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大企業に所属していても、「個人として何かを成し遂げようとするとき、自分はスタートアップだという意識を持つことが重要だ」と述べるのが、スタートアップ支援に積極的に取り組む森・濱田松本法律事務所 パートナー 増島 雅和 氏だ。前編に続き、日本の産業界がいかにスタートアップマインドを持つべきか、特に保険業界を中心に話を聞いた。
金融に次いで危機感が高いのが製造業
──(前編に引き続き)国内では金融がオープンイノベーションの進んでいる業種の一つだと思います。好ましい変化が大企業側にも起きているということでしょうか。
増島 雅和 氏(以下、増島):金融機関は自分たちのリソースではイノベーションがうまくいかないことを理解していて、少なくとも外から人を連れてこないといけないという危機感を抱いています。銀行だけでなく、証券や保険もそういう流れが進んでいくと良いと思います。
一方、大企業を見ていて、私が危機を感じるのは製造業です。日本の産業を支えている製造業が国内にあることが、これからは(IoTの文脈で、データを利用する上で)ますます強みになると個人的には思っています。
そのために、これから製造業が生き残るには、自社だけでなくネットワーク型というか、ビジネスのエコシステムを構築しないといけないわけです。米国の西海岸のように、(囲い込むのではなく)オープンな形でスタートアップと付き合う環境を作らないと、日本の製造業が空洞化してしまいます。
これまでの経験上、中国や韓国はこれができているイメージです。ですから、できない理由は何もなくて、彼らから学べばよいと思います。。
──では、それ以外の業界についてはいかがでしょうか。
増島:やや厳しいと思うのが小売業です。小売業は10年くらい前は銀行を作るなど、先端的でしたが現在は決済など、金融業における新たな価値が生み出せていない状況にある。
今や中国には、決済も自分たちでまかない、ECのモデルを作ろうとしているアリババ(Alibaba)などの新興企業がますます力を持つ状況で、国内の小売業にはもっと頑張ってほしい気持ちがあります。
データとAPI(Application Programming Interface)、そして金融を組み合わせることにより、オンラインとオフラインを融合した世界観を持つサービス形態が国内企業にも作れるし、そういった方向に進んでいただきたいと思います。
日本のモデルをどうアップデートするか
──エコシステム型を指向する上で、中心になるのが金融だということでしょうか。
増島:あらゆる取引は金融を媒介に全部つながっています。キャッシュレスの世界に入りますと現金で相対で取引するということがなくなりますので、仮想通貨によるP2P決済という事例を除いて「取引あるところに金融あり」という世界観が実現します。
そのような世界になることを想定しながら日本の産業モデル・社会モデルをどうアップデートするのかという話です。金融は全ての産業のベースになるので、まずここを変えていかなければなりません。
金融がインターネットのアーキテクチャに沿った姿になるよう変革できれば、そこにつながるさまざまな産業が、同じように変われるはずだと考えています。
最近では、海外の事例を見て、「このままではいけない」という危機感が共有されてきたように感じます。データとAPIを使って、金融機関もグーグルのような「テクノロジードリブン」なサービスを提供する世界が訪れるのだということに気づいたわけです。
私もそうしたテーマで論稿(
FinTechの羅針盤)を書いたことがあります。「グーグルのようなテックジャイアントが日本の市場に破壊者としてやってくる。そうすると、従来の金融ビジネスは今までと同じように稼ぐことが難しくなりますよ」というアジェンダセッティングだったのですが、多くの方から反響をいただきました。
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