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- 2015/05/22 掲載
好業績の今こそ学びたい、トヨタ式の「好況を切り抜ける」という考え方
熱狂にあっても冷静に判断する
20年に渡って社長として同社をけん引したのち、2010年に会長に就任した後も十分な存在感を発揮しているが、そんな金川氏の有名な言葉に「熱狂にあっても冷静に」がある。
1999年、アメリカの塩ビの市況が大変な好況を呈した時のことだ。この時、金川氏は部下に対して早めにユーザーとの契約を更改し、契約の長期化と価格値上げを行うように指示している。
通常、こうした契約更改は10月から11月にかけて行われるが、金川氏は熱狂が続いている夏に行うように命じている。
市況の熱狂ぶりはすさまじかった。製品は品薄になり、ユーザーは「値段はいいからとにかく品物をくれ」という状況だった。熱狂は通常、3か月から半年続くが、熱狂は必ず冷める時が来る。熱狂が翌年には冷めると見ていた金川氏は熱狂を深追いして、設備の増強や買収といった拡大路線を突き進むのではなく、ユーザーとの間に有利な契約を結び、儲けた金で不良資産などを処理、次への備えを強化した。
翌年、読み通りに熱狂は冷め、拡大路線に走った同業他社が手ひどいやけどを負ったのに対し、同社はユーザーとの間に結んだ有利な契約と健全なバランスシートに支えられてさらなる成長へと邁進することができたという。
「熱狂にあっても冷静に判断し、時流にやみくもに乗らない」
これがカリスマ経営者・金川氏のやり方だった。
まさに「不況を切り抜ける」のではなく、「好況を切り抜ける」のが金川氏のやり方だが、トヨタに「好況を切り抜ける」を持ち込んだのが「トヨタ中興の祖」と呼ばれる石田退三氏である。
【次ページ】目先の好況に目を奪われて、やたらと規模を大きくしてはならない
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