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- 2024/12/05 掲載
金利上昇や地銀再編でも「地銀の経営」がなかなか好転しない“ある事情”とは
地銀経営のリアル、金利上昇でも必ずしも「喜べない」理由
「金利のある世界」へと移行したことにより、地銀は利ざや(貸出金利と預金金利の差)を確保しやすくなり、業績が向上しつつある。しかし、実際には、そこまで単純な話ではないと、マリブジャパン代表の高橋克英氏は語る。「金利の上昇が、銀行にポジティブな影響を与える部分はたしかにあります。昨年来、メガバンク同様に、地銀の株価が上昇トレンドになるのもそのためです。その一方で、本当に『金利のある世界』が実現したかというと、実際にはまだまだこれからです。たしかに日銀により金利が引き上げられ、かつてのマイナス金利やゼロ金利といった状況ではありませんが、依然として歴史的に見ても低金利環境にあることには変わりはありません」(高橋氏)
金利の上昇は、地銀にとってプラス面だけではない。マイナス面もあるのだ。
地銀は、地域密着のビジネスを展開しており、金利が上昇したからといって、簡単に貸出金利を上げるわけにはいかないという事情もある。さらに、もっと根本的な問題がある、と高橋氏は指摘する。
「そもそも日本の経済は、金利を上げるほど好調なのかということです。一般的に金利を上げるのは景気が過熱しているときであり、金利を上げて経済を沈静化させるのが経済原則に則った行為です。では、現在の日本経済はどうか。株価や地価は上昇傾向にありますが、政府によるデフレ脱却宣言はまだなされていません。物価は上がっているが、給料はさほど上がっていない状況で、なぜ、急ピッチに金利を上げるのか疑問の声もあります」(高橋氏)
続けて、「景気が過熱するほど良くない状況だとすると、当面のところ、さらに金利が上がり続ける可能性は低いのではないでしょうか」と高橋氏は語る。
地銀経営の「正解の道」とは?
地銀の間では、貸出需要の拡大を見越して、原資となる預金獲得を強化する動きも見られる。しかし、利ざや拡大には限界もあり、リスクもある。地銀は収益構造を見直す必要があると、高橋氏は強調する。「たとえば、利ざやビジネスから手数料ビジネスへ転換することです。個人向けの金融商品の販売、中小企業向けのコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務など、利ざやではなく、手数料により収益を上げるために、さまざまな方策が考えられます」(高橋氏)
2019年以降、地銀再編の動きが活発化してきた。コロナ禍を経て、2025年に向けて地銀再編のトレンドは、どのようになっているのだろうか。
「この先も、地銀再編の流れが進むことは間違いありません。最大の要因は、人口減少と少子高齢化、過疎化の進行です。地盤とする地域経済が縮小していく中で、(1)ビジネスモデルを変えるか、(2)合従連衡により規模を拡大する、(3)リストラして縮小均衡するかしか打つ手はありません。(1)、(3)とも容易ではなく、こうした点からも、地銀再編の流れは続くと見ています」(高橋氏)
地銀の再編が進んでいるのは、銀行間で商品・サービスの差別化が難しい点も影響している。
「銀行は他の多くの業種と違って、商品やサービスの差別化が難しい業界です。貸出金利や預金金利にしても、基本的にはほとんど差が出ません。商品の差別化やブランド化も容易ではありません。一方で、資産規模が大きくても小さくても、システム投資やコンプライアンスの対応などは必要となるため、こうしたコストをカバーするためにも、規模の経済による合従連衡が、最も効果的な成長戦略となる訳です」(高橋氏)
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