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- 2024/01/23 掲載
三井住友海上も熱視線、ベンチャー投資低迷でも人気のフィンテック「超期待銘柄」解説
フィンテック分野のベンチャー投資は落ち込み鮮明に
2023年の第3四半期におけるフィンテック(金融技術)へのベンチャー投資が新たな低水準に達した一方で、後期ステージの投資活動が活発化していることが、2023年11月に発表されたS&Pの調査で明らかになった。フィンテック業界への投資は前年同期比36%減の60億ドルに縮小。また資金調達の回数も39%減少し、484件まで下がっている。
S&Pの調査は、フィンテック領域におけるベンチャー投資ステージを、シード、アーリー(早期、シリーズAラウンド~)、グロース(成長、シリーズBラウンド~)、マチュア(後期)の4つに分類し、それぞれの調達額や調査ラウンド数を分析している。今期下落の主要因となったのは、シード、アーリー、グロースの3つだ。
投資ラウンド数では、シードが2022年第3四半期に300回を超えていたが、今期は150回を下回り、半分以下に減少。また、アーリーとグロースもそれぞれ前年同期には100回近く実施されていたが、今期は50回を下回る結果となった。
調達規模でも、アーリーでは前年同期比マイナス約10%、グロースもマイナス約60%となり、ラウンド数と調達規模ともに大幅の下落を記録した。一方シードは調達規模が若干上昇した。
4つのステージのうち、唯一投資ラウンド数と調達規模ともに上昇したのがマチュアステージだ。資金調達回数は30%増の44回に増加、調達規模もプラス成長となった。1億ドルを超えるメガラウンドの回数も2023年第2四半期の8回から今期は13回に増えている。
これらの数字は、金利上昇や経済不確実性の高まりから、投資家の慎重姿勢が強くなっていることを示すものだ。シード、アーリー、グロースステージではなく、マチュアステージに資金が集まっていることがそれを如実に表している。
なぜ「後期ステージ」は魅力的なのか?
マチュアステージのスタートアップは、すでに実績を有し、持続可能なビジネスモデルを構築しており、一般的にリスクが低いとみなされている。また、新たな資金を利用してさらなる成長を遂げる戦略を立てていることが多く、慎重な投資家にとって魅力的な投資対象であるのだ。また、同ステージの企業はすでに評価額が高く、それまでのラウンドで株式の多くが割り当てられていることから、シードやアーリーステージほど大きな株式比率を取得できる訳ではないが、IPOや買収の可能性が高く、高い流動性を得られる点も魅力とされる。
さらに、フィンテック領域におけるベンチャー投資は、地域別でもそれぞれの特徴を有している。
ベンチャー投資額が最も下落したのは中南米地域で、前年同期比では72%の下落を記録。2022年第3四半期の投資額は10億ドルの大台にあったが、今期は3億1,000万ドルまで縮小した。
次いで欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)では、前年同期から半分以上も下がり、今期は12億ドルまで下落。また北米は30%ほど下落し、今期の投資額は26億3,000万ドルとなった。一方、アジア太平洋地域は、前年同期比でほぼ同じ水準となり、投資額は19億ドルを維持した。調達ラウンド数は、米国、英国、インド、シンガポールの4カ国が全ラウンドのうち、半分を占める結果となった。 【次ページ】三井住友海上も投資するシリコンバレー企業とは
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