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- 2015/06/16 掲載
トヨタ生産方式と野球の名将に共通、「自分の目で確かめる人になれ」
実際にやってみせて、そのうえで判断する名将たち
工藤氏と同様のやり方をしていたのがともに名監督と呼ばれた仰木彬氏と、落合博満氏だ。仰木氏はオリックスブルーウェーブの監督時代、二軍にくすぶっていた鈴木一朗選手のバッティングセンスを見抜き、イチロー選手として開花させたことで知られているが、仰木氏の信条はこうだったという。
「先入観なしに白紙で選手を見るには、結果を出す場をつくるしかない」
仰木氏によると、監督は勝ちたいあまり、どうしても名のある選手や実績のある選手に目が行くが、それでは若く無名の才能を見落とす恐れがある。そうならないためにも何の先入観もなしに選手を対等に扱い、平等にチャンスを与え、結果を出した選手を信頼して使っていくことが大切だ。
同様に落合氏も中日ドラゴンズの監督に就任した際、こんな言葉を口にしている。
「一度も見たことのない選手をどう一軍、二軍に振り分けるんだよ」
落合氏は当り前のように一軍と二軍に分かれていたキャンプを合同にするという球界の常識を覆すやり方を実行、初日から紅白戦を行うことで個々の選手の能力を引き上げ、中日を優勝へと導いている。
「悪いと分かっていても、どうしても捨てられないものに先入観がある」も、落合氏の言葉だが、プロである以上、必ず何かいいものを持っていると信じて、自分の目で確かめるために行ったのが合同のキャンプであり、ベテランは若い選手に負けないようにがんばり、若い選手は一軍のレベルを知ることで成長できるという、理詰めのリーダーシップがそこにあった。
何か納得いかないと半日でも丸一日でも現場から離れない
人づくりに限らず、モノづくりに関しても先入観を捨て、白紙でものを見ることの大切さを強調していたのはトヨタ式の基礎を築いた大野耐一氏だ。大野氏は現場で疑問に思うことがあると、何時間でも立って見ていた。長野県のブレーキメーカーの創業者はかつてホンダの創業者・本田宗一郎氏と共に働いた経験があり、元はホンダ系の部品メーカーだったが、ある時期から大野氏の考え方に心酔、大野氏や大野氏の部下の指導を受けながらトヨタ式を導入するようになった。
ある日、大野氏自身が指導に訪れた際、創業者は二代目にこう言い聞かせた。
「大野さんは何か納得いかないと半日でも丸一日でも現場から離れない。いいか、そこをお前はしっかり勉強せい」
【次ページ】大野耐一氏に付いていって2代目が「見た」ものとは
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