• 2024/12/12 掲載

日銀政策金利「まさかの」2%到達が「現実味」を帯びている3つの理由

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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2025年度には成長ドライバーとなる個人消費の底堅さが予測され、賃金上昇が続く現状では、日銀がさらなる金融引き締めに動くシナリオも現実味を帯びてきた。市場関係者の予想を超える利上げペースが実現する場合、政策金利は2%に達する可能性もある。本稿では、第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代 宏一氏が日銀の利上げが家計や企業、そして日本経済全体に与える影響を多角的に分析した。
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日銀は利上げを継続するだろう
(Photo/Shutterstock.com)

利上げのカギを握る、個人消費と賃金上昇

 筆者は、日本経済が大崩れしない限り、日銀が利上げを継続すると予想する。2024年12月の25ベーシスポイントの利上げに続き、2025年は2回の利上げを予想する。利上げ時期は展望レポートが発表される4月と10月が有力とみている。政策金利の頂点(ターミナルレート)は1%を想定しているが、2026年も賃金・物価が高水準の伸びを保つなら、利上げ継続の蓋然性が高まる

 日銀を取り巻く環境を整理すると、実質GDP成長率の見通しは、2024年度にプラス0.3%となった後、2025年度はプラス1.1%となっている(12月9日時点、第一生命経済研究所の予想、以下予測値に関する記述は同じ)。

 2025年度の成長ドライバーは個人消費であり、年度後半にかけて実質賃金の上昇が追い風となろう。その他、設備投資(研究開発投資、脱炭素、デジタル・省力化)や輸出も成長加速に寄与すると見込む。

 0%台半ばとされる潜在成長率を上回る成長率が実現すれば、それは日銀が言うところの「オントラック」を満たすものと考えられ、利上げの条件を満たす。

 賃金について、当社は2025年の春闘賃上げ率を4.8%、ベア(≒基本給の上昇率)は3%と予測している(厚生労働省の民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況ベース)。歴史的とも言うべき上昇となった2024年からいくぶん鈍化するとはいえ、引き続き1990年代前半と同程度の伸びが予想され、日銀の物価目標である2%に対して十分過ぎるほどの伸び率と言えよう。

 人手不足、物価上昇、企業業績、政府からの要請・政策支援、そして「世の中の空気」を踏まえると、多くの企業は賃上げ見送りの選択肢を取りにくい。

 そして消費者物価指数(生鮮食品除く総合)について、当社は2024年度がプラス2.6%、25年度がプラス2.1%と予測しており、これは日銀が展望レポートで示した数値におおむね一致する。

 為替とエネルギー価格次第で財価格は変動し得る一方、労働コスト由来のインフレがサービス価格(除く家賃)を持続的に押し上げる構図に変化は生じないと見込まれる。このような環境では、8月5日の株価大暴落のような緊急事態が発生しない限り、半年に一度ペースで利上げが続くのではないか。

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半年に一度ペースで利上げが続く可能性
(Photo/Shutterstock.com)

市場予想を超える、日銀利上げ幅の可能性

 ここで政策金利に関する市場関係者の中心的予想を、QUICK月次調査<債券>(調査期間は2024年11月26日~11月28日、回答者は118名程度)で確認すると、2024年末が0.50%、2025年6月末が0.50%、2025年12月末が0.75%、2026年12月末が1.00%となっている(中央値ベース)。

 筆者の政策金利予想はやや高めであるが、来年も利上げが続くこと自体は多くの市場関係者に想定されている。

 続いて、日銀の利上げが想定以上に進む可能性について考えてみたい。消費者物価が日銀の目標を上回る中、賃金上昇が定着しつつある現状、日本経済の足かせとなっている個人消費が底堅さを増せば、日銀は将来的な政策対応余地を確保する狙いもあり、粛々と利上げを進める可能性がある。

 最も蓋然性の高い利上げペースは半年に25ベーシスポイントであり、それが2026年も続けば政策金利は1.5%になる。また次の3点を踏まえると、「まさかの2%」も現実味を帯びる。 【次ページ】「まさかの2%」も現実味を帯びる3つのポイント
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