貴 代表取締役)も同級生です。

 もう1つは、30歳までに「人生を賭ける仕事」に出会っていたいと考えたからです。自分で会社を興す手段に拘らなくてもよかったのですが、自分が自信を持って世の中に提供できるものが、30歳までには見つかっているといいなあと、ぼんやりと思っていました。また、金融の世界とモバイルという大きな流れが交差する部分で、(金融に関する起業は)「自分がやらなければならない」という使命感がありました。

 きっかけの一つは、銀行員時代に東日本大震災を経験したからです。その時、復興支援で寄附金を送るにも(銀行振り込みでは)二段階認証などがあり、思いがある人でも(手続きの)煩雑さゆえに途中で諦めてしまうことがあったのです。「銀行員として何かできることはないか。業界全体としてユーザーの期待を超えるものを今一度つくるべきではないか」と、その時に感じました。

 金銭の移動は、もっとユーザーの意思のとおりに、感情のままにお金を動かすことができたら、移動するお金や価値の総量も変わり、それによって世界も変わると確信しています。

 そう考えてまず最初にフォーカスしたのは、「送金と決済」でした。お店に価値を届けるのと、人に価値を届けるのは宛先だけの違いで、業界やチャネルが完全に分断されるのは、本来あるべき姿ではない。これを1つにつなげることで、日々のユーザーの暮らしをよくしたいという思いで事業を行っています。

――起業する前からやりたいことが明確だったのですね。

鷹取氏:そうですね。スマホの裏に「口座」があるようなイメージで、価値の移動が簡単にできるようチャレンジしているところです。

割り勘もキャッシュレスで完了

――Kyashのサービスを教えてください。

鷹取氏:割り勘も買い物もKyashのアプリ1つで実現できます。友達や同僚との割り勘や旅行代金の送金などが簡単に行え、受け取ったユーザーは、残高をそのままVISAが使えるお店で使えます。

 送金と決済が融合したという意味ではPayPalにも近いです。ただし、PayPalはWeb決済から送金へと展開してきましたが、Kyashはスマホをベースに送金がコアにあり、そこを起点としてウォレットを提供しています。

 Kyashではアプリの中で発行されるバーチャルVISAカードを使い、Web上の加盟店での決済に使えるようにしていました。しかし実店舗での支払いに利用したいという声が、ユーザーから改善要望として多くありました。

 そこでこの6月に、VISAのリアルカードを導入しました。(プラスチックカードを発行して)普通のVISAカードと同様に、コンビニやスーパーで利用できるようにしたのです。

 ユーザーが受け取った残高や集めた残高を容易に利用できるようになりました。リリース翌日には万単位の申し込みがあり、大きな反響をいただいています。

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実店舗での決済強化に向けリアルカード発行開始

【次ページ】お金のやり取りは「意思の証」
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