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  • 2015/01/07 掲載

なぜトヨタは燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を世界で初めて一般販売できたのか

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トヨタ式改善の基本はムダを見つけて、ムダを省くところにある。トヨタ式の基礎を築いた大野耐一氏が「ムダ取りは一生の仕事」と言ったように次々と生まれてくるムダを改善し続けることで「より良いものを、より早く、より安く」を実現するところに、トヨタの強さの秘密がある。一方で、時にはたとえムダと思えても、許容しなければならないこともある。ムダには省くべきムダと、許容すべきムダがある。許容すべきムダから生まれたのが、世界で初めて一般販売が行われた燃料電池車(FCV)の「MIRAI(ミライ)」だ。

燃料電池車「MIRAI」誕生の背景

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世界で初めて一般販売された燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」
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 トヨタ自動車が2014年12月15日に発売を開始した世界初の市販の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」が好調なスタートを切っている。販売店によると、既に約1000台の注文を受けており、納車は年明けから始まるという。ただし、現段階では年間700台くらいしか生産できないため、仮にこれから注文したとしても納車は2年くらい先になる。

 燃料電池車は元々GMが1960年代から開発を進めていたものであり、フォードなども含めて2010年頃の実用化を目指していたわけだが、トヨタのつくり上げたハイブリッド車が人気を博したことで開発に遅れが生じていた中で、今回も再びトヨタが各社の先陣を切って燃料電池車を世の中に送り出すことになった。

 もちろん車両本体価格723万円は決して安いものではない。それでも国や自治体が支給する購入補助金やエコカー減税などを利用すれば500万円くらいになるため、環境意識の高いユーザーであれば何とか手の届く価格に落ち着いたと言える。予約は好調で、増産体制を敷くことが早々に決まっている。

 燃料電池車の普及には、燃料の水素を補給する水素テーションの設置など課題も多いが、MIRAIの登場によって、以前から言われていた環境対応車すべてが出そろったことになり、これからハイブリッド、電気自動車、燃料電池車のいずれが主流になっていくのかが大いに関心のあるところだ。

 ハイブリッド・カー「プリウス」の開発にトヨタが着手したのは1990年代初めのことだ。バブル景気の中で危機感を失い、自分たちの仕事を改善する気持ちが薄れつつあったトヨタマンに対して、会長の豊田英二氏が「今の研究開発の方法で21世紀にトヨタは生き残れるだろうか」と疑問を投げかけ、そこから始まったのが後に「プリウス」と命名された「グローバル21」の開発である。目指したのは「21世紀の新しい車の製造法を開発する」ことであり、「21世紀の新しい車の開発法を開発する」ことだった。

 キーワードは「天然資源」と「環境」であり、その際、検討したのが「ハイブリッド・エンジン」と「電気自動車」と「燃料電池車」の3つだった。

 それぞれを比較検討したところ、電気自動車は燃費が良く、排気ガスもほとんど出さないが、走行距離が短く実用的ではなく不便だった。さらに充電インフラの問題もあった。そして燃料電池車は将来的に有望だが、実用化にはほど遠く、下手をすると数十年かかるというのが当時のトヨタの見方だった。

 最も有力として選ばれたのが燃費の良さと、排出物の少なさ、実用性を兼ね備えたハイブリッド・エンジンだった。「プリウス」は1995年6月に正式な開発プロジェクトとなり、1997年10月に量産に漕ぎつけている。価格を赤字覚悟の200万円に設定することで市場への浸透もはかった。

【次ページ】それではなぜ先陣を切って、ミライを投入できたのか?
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