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  • 2014/10/28 掲載

“自分たちの手で”ものづくりを行えば「つくる力」は格段に向上する

連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意

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トヨタ式を実践している企業の工場を訪ねた人が驚くのは、そこで動いている機械設備が決して最新のものではなく、古い機械設備や何とも不恰好な機械設備が堂々と使われていることだ。それらを見て「がっかり」するか、それともそこに「人間の知恵」を見るかでトヨタ式に対する見方、考え方はずいぶんと違ってくる。トヨタ式において機械設備で大切なのは、新しさよりも「使いやすさ」や「稼ぐ力」なのである。

ものづくりにおいて「手を使う」ことはとても大切なこと

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中村 修二 氏
(Photo by Lux magazine

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 2014年のノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)は早くから異能の研究者として知られ、「ノーベル賞に最も近い日本人」の一人として評価されていた。

 1993年、中村氏が「20世紀中には無理」と言われていた青色発光ダイオードの開発に成功した時、何より驚かされたのは中村氏が当時はまだ徳島県の中小企業に過ぎなかった日亜化学工業の一社員に過ぎず、その開発がほとんど1人の力で成し遂げられたことだった。

 中村氏の研究のやり方が実に興味深い。大手企業であれば何人かでチームを組んで進めるところを中村氏はたった1人。開発経費も限られているため、中村氏は工場にある不要な部品を集めて電気炉を手づくりし、実験に使う高価な石英管を何度も溶接して再利用したという。ときに「自分の人生は溶接屋で終わるのか」と自問自答したこともあるというが、実際にはこうした「手を動かすこと」があとあと大いに役に立ったという。

 大手企業であれば、装置を含めて必要なものを注文すればいい。一見、効率的に思えるが、そこから創造的な結果は生まれないというのが中村氏の説だ。徳島大学時代、中村氏は多田修教授から自分で器具や装置をつくることの大切さをいやというほど教え込まれている。

 参考文献を読めば、人はその通りのことしかやらなくなる。しかし、自分で考え、自分で器具や装置をつくれば、自分だけのやり方を生み出し、新しい発想が生まれ、創造的で世界を驚かせるようなものをつくり出すことが可能になる。この教えが小さく、人もお金もない日亜化学に入社したことで大いに生きることになったという。

 中村氏によるとものをつくるための道具は何種類もある。一つ目がダメなら二つ目を、二つ目がダメなら三つ目、四つ目と次々と道具をつくる、あるいは改良を重ねていく。その過程では手痛い失敗もあるが、中村氏はこんな教訓を学んだ。

「より正確で、より実践的な装置、自分の研究したいことについての結果を出してくれる装置、それは市販では手に入らない。ならば徹底的に自分でつくり上げていく他に道はないのである」

 中村氏は毎朝7時に出社して、ひたすら装置の改良を行い、午前中に装置を改造し、午後からは反応実験を行うという気の遠くなるような日々の繰り返しの中からブレークスルーを得て、青色発光ダイオードの開発に成功している。

 それは「実験装置を熟知していなければ生まれないアイデア」であり、自分で装置を改造し続けていたからこそたどり着いたアイデアだった。

 もちろん中村氏の成功は「装置の手づくり」だけで得られたものではない。しかし、ものづくりにおいて「手を使う」ことはとても大切なことであり、自らつくり、自ら改良するという過程を通して人間の知恵が磨かれ、創造力が刺激されるのは事実である。

【次ページ】自分たちの手でものづくりを行うことで「つくる力」は格段に向上する
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