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  • 2014/09/17 掲載

「見える化」が「見せる化」になっていないか?トヨタ式が理解できる5つの活用例

連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意

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トヨタ式を代表する仕組みの一つに「見える化」がある。トヨタの生産現場から生まれた言葉で、異常があればラインを止めるといった、問題の所在を「みんなに見える」ようにする取り組みのことを指している。そして今、見える化は生産現場を離れていろいろな企業で積極的に取り入れられているが、なかには見える化の目的とかけ離れた「見せる化」も少なくないようだ。

美しいグラフを描くことが現場の「見える化」ではない

 今はもちろんトヨタでもコンピュータを駆使しているが、かつてはコンピュータを使うとこう言って怒られたものだ。

「コンピュータは質問しないと答えない。何で現場を見えるようにしていないんだ」

 データでものを見ることはもちろん大切だが、現場の仕事は打ち出されたデータを見てから手を打ったのでは遅すぎる。今、そこで起きている問題を「現行犯逮捕」して、すぐに改善するのがトヨタのやり方だ。

 ある企業の工場を訪ねた時のことだ。工場にはパソコンを駆使してつくったであろう、たくさんのきれいなカラーグラフが貼り出されていた。トヨタ式を実践している企業でよく見られるのは模造紙に手書きしたものが多いが、この企業で貼りだされているものはとても美しかった。

 ところが、その企業のライン脇や倉庫には在庫が山と積んであった。「これは何ですか」と聞くと、急なキャンセルが出てやむを得ず積んである、と言う説明だった。そこで、こんな質問を続けてみた。

「この製品の納品予定日はいつだったのですか?」
「この注文を営業が受けたのはいつですか?」
「つくったのはいつで、キャンセルが出たのはいつですか?」
「製品在庫とは別にたくさんの部品在庫もありますがこれはいつ仕入れたものですか?」

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 しかし、この質問に現場で答えられる人は誰ひとりとしていなかった。慌てた担当者がコンピュータを見ながらようやく答えてくれたが、実際には突然のキャンセルではなく、納品予定日まで随分と日にちがあるにもかかわらず、製品をつくったり、見込みで勝手につくってしまった製品が少なくなかった。トヨタ式が最も嫌う「つくり過ぎのムダ」が山のような製品在庫につながっていたのである。

 部品在庫の山も「まとめて仕入れると安くなるから」という馬鹿げた理屈で大量に仕入れた結果、材料置き場がふさがるほどの在庫の山につながっていた。

 この企業もそうだが、たいていの企業は部品などが入荷されるとバーコードを使って「今の在庫はこれだけです」と在庫を管理している。生産の流れも同様だ。その結果が美しいカラーグラフとして貼り出されているが、同社の生産現場の実態は惨憺たるものだ。

 コンピュータを不要と言うつもりはない。しかし、たとえば部品が納品されたら入ってきた日にちを現物にマジックで走り書きしておけば「いつ入ったか」はすぐに分かる。製品についても「納品予定日」や「生産した日」を書いておけば、つくり過ぎのムダにすぐに気づくことができる。

「見える化」の本質とは何か

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 トヨタ式の基本は「必要なときに必要なものを」であり、早すぎることも「つくり過ぎのムダ」となる。

 トヨタ式の見える化は何のために行うかと言えば、問題をきちんと見えるようにして問題を解決するためにある。それを忘れて単に美しいカラーグラフをつくって貼りだすのは見える化でも何でもない。現場も見えず、問題も解決せず、単にカラーグラフを貼りだすのは「見える化」ではなく、単なる「見せる化」だ。

 大切なのは「問題を解決したい」「現場を改善したい」という強い欲求である。「うちの会社も見える化をやっています」という企業が最近はとても多いが、果たしてそこに「問題を解決したい」という強い意欲があるかどうかが問題だ。問題を解決する気がないのなら、見えない方が幸せだし、間違っても見せる化を見える化などと呼んで欲しくない。

 トヨタ式の見える化はいろいろなところで使うことができる。

 「現場の見える化」は「アンドン」に代表されるように問題点を見えるようにして、みんなの知恵を集めて現場を改善するために使われる。現場が見えないとどこに手を打てばいいかが分からないが、現場が見えるようになっていれば、みんなで知恵を出すことができる。

【次ページ】見えるようにするのは現場で起こっている異常だけではない
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