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- 2014/08/29 掲載
「現場」の力を引き出す方法、3つの「きく」と3つの「みる」を使い分けよ!
連載:トヨタに学ぶビジネス「改善」の極意
素人による「見学」と画家による「観察」の違い
ある時、本田氏は「松の木」を描こうとしたが、途中でペンが止まってしまった。技術者でもある本田氏の絵はとても緻密なものだったが、どうすれば「松の木」に見えるか分からなくなってしまった。
そこで、知りあいの画家に描いてもらったところ、当然ながら見事な松の木を描きあげたという。本田氏はこう考えた。
「私たちの見る目というのは、『見学の見』で見ているが、画家は『観察の観』で観ている。その差である」
同じものを見ていてもただ漫然と見ている人と、考えながら観ている人では大きな違いがある。見ているだけでは何のアイデアも浮かばないが、考えながら観れば問題に気づいたり、新しいアイデアを思いつくこともできる。
本田氏の2つの「みる」にもう1つの「みる」を加えたのがトヨタ式のものの見方である。「見る」と「観る」に加えて、対象を診察するように注意深く「診る」である。
工場見学という言葉があるように、「見る」は単なる見学や視察程度である。それに対して「観る」はもう少し時間をかけて注意深くみることになるが、3つ目の「診る」は現場を診断するようにみることで問題に気づくこととなる。
ただし、単なる「診る」だけでは問題を指摘するだけの診断士になるので、トヨタ式では問題を改善する治療士になることがさらに求められている。
「みる」に、「見る」「観る」「診る」の3つがあるように、トヨタ式では「きく」にも3つある。漠然と「聞く」、具体的に「聴く」、さらに詳しく「訊く」という3つの「きく」である。
「聞く」だけでは問題は明らかにならない
トヨタマンのAさんが生産改革を手伝いに、ある協力会社を訪ねた時のことだ。工場を見て回りながら、ライン長など現場の人たちに「問題はありませんか」と尋ねると、誰もが「順調です。問題はありません」と答えた。しかし、Aさんの目には問題だらけに見えた。現場の人たちにとっては見慣れた現場であり、慣れたやり方だ。そのため現状を当然視してしまい、そこにある問題が見えなくなっていた。
そこでAさんは再度みんなに「本当に問題はありませんか」と聞いてみた。すると「うーん、2~3の問題はあります」という答えが返ってきた。これが「聞く」のレベルだ。
次にAさんは「たとえばこんな問題はありませんか」と、気づいたことを指摘しながらより具体的にきいてみた。すると、「あっ、そういえば」と、たくさんの問題が返ってきた。漠然と聞くと、問題に気づかないが、具体的に投げかければ、問題に気づくことになる。これが「聴く」のレベルだ。
さらにAさんはこんな質問をしてみた。
【次ページ】問題のない現場などない
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