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- 2017/05/18 掲載
みずほ銀行はFinTech分野で何に取り組み、どんな成果を出したのか?
FinTechをIoTの一領域として捉える
そこで策定された事業戦略の主軸に位置付けられているのが「FinTechへの対応」である。同社はFinTechを広い意味でのIoTの一領域として捉えており、共通するさまざまな要素技術やコンセプトを金融と結び付けていくというアプローチをとっているという。
実際、同社はFinTechの市場をどのように見ているのだろうか。ガートナー ITインフラストラクチャ & データセンター サミット 2017のゲスト基調講演に登壇した同社 IT・システムグループ専門役員の加藤昌彦氏は「IoTによって創出される経済価値の中でも金融は、公共サービス、ものづくり革新、流通・小売・物流に次ぐ4番目に大きな規模となっています。アジアも含め、FinTechに対する投資額は今後も大きく拡大していく見込みです」と語る。
そしてこのデジタルイノベーションを通じて、「顧客利便性の向上」「社会コストのミニマイズ」「マネタイズ」を追求していくとする。
「ビッグデータ」「AI」「ブロックチェーン」がカギを握る
加藤氏によれば、特に注目しているのは「ビッグデータ」「AI(人工知能)」「ブロックチェーン」の3つの要素技術で、これらを融合した新しい形の金融ビジネスを創出していくという。具体的にFinTechの活用が見込まれる主な事業領域としては、資産管理/運用・助言、金融情報、レンディング、送金/決済、その他定型業務などが想定されている。
加藤氏は、ビッグデータおよびAIを活用した国内初の本格的なFintechレイティングの事例として、みずほ銀行とソフトバンクが2016年11月に合弁で設立したJ.Scoreの取り組みを挙げる。
スマートフォンで融資の手続きが完結するサービスで、みずほ銀行が保有するビッグデータやローン審査ノウハウ、ソフトバンクが保有するビッグデータやAIによるデータ分析のノウハウを融合した独自のスコアリングモデルがベースとなる。
「これまで扱うことができなかった各種モバイルサービスの取引状況や嗜好、行動パターンなどの情報も合わせ、お客さまの信用力を分析するのです。これにより審査応諾範囲の拡大を図り、より競争力のある金利水準を実現していきます」(加藤氏)
従来型の審査では対象外となっていた顧客も新たな融資を受けられる可能性が広がるわけだ。なお、J.Scoreでは与信審査において個人情報を利用する際には、事前に本人の同意を得ることを前提としているが、より多くの情報を提供するほど信用力が上がり、より有利な条件で融資を受けられることにつながっていく。
たとえばマイクロソフト、電通国際情報サービス、カレンシーポートとの間で、関係当事者が多く事務効率化等が見込まれるシンジケートローン業務を対象とした技術で協業。金融業務への活用に向けた実証実験を進めている。
また、SBIホールディングスとはブロックチェーン技術を活用した国際送金サービスの共同開発に乗り出した。R3 CEVが主催するコンソーシアムのプロジェクトとして実証実験を実施し、安価でスピーディーな国際送金サービスの実現を目指す計画だ。
そのほかにも富士通との協業によるクロスボーダー証券取引の決済プロセスの効率化、IBMとの協業による仮想通貨の活用や実貿易取引における情報交換など、果敢なプロジェクトが目白押しとなっている。
【次ページ】メタップスやWiLとオープンイノベーションを推進
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